マガジンのカバー画像

ボイトレ講座2017前期

100
ボイストレーニングについて書きます。 内容は ・発声理論(アッポッジョ、声の闘争、歌手のフォルマントなど) ・発声法と練習方法 ・参考動画紹介 …などです。 よろしくお願いしま…
運営しているクリエイター

#合唱

高い声は憎しみを我慢する声で練習すると良いです。あるいはネガティブな感情を成仏させるつもりで潰すことが大切です。憎しみを打ち消すために解放することなく、押し潰すようなその場にとどまるための耐える力が必要になります。高い声を息で流そうとすると成長の余地の無い声になってしまいます。

【支えのある発声で歌うための練習案】
1 息を素早く吸う(つかみ取る感覚)
2 息を止める(背中や脇腹の外向きの緊張で維持)
3 2の維持した緊張を保ちながら声を出す(最少の息を声に変換する)
1~3の手順で練習を繰り返すと良いです。最少の呼気をゆっくり丁寧に扱うことが大切です。

声はたくさんの息を吐きながら出すと歪みます。基本的に少ない息で声を作ることが大切です。必要最低限の吐く息で声を作る練習を”声の基礎”と認識すると良いです。息を多く使う発声は演劇的になるため基礎というよりも応用といえます。基礎の段階で息を多く使う発声の癖が付くと良くないです。

支えは声を出す筋肉と息を止める筋肉を利用すると良いです。また、声を出し続けることと止め続ける感覚も必要です。走り続けると点灯する自転車のランプのように、継続した呼吸管理が支えを作ります。歌うときは”支える”というよりも”支え続ける”という継続力が重要です。

情緒で高い声は出ません。情緒がもたらす筋肉の緊張で高い声を出すと良いです。攻撃的な情緒がもたらす戦闘態勢の筋肉が重要です。情緒が声になるのではなく、情緒が筋肉に影響を与えて声になるということです。

『声』は力が声を作り、その力が方向を決めて安定して飛ぶことになります。脱力は最適なバランスによる結果の状態です。全身で力を分かち合うので楽に感じる、そのため脱力(リラックス)という感覚になります。力を抜けば良い声になるわけではありません。

声の闘争の圧縮は「出す力」と「出さない力」による支え合いです。ホースで水をまく時、そのまま水を出すと地面に落ちるだけですが、出口を圧縮すると明確な方向性を持って水は飛びます。声の闘争の無い歌唱は、声が足元に落ちるか周囲に散らばる結果(そば鳴り)になります。力自体が道を作ります。

声の闘争を活用して歌う場合は、力をチャージすることが重要です。力をチャージして、チャージされた力を解放せずに歌うと良いです。力の解放は響きの拡散につながるため、支えのある声を出すときは”出さない力”で出す必要があります。

お腹の横は適度に広げたままにすると良いです。腹斜筋は肋間筋とくっついているのでお腹の横を使う際は、肋骨全体(胸郭)も少し持ち上げることが大切です。発声は筋肉を単体で考えない方がいいです。筋肉と筋肉の連携で最適な呼吸を行い、その呼吸を発声に生かすと良いです。

発声時の力は「支え」というよりも「支え合い」が大切です。双方向からの圧力が必要になります。風船を水に沈めるとはね返ってきますが、このはね返りを押さえつける感覚が必要です。

心を込めて歌う練習をするときは、息がもれている場合が多いです。息をもらしながら歌うことは支えを失いやすく、歌唱表現と発声技術が一致しません。支えを意識して歌うためには、無感情・無感動・無心で練習する過程が必要になります。いつでも心を込めれば良いというわけではありません。

高い声を出す場合は、高音直前で息を止めることが有効に働く場合があります。その際はブレスをしない方がいいです。息の量より圧力の方が大切ということです。

発声は息そのものより、息による圧力が大切です。”息が声になる”という発想では早い段階で上達が止まります。「息は自分の心だから息を大切にして歌おう」という考えは正しそうで、実は間違いの多い言葉です。