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30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」

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古今東西の「愛してる」シリーズをまとめています。
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#エッセイ

古今東西の「愛してる」:常連

古今東西の「愛してる」:常連

この店が好きだ。
コーヒーは美味しいし、パンケーキはクリームが多い。
緑に囲まれているのも、休日なのに店内が静かなのも嬉しい。

なんてものは全部建前で、
全てはあの娘がいるから。

いつかあの娘と付き合って、
「愛してる」って言い合う関係。

そんな妄想を膨らませている
窓際の変態が私である。

===後記===

人間はみんな、妄想をしているし、変態だと思っている。

それを表に出さないよう、

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古今東西の「愛してる」:ファッション

古今東西の「愛してる」:ファッション

多分、私は、他の人に比べて、容姿が良いのだろう。

これまでの人生で、男性に困ったことはない。

いつも誰かしらに言い寄られる。

矢継ぎ早に飛んでくる「愛してる」の全てに、

付き合うのも疲れてしまった。

洋服みたいに日替わりのこれは、

愛なのだろうか。

===

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古今東西の「愛してる」:日替わりランチ

古今東西の「愛してる」:日替わりランチ

昼は毎日、レストランで日替わりランチを頼む。

毎日同じものだと飽きてしまうからだ。

そして夜は、日替わりの愛を買う。

「愛してる」

90分経つと、また他人に戻る関係。

明日はどの愛にしようか。

私はまたスマホを取り出し、カタログをダラダラと眺め見る。

愛も毎日同じだと、きっと飽きてしまうから。

古今東西の「愛してる」:休日

古今東西の「愛してる」:休日

戦時中、赤紙が来た人はどんな顔をしたんだろう。

「愛してる」

それが結婚を約束をした人の最後の言葉らしい。

「それがなかったらお父さんと出会ってないし、あんたも生まれてないのよ」

「へぇ、お父さんでよかった?」

扉が開く。

「おはよう」

寝ぼけた父の声が核心を遮る。

我が家の休日は今日も平和だ。

【考】台詞の存在の仕方について

【考】台詞の存在の仕方について

台詞の在り方は、実に不安定で脆いものだと思います。

例えば、言葉を覚えたばかりの女の子が、無垢な表情で言うたどたどしい「ありがとう」と、選抜予選で敗れ目を潤ませた高校球児が、応援に来てくれた学友に向けて言う「ありがとう」と、病室のベッドの上で、死期迫る夫が妻に優しく言う「ありがとう」では、その在り方は全く違う。

同じ言葉であっても、誰が、いつ、どんな場所で、誰に対して、どのような声色で、表情で

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