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きゅんとした話

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#超短編小説

愛とか、恋とか

愛とか、恋とか

 母からテキストメッセージが届いた。そこには「卒業することにしました」と書いてあった。それを読んで、わたしは首を傾げた。母がなにか学校とか、そのようなものに通っていた記憶がなかったからだ。わたしを産むだいぶ前に高校を卒業して、それ以来なにかに入学したりはしていないはずだ。入学してなきゃ、卒業もできない。とはいえ、わたしが大学に入って以来、それほど頻繁に帰省しているわけでもないし、電話だってほとんど

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嫉妬してもいいし、不安になってもいい。

嫉妬してもいいし、不安になってもいい。

何かを手に入れた瞬間から、それを失う恐怖が始まる。

モノに限らず、人間関係にもそういうことってあるものです。
最初は「仲間になりたい」だったのが、いざ仲間になると今度は「仲間外れにされたくない」が始まります。

男女の仲も同じで「あの人と付き合いたい」と思ってる時が一番ドキドキしていていざ付き合いが始まると「あの人が離れていくのが怖い」と思うようになるケースもチラホラ。

F子の場合。

その典

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I Miss You

I Miss You

その女性は美しく、優しいまなざしで僕を見つめている。

静かな温泉宿。かすかに聞こえる川のせせらぎが心地いい。

今朝の夢。

もう20年以上も前のことだ。

見た夢にいちいち運命を感じるほどロマンチストではないが、なぜ今なのだろうか。

普段は頭の奥の引き出しにしまったままにしている思い出。そのまま、そっとしておいたつもりなのに。

なぜ今、彼女が夢に。

なぜ今、彼女のことを

僕は思い出して

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「おやすみ」と「おはよう」のあいだ

「おやすみ」と「おはよう」のあいだ

「おやすみ」と彼が言い、「おやすみ」とわたしが言う。
「いってらっしゃい」とわたしが言い、「いってきます」と彼が言う。
 わたしが眠りにつく頃、彼は仕事に出かける。彼がどんな仕事をしているのか、わたしは知らない。
「些細だけれど、とても大事な仕事」とだけ、彼は自分の仕事のことを言う。それ以上は絶対に教えてくれない。何度か聞き出そうとしたけれど、適当にはぐらかされてしまう。
「それを知ったら」と、彼

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