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『マイスモールランド』川和田恵真【読書感想文#5】

こんにちは!
私たちBONDは入管問題に取り組む団体です。今回の記事は「BOND×読書感想文」企画の第5弾となります。

今回#5として紹介する書籍はこちらです!

『マイスモールランド』川和田恵真

感想文の書き手はBOND学生メンバーのKさんです。最後までぜひ読んでみてください~

はじめに

あなたは「しょうがない」という言葉で、どこまでの状況を諦められますか?

例えば......

  • お茶をこぼした。

  • 乗りたかった電車を逃した。

  • 飼い猫が迷子になった。

  • お金がないから病院に行けない。

  • アルバイトすることが許されていない。

  • 進学したい大学への入学が許されない。

  • 橋を渡って隣の県に行けない。

「時にはそのようなこともある」と諦められる内容もあるかと思いますが、通院や進学、日常生活の行動に制限があることを「しょうがない」で片付けられる人は少ないのではないでしょうか。

今回紹介する本は、限られた権利の中で自分の居場所を探す女の子の物語です。

要約

サーリャはクルド人の女の子。
トルコで暮らしていましたが、身の危険を感じて家族と一緒に幼少期に来日します。

「難民」である彼らは、難民認定申請をして暮らしていました。
しかし、サーリャが高校生として生活していたある日、難民不認定となり仮放免の身分になります。

仮放免では在留資格がないため、志望する大学への入学資格や就労する権利を失ってしまいます。つまり、大学進学もできないし、アルバイトをしてお金を稼ぐこともできない状況に置かれます。
また、同時期に父親や周囲のコミュニティから「クルド人」としての生き方を望まれていることを感じていました。

幼少期から日本で暮らし、考え方や学校での友達は日本。
一方、流れている血はクルド人。

サーリャは自身のアイデンティティに苦悩しながら家族との居場所を必死に探します。

感想

物語の主人公であるサーリャは、「はじめに」で列挙したリストの後半3つを体験しています。

〜サーリャが体験したこと〜
アルバイトすることが許されていない。
進学したい大学への入学が許されない。
橋を渡って隣の県に行けない。

また、母親の体調が悪かったとき、金銭的に余裕がないことが原因で通院できず、生存率が比較的高いはずの乳がんで母親が亡くなってしまいます。

思春期真っ只中の高校生が、こんなことに耐えられるでしょうか。
読んでいて辛いシーンもありますが、本で描かれているのは日本で実際に起きている問題です。目を背けることはできません

BONDのメンバーとして活動する中で、仮放免者の人数を統計資料として見たり、面会活動で断片的なエピソードを聞いたりすることはありますが、サーリャのケースのような10年単位の仮放免生活について知ることはありませんでした。

今回この本を手に取り、仮放免がいかに人々の未来を奪うものであるか再認識しました。

終わりに

日本にはサーリャ以外のクルド人も多く暮らしていますが、現時点で難民として認定されているのは1人だけです。

認定された1人のケースでは、2014年に来日して、2回難民認定申請をしたものの不許可となりました。その後2019年から難民不認定処分取り消しを求める裁判をして、2022年の7月に難民と認める判決が出ました。来日から約8年を経て、ようやく認定されました。

詳しくは、下記ニュースサイト等をご確認ください。

紹介した本を読んで、難民認定は誰のためのものなのか、何のために適用されるべきなのかを考えていただきたいです。

また、今回紹介した本は映画化もされているので、機会があったら観てみてください。
トレーラー:映画『マイスモールランド』予告編


 どうだったでしょうか?気になった方は、ぜひ『マイスモールランド』(著:川和田恵真)を手に取ってみてください。

それではまた次回の投稿で~

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