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少女A伝

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短編小説集です。
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2017年5月の記事一覧

煙たい愛 中編

夜が明ける音がした。
一人で迎える朝は冷え冷えとしていて、世界の果てまで延びていく。
朝の便の飛行機が頭上を通過して飛行場へ向かうのが、屋上階の私の部屋の天窓から見えた。
残された飛行機雲を暫く私は眺めていた。雲はやがてほろほろとほどけ、空の色に紛れて消えた。
私の吐いた煙は、その雲に追随するように空に昇っていく。
私が今日乗る飛行機を、見上げる人はいるのだろうか。

飛行機から日本に降り立つと、

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煙たい愛 前編

かつて母が私を妊娠した時、引っ越したばかりの新居に見知らぬ女性が押し入ったことがあるそうだ。
女性は、私の父親となる男とかつて関係を持っていたと主張した。
白昼、その部屋には母しかいなかった。
新居の窓ガラスを割り、梱包を解いたばかりの食器を手当たり次第に投げつける女性を眺めるうちに、母は婚約中だった男を見限ろうと思ったらしい。
女が感情的に部屋を壊すさまを、開け放したままの玄関の扉の隙間から、小

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容姿の、二元論

「可愛いね」
「美人だね」に
「知ってます」と答え続ける人生だった。
他に何と答えれば良いのか。
事実を述べられても、困ってしまう。

20代前半までは、容姿は二元論でしか語られない。
可愛いか、可愛くないか。
美人か、美人でないか。
綺麗か、綺麗でないか。
常に望む望まざるに関わらず、
土俵に引っ張り出され、判断されてきた。

「可愛いと、おいしい思いを沢山してるでしょう」
と寄ってくる男性には

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義務教育について私が語ること

春先、久しぶりに先生に会った。
先生といっても私の指導教官ではない。
出身大学の教授だから「先生」と呼んでいるが、学部が違うのだ。
私は音楽学部の卒業生、彼は美術学部の教授である。
彼とは、5年前に大学の近くの公園を歩いている時に知り合った。
それ以来、お互いに国内にいる時に連絡を取り合って食事に行く仲になった。
国外にいてなかなか会えない時は、先生が私のためにとっておきのレストランを用意してくれ

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