白木蓮の思い出/この街で生きていく
「あ、白木蓮が咲いているねえ」
買い物の帰りに白木蓮の木を見つけて、夫に話しかけた。
--
ふと数年前の記憶が蘇る。
社会人になってすぐに住んだ街での記憶だ。
私がかつて住んでいたマンションの近くには、大きな白木蓮の木があった。
歩道橋を登ると、白木蓮の木に手が届きそうなほどの高さからその花を眺めることができて、天気が良い青空の日は青空と真っ白な白木蓮の花のコントラストがとても美しかった。白木蓮の花が開いていくことは、この季節の楽しみのひとつだったのだ。
--
その街で