見出し画像

活気溢れる国で知った、とある出来事🇧🇩

 インドでの仕事を辞めて日本に帰国してちょうど8ヶ月。色々考えた結果、やっぱりインドに帰りたいと思った。そして、次の仕事はムンバイにほぼ決まり!
これについても色々書きたいのだけど、今回は1ヶ月前のバングラデシュ帰省で出会ったある親子について。とても非日常的で、デリケートなトピック。

バングラデシュのダッカで出会った親子

  約1ヶ月前、私は母と一緒にダッカで開催された、バングラデシュ人と結婚した日本人女性とその子供たちのホテルビュッフェ会に参加した(私は子供枠で参加笑)。8人ほどの小さな集まりで、隣の席には12歳の娘さんを連れた私の母より少し若いくらいの女性が座っていた。

 私は彼女に初めましての挨拶と、いつも海外で出会う方に聞く質問をした。
「ここにはお仕事で来られているんですか?」それに対しての彼女の答えが、
「それが熱い話でして」
実は、バングラデシュ人の夫(元夫?)がある日突然娘2人を日本のスクールバスから誘拐してバングラデシュに連れてきてしまって。今ここで2人の親権を争っているんです」
 それを聞いた時はびっくり仰天!という感じだったけど、彼女の話を聞くほど、事件の詳細を知るほど「ショック」に変わった。

 この事件はバングラデシュでかなり話題になっており、現地メディアでも大きく取り上げられている。

事件の経緯

バングラデシュ系アメリカ人である父親は、2008年に日本人の母親と結婚した。夫妻には3人の子供がいた。
2021年1月に母親が離婚を申請した3日後、父親は日本の学校からの帰りに長女(当時10歳)と次女(当時9歳)2人を連れ去り、バングラデシュに飛んだ。
母親は娘2人の親権を取り戻し日本に連れて帰るため、2021年7月にバングラデシュ渡り、数カ月に及ぶ法廷闘争を繰り広げた。それ以来、父母娘の4人はバングラデシュで暮らしている(バングラデッシュの裁判所命令により法廷闘争中は出国不可)。
2021年11月21日、バングラデシュの高等裁判所は、父親が2人の子供の親権を持つことを決定したが、判決直後に母親が上訴。
2022年2月13日には現地での親権をめぐる裁判が決着するまでは娘たちは(バングラデシュで)母親のもとにとどまることになった。
そして2023年1月29日、長い法廷闘争の末、母親が娘2人の親権を持つ(かつ、母娘共に日本に帰国しても良い)という判決がくだった。


 この記事の通り、バングラデシュでの約2年間に及ぶ長い法廷闘争の末、先月の1月29日に母親が連れ去られた2人の娘の正式な監護者となったが、
この判決が下った直後に父親が次女を連れて2人で身を隠した。そして父親の上訴により2023年2月16日に聴聞が行われた。
現在も次女は父親の元で暮らしており、日本への帰国を望む母親と長女はバングラデシュから出国できていない。

ここまでが現時点での全体的な内容。

記事には書かれていない追加情報
(※母親情報&リサーチ)

  • 子供は3人とも日本で生まれ育ち、日本の学校に通っていた(常住国は日本)

  • 子供たちの国籍は現在日本とアメリカ

  • 父親は母親の同意なく長女と次女をバングラデシュに連れて行った(事件発生当時、母親は子供たちがどこに連れて行かれたのか知らず、調査の上で居場所を突き止めた)

  • 事件発生まで母親と子供たちは父親がバングラデシュ人であると知らなかった

  • 事件発生まで母親と子供たちは一度もバングラデシュに来た事がなかった

  • 連れ去りが発生した後、母親が東京家裁からの監護権を取得している(日本では母親に監護権がある)

  • 約1年半に渡るバングラデシュでの法廷闘争の末、バングラデシュでも子供2人の監護権が母親にくだった(バングラデシュ、日本ともに母親に監護権がある)

  • バングラデシュ最高裁の判決文には、今回の父親による連れ去りは「違法である(unlawful)」と明記されている

  • それにも関わらず、現在も母親と子供たちは日本に帰国できていない(バングラデシュのイミグレーションを通過することができない)

  • 三女(当時6歳)のみ現在も日本で暮らしており、約2年以上両親と姉妹に会えていない

  • 現在長女(現在12歳)はメディアの前でもはっきり「生まれ育った母国である日本に帰りたい」と意思表示している

  • 長女によると、母親がバングラデシュに到着するまでの約5ヶ月間、父親は子供たちに母親の悪口を伝え続け、母娘間に溝が生まれるよう仕向けた
    (※国によっては片親による一種の洗脳のようなものと見なされており、専門の医療機関もある)

