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俳句、短詩

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自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
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#エッセイ

てのひらの打ち明け話:乾佐伎句集『シーラカンスの砂時計』

てのひらの打ち明け話:乾佐伎句集『シーラカンスの砂時計』

「吟遊」同人・乾佐伎さんの第二句集。
絶滅したと考えられていた古代魚・シーラカンス。
実際には現生種が発見され「生きている化石」と呼ばれている。

人間には想像もつかない長い時間を紡ぎ生き残ったシーラカンスの歴史。
その砂時計の尺度は、人間のそれとは違う重みと刻み方をしているのではないか。
そのシーラカンスの歴史からみれば、わずかなヒトの歴史。
そして、個人の歴史。
それは、まるでてのひらほどの広

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三色の交差点:俳句同人誌『カルフル』創刊号

三色の交差点:俳句同人誌『カルフル』創刊号

あわあわとした光の輪が優しい表紙。
この同人誌、そして同人三人の現在、そしてこれからの光のようでもある。

俳句同人誌『カルフル』創刊号。
参加同人は土井探花・古田秀・このはる紗耶(以下、敬称略)。

俳句作品としては「新作」そして「ベスト旧作二十句選」が掲載。
三人の現在とこれまでの歩みを知ることができる、創刊号に相応しい試みと思う。

以下、感銘句
【新作】
思ひ出をがにまたでゆく春夕焼 土井

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コンプレックスと肯定と:俳句誌『豆の木』No.28

コンプレックスと肯定と:俳句誌『豆の木』No.28

超結社句会「豆の木」。
今年の初夏、30周年記念号(No.28)が刊行。
豆の木句会を紹介いただいた後少し参加して、その後ずーっと参加せず、再び参加して今年で約12年。幽霊部員のワタクシめですが、25周年に続き節目のおめでたい年に参加でき嬉しい限りです。

刊行して時間が結構経ってしまっていますが、今回私と豆の木についてちょっと書いてみたいと思います。(メンバーおよび自分の句の紹介や雑誌の感想では

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【俳句掲載】『名句水先案内』(角川俳句コレクション)

【俳句掲載】『名句水先案内』(角川俳句コレクション)

角川『俳句』連載の「名句水先案内」(2020年4月号~2022年3月号)。
今回、角川俳句コレクションとして一冊に纏められ刊行されました。
著者は『鷹』主宰・蛇笏賞作家の小川軽舟氏。

その中の一句として、下記の拙作(句集『柔き棘』所収)を紹介していただいております。
どうもありがとうございます。

一人づつタイムカードを押して霧 柏柳明子

本書の第一印象は、鑑賞の深さと選句の目の鋭さ。
一句ご

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愛とかなしみの背理法:土井探花句集『地球酔』

愛とかなしみの背理法:土井探花句集『地球酔』

こんな日は仲間はづれの雉が好き

この句の中に自分を見る人、あるいは共感する人は、「ここに自分がいていいのか」と思うことが多いタイプではないだろうか。

どんなに大人になっても、一日を呼吸しているだけで難しい日はある。
仕事やお金があるということと関係なしに、絶え間ない隙間風のような精神の飢え。

上記に書いた内容は、言うまでもなく私が普段感じていることである。
だから、おそらく今でもなにがしかの

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秋、カルチャースクール俳句講座に思うこと

秋、カルチャースクール俳句講座に思うこと

俳句と書いておきつつ、のっけから通っているフラメンコ教室の話題で恐縮だが、来月からクラスに新しい生徒さんが来ることになった。
長い間、個人レッスン状態だったので、どんな感じになるかちょっと予想がつかない。だかが、こちらも少しドキドキしている。
先生が体験レッスンを見た感じでは「経験が浅い」とのことで、その生徒さんにどうアプローチしつつ、これまでのレッスン内容を維持するかを考えておられるよう。

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「今」を真空パックする:俳句甲子園2023のある俳句を読んで

「今」を真空パックする:俳句甲子園2023のある俳句を読んで

少し前の話になるが、NHKによるドキュメンタリー番組を観た。
内容は俳句甲子園2023。
そこで紹介された茨城県立下館第一高校の下記の句に目を奪われた(以下、作者名は敬称略)。

