【概念変革04】CXの概念変革 -[売らないEC]が「時間の奪い合い」に勝つ
「売らないお店」というのが、日本でも数年前にブームになりました。
商品を陳列しているのですが、店員さんは、商品の説明、その商品のブランドのコンセプト、製品化に至った背景や歴史、など説明するだけです。
お客さんは、お店にあるQRコードを、自分のスマホで読み取らせて、あるいは自宅に戻ってから、ECで購入するという仕組みです。
これは、従来、お店とは商品を販売するところ、という「概念」を変えて、商品を説明したり、手に取って見てもらう場所、にしています。
僕は、こうしたお店の概念変革同様に、ネットで販売するECサイトも、今後、ガラッと変えることができるといいな、と思っています。
ガラッと変える? ええ、ガラッと「ECの」サイトを変えたいのです。
僕は、ECサイトをネットで「モノを買う」サイトから、居心地の良い「メディア」にかえて、消費者のCX(Customer Experience)を抜本的に「概念変革」すべきだと考えています。
スマホで何を見ていますか?
今、ネットはPCよりスマホで見る人が多いですよね。
例えば社会人ですと、通勤の往復の電車の中で2時間、入浴後就寝までの2時間、すきま時間1時間……というように、最低でも1日計5時間程度は、スマホを見ているのではないでしょうか?
僕もスマホをよく見ていますが、見るサイトは決まっていて、YouTubeやお気に入りのnoteの記事、Xですね。どのサイトも、自分の見たいニュースや記事が出てくるようにしていて、1日数時間、毎日見ています。
ネットショッピングも、もちろんします。
でも、よっぽどの買い物好きでない限りは、ECサイトを毎日見る、ということはないのではないかと思います。
ECサイトの問題点
今は、ネット利用時間の「奪い合い」の時代です。
消費者がネットを見ている限られた時間の中で、何分、自社のサイトに滞在してもらえるか、という、「滞在時間の奪い合い」を、各企業はしているわけです。
僕を含め、大半の人は、訪問するネットのサイトは、だいたいいくつか決まっていると思います。そして、どのサイトにそれぐらい滞在するか、という、ネットを見る時間の時間配分も日々しています。
ECサイトはその時間にどの程度入り込めるか? というと、買い物するという動機ありなわけですから、買い物好きでない限りは、週に1時間もないのでは、と思います。
それに、ECサイトに行くと、「あなたへのおススメ」とか、これが売れていますとか、売り手の「押し付け感」満載のコンテンツが続々と出てきて、正直、滞在していて楽しくはない。
このように、ECサイトが、単にモノを売るサイトである限りにおいては、滞在時間は短くなる一方だと思います。
以前は、ECサイト、例えばアパレルのサイトで、「いい服ないかなぁ」と、だらだら時間を使っていたと思います。
ウインドウショッピングと同じ感覚ですね。
でも、今の時代、ウインドウショッピングしますか? 僕はしなくなりました。なぜなら時間が無駄だなと思うから。
僕だけではありません。特に、最近のZ世代は、コスパあらぬ「タイパ」、タイム・パフォーマンスを重要視して、「費やす時間とそこで得る価値」にとてもシビアです。
ですので、ネットサーフィンといった考え方はもはや通用しなくなってきています。
こういう時代になると、ECサイトをモノを売るという定義をしている限りにおいては、この「ネットの時間の奪い合いの戦い」には勝てません。ECサイトには、長い時間滞在したいだけの「魅力」がないからです。
売る気のないECサイトを作ろう
ではどうすれば、ECサイトに滞在してもらえるのでしょうか?
以前、今は、買い手の中に信用経済が働いていて、売り手の押し付け感が受け入れられなくなったと書きました。
では、ECサイトはどのように作ればいいでしょうか?
僕は、売る気のないECサイトを作ればいいと思います。
売る気のないEC? そうです。売る気がないECです。
ECサイトを作るのではなく、メディアを作って、そこで買い物「も」できる、そんなサイトです。
売る気のないECサイトとは
例えば、カメラやスマホ、充電器やBluetoothイヤホンなどの、いわゆるガジェットを販売するECサイトを作るとしましょう。
今までだと、商品の検索画面や、商品カテゴリーのメニュー、簡単な商品の紹介記事、あなたへのおススメ商品、といったものがトップページに表示されるショッピングサイトを作っていましたよね。
でも、今は、「おススメ」すら受け入れられなくなっているのが現状です。「おススメ」とか書いてるけど、自分のことをどこまでわかっていて、おススメしてるの?って思われてしまう。
売り手の思いとしては、買い手が、何か買いたい時に、いかに欲しいモノを簡単に検索できるか、おすすめ商品にいかに反応してくれるか、などに特化したサイトを作りがちです。
しかしそうなればなるほど、買い手からすると、つまらないサイトになってしまう。
でも、ECサイトをメディア化したらどうでしょうか?
例えば、モノを買うサイトではなく、ガジェットの新商品の情報がどこよりも先に見れる、ユーザーの試用体験記が読める、商品の比較検証したレポートが読める。
ガジェット好きにとって、そこにいけば、色々楽しめる情報発信サイト、あるいはユーザー同士のコミュニティ機能で、ガジェット好きの人と交流ができるサイト、そんなメディアを、僕なら作ります。
ユーザの好みを、サイトの行動履歴から判断し、新商品をよく見ている人には、新商品のブログ記事を表示させるし、評判の高い商品を知りたい人には、サイトで評価の高い商品を表示させます。
つまり、個人の好みに合わせて、動的にトップページを変更して、訪問者ごとに異なるトップページを表示させます。
「何か面白いこと」を求めてファンが集う
その裏ではECサイトでよくある、リコメンデーション技術が動いているのですが、決して、「あなたへのおススメ」とは書かない。
ただ好みの商品を表示するだけ、関心あるブログやニュースのみを表示するだけ。
ガジェット好きな人なら、時間がある時、何か面白いことないかなぁ、と常に立ち寄ってくれるメディアようなサイトを作ります。
買いたい場合は、商品をクリックすると購入できるようにしますが、特に「売る気」は見せない。これはメディアであって、ECではもはやありません。
しかしこの先、こういった、「売る気のないEC」、「メディアの中で商品の購入もできるEC」といった具合に、ECサイトを変えていけば、きっと、スマホの滞在時間の奪い合いにも勝てるでしょう。
ECサイトの「概念変革」
これが僕の考える、ECサイトの「概念変革」です。
そこに行けば、何か楽しいことが見つかるサイト、体験できるサイト、勉強できるサイト、そこに行ったときに、商品を買いたければ、買うこともできる、そんなメディアにすることが、今後のECサイトの在り方ではないか、そう僕は思っています。
売る気満々のECサイトから、売る気のないメディアへの変革。それが今後のECサイトの在り方の一つではないでしょうか。
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