本当の感情と感情表現の角度
幼い頃、親から無条件に受け容れられる環境に育ち、
自分の感情をストレートに表現する習慣が身についた健やかで、伸びやかな心を持つ人であっても、
大人になって実社会に出たら、自分の本当の感情を曲げて、違った感情を表現する場面は幾らでもあります。
本音と建て前は、誰にでもあります。
自分の感情を微塵も隠すこと無く、全て露わにしていたら、社会生活を営むことは難しいと思います。
所属する会社にとって重要な得意先のキーパーソンが、慇懃無礼な人物であったとしても、
自分の立ち場、会社の事情等を考慮すれば、腹わたが煮えくり返っても、笑顔を作らなければならないことなど、幾らもある訳です。
そんな時、健やかな心を持つ人は、無理に笑顔を作りながらも、出来る範疇で自分の尊厳を守り切る立ち回りを模索します。
つまり、自分の本当の感情と、商談の場で表す自分の感情表現の乖離を必要最低限に抑える努力をします。
本音と建て前はあるにしても、自分の尊厳へのダメージを極力抑えることを諦めません。
それは、自分を大切に思っているからです。
尊厳をかなぐり捨てて、100%相手に擦り寄ることを避ける努力をします。
意図してそうする訳では無く、一番大切なものが、心の中にあるので、自然と、そうなります。
かつて、幼かった頃は、無条件に受け容れてくれる親に恵まれ、感情を真っ直ぐ表現することが出来、
真っ直ぐ表現することが、その人の基本的な心の構えではありますが、
先に述べた様に、真っ直ぐな感情表現だけではこの世界を生きることは出来ません。
だから、真っ直ぐに表現出来ない局面では、
本当の感情と感情表現のズレる角度を小さく保つ努力を惜しみません。
大切な自分の尊厳を守る為に、40度よりは30度、30度よりは20度のズレに抑えようとします。
人の心は強くもあり、弱くもあります。
健やかな心を持ち、その心に尊厳を抱いた人であっても、
本当の感情と、感情表現の間に、いつもいつも大きな角度のズレが生じる日常を送ったら、
そしてそのズレを放置し続けたら、
いつか自分を見失ってしまいます。
だから、大切な自分を見失わない為に、感情と感情表現のズレを、小さくするのです。
本音と建て前の乖離を必要最低限に保ちます。
幼少期に感情を棄てることを強要される環境に育つ人もいます。
泣きたくて零れそうな涙を呑み込んで、明るく笑わなければならない親子関係を生き抜く人がいます。
大人になって大得意先のキーパーソンによって、感情を大きく曲げた感情表現を取らざるを得ない局面も苦しいですが、
幼少期の親子関係の中で、感情を曲げて親が望む感情を表現して見せる苦しさは、比べることが出来ないぐらい、むごたらしい、と思います。
何故なら、幼少期は感情を無条件に受け容れられるべき、人生唯一の特別な季節だからです。
肯定的に、無条件に、受け容れられることで、子供の心は育ちます。
その時期に自由な感情に制限をかけたり、否定したり、拒絶することは、
芽生えて間もない幼い心を力ずくで曲げることに等しいのです。
その子には、無条件の受け容れも、ストレートな感情を表現する機会も与えられません。
その子には、子供らしい子供時代がありません。
子供らしさを捨てざるを得なかった子は、心が育ちません。
自尊心もありません。
健やかな心を持った人が、守る努力を惜しまない一番大切な尊厳が無いのです。
だから、生まれた時から、感情と感情表現のズレの角度は極めて大きなままに生きています。
泣きたくて零れそうな涙を呑み込んで、明るく笑う時、
感情と感情表現のズレの角度は180度です。
ズレる、というより、正反対な訳ですから、その子はもはや、自分の本当の感情がわからなくなってしまいます。
そのまま大人になると、場面や相手に合わせてカメレオンの様に色を変える人になってしまいます。
得意先で自分を曲げることに、痛みを感じません。
返って、健やかな心の構えを持つ人の方が、実直だけれども融通が効かない人、と思われることもあろうか、と思います。
しかし、その場その場でカメレオンの様に色を変える人は、最終的には信用や信頼を得ることは少ない様に思います。
他者からの信用、信頼を獲得するか否か、を脇に置いて、
人生を豊かに活き活きと生きる観点からも、
感情と感情表現のズレは、最小限に抑える意識は大切な様に思います。
カメレオンの様に色を変える信用のおけない人から、
実直だけれども融通の効かない頑固者まで、
人の感情と感情表現の角度は様々です。
この生き方、この在り方でなければならない、という、正解の様なものは無い、と思いますが、
もしも、今の生き方に苦しさを覚えているならば、
本当の感情と、オモテに出る感情表現が、
どのぐらい、離れているか、という事に、
着目してみるのも、
無駄ではない、と思います。
読んで頂いてありがとうございます。
感謝致します。
伴走者ノゾム
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