不登校やめられそうなほど朝焼 武井佳奈

後で俳句甲子園の公式サイトで今年の結果を見たところ、入選作だった。

結果はPDFになっており他の入賞作も掲載されている。
全部読んだが、私にとってはこの作品が最優秀作品だった。

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客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭

街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。
大雑把にいうと、街は都会のイメージ、町は都会以外のイメージ。
表題句の町は「中くらゐ」とある。
いろいろな意味で全体的に中位なんだろう、規模や人口も交通も利便性も。
もしかすると、普段は取り立てて個性が無い場所なのかもしれない。
その町が秋、大きな祭を開催する。年に一度のハレの行事。
中位の町がにわかに大きく見えるような、

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異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

クラクラするほどの痛いほどの今夏の太陽。
八月になって、通りは急にふっと音の存在を忘れたかのように静かになる瞬間が。そんなある日、届いた一冊。

文章はこれから読むところだが、俳句作品が面白い。
ぽっかりと落ちてきた言葉たちが白昼夢のように私の心を揺らす。

【特別作品】2作より一句ずつ。

遠泳の
 潮粘りだす
  鳥影  奥山人

一行ずつアタマ落としで書かれた言葉が三行に分かれて、ページの中

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作りたくて楽しくて、俳句

作りたくて楽しくて、俳句

他でも書いたが、今年から所属する俳句結社の作品賞の受付を担当している。締切が迫ってきたので、毎日切れ目なく届いている。

拝受ハガキを用意するたび、自分が応募していた頃を思い出し、懐かしくなってきた。

そうこうするうち、久しぶりに作品群をつくってみたい気持ちがモクモク湧き上がってきた。

で、数日かけてつくってみた。
夏で20句。
ここには掲載しないが、作り終えた今は爽快感でいっぱいだ。出来は置

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【私見】俳句:旧仮名・現仮名の誤表記や混在

【私見】俳句:旧仮名・現仮名の誤表記や混在

以下は自省を込めての文章です。
私自身も先日やらかしたので。

noteを始め、ネットにはたくさんの俳句作品が掲載されています。
自分も一日一句・投稿をしているので他人様の作品にも興味があり、読ませていただいていますが、しばしば「勿体ないなあ」と思うことが。

それは、「旧仮名遣い・現代仮名遣いの表記の間違いや混在。

例① 二~三句並んでいる場合。
一句目は「言ふ」と旧仮名遣いなのに、
二句目は

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ある句会の風景➁:飛べる句会、飛ぶ言葉

ある句会の風景➁:飛べる句会、飛ぶ言葉

もう、多分20年近く前のことになる。
毎月・第三日曜日。
13時スタート、終了は18~19時頃。
K駅からほど近い、コンクリート打ちっぱなしのデザイン・ビル。
その上階に句会場はあった。

そこは俳句の先輩Sさんの仕事場で、メゾネットタイプのオシャレな空間。
「マンションのような造りの部屋に二階がある」
小さいころからメゾネットに憧れていた私は、最初からこの会場に惹かれるものを感じていた。

肝心

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俳句:どんな句会に参加するか

俳句:どんな句会に参加するか

リアル参加型が主流だった句会も、ネットでさまざまな形態や参加型のものが出てきて、身近にリアル句会がない場合も参加しやすくなったり、作品発表の機会や俳句との出会いを広げたと思います。

特にここ数年の疫禍、俳句制作を途切れず続けることができたのもネットを主流とした句会のおかげ。有難いことです😊

そして、昨年くらいから私の周囲では再びリアル句会の再開が増えてきた感じがします。
私自身もネット句会を

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俳句、「ひとり」から始まるハーモニー

俳句、「ひとり」から始まるハーモニー

俳句を作るときは「ひとり」でも
「一人ぼっち」じゃない。

詠む・読む。
その2つがあるから、俳句は座の意味を深め、座は「コミュニケーション」として機能できる。
作品の中の私の風景とあなたの風景が重なる。
その時、私たちはひとりではなくなる。

作品を作るだけでなく、他人様に俳句を伝える活動を始めたことで、上記のことをますます強く感じる。

そして、そんなことを互いに共有し、話し合える俳句友達がい

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