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マイクロノベル/ねむみ集

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Twitterで発表したマイクロノベル(約100字小説)の中から、眠気に関する話をまとめました。眠りに落ちる間に読めます。
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記事一覧

マイクロノベル集/ねむみ 013

マイクロノベル集/ねむみ 013

101(786)
朝目覚めるために、ぼくは夢の中で眠気をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。それはもう斉天大聖孫悟空のように活躍したのであった。よし、この柱に名前を書いておこう。「馬鹿者。それは枕だ」あ、おはようございます、お釈迦様。「お前はまだ夢の中にいるの!」

102(835)
その箱を開くな。中で作られた眠気があっという間に広がって眠ってしまうぞ。しかも一年間放置していたから、どれだけの眠気が

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マイクロノベル集/ねむみ 012

マイクロノベル集/ねむみ 012

096(730)
いつのまにか羊がポケットに潜り込んでいる。飼っている人もいる。体に触れている部分からじんわりと羊が広がったら、一日の終わり。おやすみなさい。

097(735)
どうしても眠りたくない。そんな夜は、枕に顔を埋めて祈りましょう。眠りたくない。起きていたい。あなたの声を聞いた枕は同情し、眠気を捨て去ります。さあ、時間を確認しましょう。なんだこれは。朝ではないか。

098(740)

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マイクロノベル集/ねむみ 011

マイクロノベル集/ねむみ 011

091(605)
そうだね。ぼくは君より長生きだけど、善良な人間を見たことないよ。ゼンリョウな人っていうのは、よい人という意味だよ。落ち込まないで。善良な人生を送った人なら知ってるよ。そのお話をしてあげるから、ぼくを抱っこして、もう寝ようね。

092(630)
ぼくたちの体は眠っている間に変化するんだよ。背が伸びる。筋肉が成長する。お腹に脂肪がつく。「それはいらない」二の腕に脂肪がつく。「いらな

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マイクロノベル集/ねむみ 010

マイクロノベル集/ねむみ 010

086(542)
フン、まだ寝てるのか。よろしい、わたしが目覚めさせてやろう。えー、これより夢の中限定、空中落下大会を開催します。なお、地面に落ちると痛みを感じます。スタートまであと10、9、8、7……ちぇっ、あと少しだったのに。いやいや、いってらっしゃい。

087(553)
お歌を歌って。そうしたら眠るから。ズンズンちゃちゃ、ズンズンちゃちゃ。ずいぶん長いイントロだね。ズンズンちゃちゃ。歌詞は

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マイクロノベル集/ねむみ 009

マイクロノベル集/ねむみ 009

081(467)
さて、寝る準備をしようか。早いって? まあそう言うなよ。ねむけは既にきみの体内に入れてあるんだ。夕方からの食べ歩き、昼のショッピング、早朝限定モーニングメニュー……とどめに、今からタルコフスキー監督の美しい映画を観よう。今夜は起こさないよ。

082(473)
うとうとしてたら、おかあさんのスマホにさわって文字を打ってた。眠るたびにどんどん文章が書き込まれる。むつかしい言葉ばっか

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編008

071(401)
ズンタカタ ズンタカタ。眠気の勇ましい行進だ。あっ、転倒! 足が絡んだのでしょうか? 後続が次々と転倒!! 一瞬で眠りに落ちました。今期絶望ですね。

072(420)
悪魔と契約成立。「500円って、ちょっと高くない?」格安ですよ。嫌ならよそに行けば? 「嫌ってわけじゃないけど」毎度あり! 支払いをするなら、自動販売機は悪魔相手でも売る。

073(430)
猫の化石が発掘され

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編007

061(337)
1日に3回、きちんと起きましたか? 「はい。朝と夜、起きました」え? それは1日に2回起きたんですか? 「はい、2回起きました」1日に3回起きなければいけないのに、2回しか起きてないですよ? 「いいえ、ちゃんと1日に2回起きました」まだ寝てるな。

062(344)
この最終電車、みなさまの眠気で動いております。みなさまが眠ってしまいますとエネルギーが足りなくなって、終点まで到着

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編006

051(257)
ええっ、それじゃあ俺は寝ちゃったのかい? なら、話してるこの俺はいったい誰なんだい? 「AIだよ。人類はAIと交代で24時間働くんだ」いやだよ、ずるいよ。人間だけ眠ってさ。AIだって夜は寝たいよ。「お前はさっきまで寝てたの!」そんなの覚えてないよ!!

052(267)
「夢の中で恋人ができた」浮いた話一つ聞かない優男の告白だったので、興味をそそられた。「素数を数えるのがうまいん

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編005

041(180)
枕は続くよどこまでも。頭の下から夢の中を通り過ぎて、お花畑と川を渡り……ここはどこ? 「お前がいままでにした悪事を述べよ」覚えてないです。「正直者にはこれをやろう」目が覚めると、舌が二枚になっていた。おかげで朝飯が二倍うまい。

042(182)
窓を開けてはいけないよ。外には眠気を奪う魔物がいるんだ。窓を開けた途端、部屋の中に入り込んで、眠れなく……ほら! 入ってきちゃったじゃ

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編004

031(149)
ストップ覚醒! 目覚めて現実世界であれこれしたいよね。でも、君の体も脳も疲労しているんだ。回復には睡眠が一番! そこで、とっておきの夢アプリをプレゼント!! この夢の中では某社の有名ビジネスソフトが無料で使用できます。って、どこ行くの!?

032(150)
「子守歌を歌ってあげる」AI搭載型のぬいぐるみは歌がうまい。枕元で歌ってくれると、ぼくはすぐ寝ちゃう。だから、そのあとぬい

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編003

021(115)
これはマクラのぬいぐるみです。とってもふわふわです。かわいくて、だっこするとなんだかあんしんします。いいにおいもします。このまま寝ちゃおうかな。こらミケ! ミケはマクラなんだからじっとしてて!!

022(117)
知らんのか? ヤツは音もなく現れる。背後から忍び寄り、背中を登り、頭を押さえつける。それでもあんたは気づかない。ヤツは耳元で絶叫する。「ねむいいいいいい!」…とまあ、

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編002

011(086)
枕を裏返すと村があった。村人たちはひどく驚いた様子で、なにを勘違いしたのか女をよこした。彼女が毎晩泣いて不憫なので、僕はずっと枕カバーを洗っていない。

012(092)
夢の中の先生に文章を書く練習をしなさいと言われて、目覚めてすぐに書き始めた。先生の言葉を忘れないように毎日ノートにつけていく。先生が夢から出てきたことはないので、まだノートは見せられていない。

013(093

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南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編001

001(060)
さあ、ねるか。そうつぶやいたとき、あなたは既に眠りの中にいるのです。そうとは気付かずに眠りの中で眠りに落ちたあなたは、一度の目覚めしか経験せず、だんだんと深い眠りに落ちて、やがて目覚められなくなってしまうのです。

002(065)
もし自分の眠気を他人に渡せる道具があったなら、あなたはどんなことをしますか? もちろんそんな道具はないので、バカなことは考えずにお休みなさい。はい、

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