  • 次女が連れ去りを行った父親によって一種の洗脳状態にあり(今回の状態がアメリカの専門医療機関による『親による子への洗脳』の定義に明確に当てはまっており、治療が必要とされる)、「バングラデシュに残りたい」とメディアの前で発言している

  • 子供たちのもう一つの国籍であるアメリカやイギリス、ヨーロッパ等の先進国(スリランカ、インド等でも)では、片親による子供の秘密裏の出国は「国際的な児童連れ去り(誘拐)」に当たる

  • 判決が出てはその判決が覆り、次の判決や聴聞まで待機する。という流れを2年以上繰り返している(その間母親と子供2人はバングラデシュから出国することが許されない)

  • 日本で医師をしていた母親は2年以上働くことができていない(バングラデシュでの就業も許されない)

  • 去年9月より子供2人は学校に通えていない(長女は現在一緒に暮らしている母親と自宅学習をしている状態)

  • 母親に親権がある状態で父親が子供を隠しても、その父親に刑罰は課せられない

  • 子供たちと母親は日本人だが、バングラデシュの法律のもとで親権争いをしている(バングラデシュでは、バングラデシュ人を父親にもつ子供は自動的にバングラデシュの国籍をもつ。という扱いになるため)

  • バングラデシュはイスラム教の国であるため「シャリア」というイスラム教の法制度に則って物事が判断される

  • イスラムの法では親が離婚した場合、息子は7歳まで、娘は思春期になるまで母親と過ごすことが実質可能だが、それ以降は完全に親権は父親へと渡る

  • バングラデシュでは今回連れ去りを行った父親が「子供のために戦っている愛情深い父親」という扱いになっており、「子供は父親といるべき」、「母親が子供たちのためにバングラデシュに移住し、家庭を再構築するべき」等の意見が見受けられる

  • バングラデシュのメディアによる報道は信憑性が非常に低い(賄賂が横行しているため)にも関わらず、現地では今回の事件に関する誤ったイメージ操作が行われている(不自然なほど父親よりの報道)

この事件から感じること

 この問題を周知したいけど、何が事実として起こっていて、何が問題なのかを伝えることが難しい。あまりに非日常的なトピックで、見えない要素や不確かな情報が多いから。本当に、説明して理解を得ることが難しい。
こうして文章にしていると気がつかないうちに主観や事実確認が取れてない情報が入ってきて、自分でも混乱してくる。

 それでも、確実に起こった事実だけを以下のように並べてみると、明らかに「個人の権利」が侵害されていることが分かる。

  • 母親の同意なしに子供が海外に連れて行かれ、その日を境に家族全員の日常生活が変わってしまった

  • 日本で生まれ育った子供が学校に通えていない、義務教育を受けれていない

  • 日本で働いていた母親がバングラデシュに来たことで働くことができない、働く権利をもらえない

  • 日本人が母国である日本に帰れない

 1ヶ月前にこのことを知ってずっと気がかりだったけど、「人の家のことは私にはわからない。離婚っていうデリケートな問題だから首を突っ込まない方がいい。何も言わない方が良いのかもしれない。私にできる事はない」と思って黙っていた。しかし、母親に正式な監護権が渡っても2人の子供と母親はバングラデシュから出国できていない。

 2人の子供たちはバングラデシュに突然連れて来られたことで、今まで日本で送ってきた生活を営むことができなくなってしまっている。

 その状況が2年以上続いている。そして、それがこの調子でまだまだ続くのかもしれない。その問題性と現在の状況が正しく周知されていない。
そのため、「私にでも何かできることはないかな、何か力になりたい」と考えるようになった。

何故私がこのように感じるのか

 私は私のもう一つのバックグラウンドであるバングラデシュを誇りに思っている。誰かがバングラデシュを批判すると心が痛むし、むしろ可能性と魅力で溢れている国だということをこれから伝えていきたい。

 私個人にとっても、親きょうだい、姪っ子や甥っ子たちにとっても大事な国であり、これからも関わり続ける。今バングラデシュで生きている家族もいる。そして、バングラデシュの従兄弟たちはまさにこれからこの国で自分の人生を構築して行く。

 だからこそ、バングラデシュがこのような「明らかな人権侵害」と言える行為を国として問題と捉えない。誰も疑問に感じない。まかり通っている。子供が国に帰って人生を取り戻すことができない。という状況を許したままにして欲しくない。他人事ではない。
だから、「これはおかしい」と外からでも声を上げたい。
 
 何より日本に帰りたいと言っている女の子が、一刻も早く家に帰れますように。自分の人生を生きる権利を取り戻しますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?