peeq / Yoichi Ichikawa

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Get This: 32 Tracks For Free - A Tribute to Peter Rehberg

Peter Rehbergについて 90年代以降の電子音楽/実験音楽の愛好家で、Peter Rehbergを知らない人は恐らく少ないだろう。General Magic(Ramon Bauer、Andreas Pieper)らと共にMegoレーベルの運営に初期から携わり、Farmers Manual、General Magic、Fennesz、Heckerらの革新的な作品をリリースする一方、自身もPita名義で"Seven Tons For Free"(1995)や"Get

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    • KeplerとPhase Shiftingについて

      2/4にドイツのEngram Recordingsからリリースされたコンピ"Genealogy 2"に1曲参加させていただきました。 『音楽をつくりはじめるにあたりインスパイアされた楽曲を、記憶のみを頼りに再作曲する』という面白いコンセプトのコンピで、私は敬愛する竹村延和氏の"Kepler"に挑戦しました。 このテキストでは、"Kepler"をリアレンジする際に考えたことと、ミニマル・ミュージックの技法の一つである"Phase Shifting"について簡単に書いていきま

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      • Noise In The Brain / Ikuko Morozumi

        "Noise In the Brain"は、発達障害者の脳内を音で表現した楽曲である。 発達障害は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(PDD : Pervasive Developmental Disorders)、学習障害(LD : Learning Disability)、注意欠陥多動性障害(AD/HD : Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)、その他これに類する脳機能の障害」と定義され、トゥレット症候

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        • 2021年に作ったもの/書いたものを振り返る

          今年作ったもの/書いたものを、時系列順に振り返ります。 bd+psr+e TidalCyclesというライブコーディング環境で、ユークリディアン・リズムを試していて出来た曲です。ちょっとMark Fellぽくなりました。リンク先にコードを載せていますがすごくシンプル。ユークリディアン・リズムは非常に面白く、TidalCyclesで簡単に試すことが出来ます。bd、psr、eはサウンドファイルの名前です。 Light Ascent ドイツ・ベルリンのレーベルEngram Re

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          • Mark Fellのリズム構造について

            音楽における時間 音楽は常に時間と共にある。ドビュッシーは音楽を「色とリズムを持った時間」と定義した。ケージは'4分33秒'において、音楽の本質が時間であることを、最もラディカルな形で提示した。  Curtis Roadsは、時間構造のレベルをMacro、Meso、Sound Object、Microなど9つの階層に分類して定義した。音楽においては、Macroは楽曲全体、Mesoはフレーズ、Sound Objectは1〜数秒の音のイベント、Microは音の粒子(Grain)

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            • 09 Poetics

              音色の重心が低く落ち着いた雰囲気を感じさせる一方で、静けさの中で高速で刻まれるビートが印象的。アルバム中では珍しく、アンビエント的な柔らかな響きのコードの連結がメインとなっている。メランコリックで美しい楽曲。 楽曲全体の概略は次の通り。 以下に楽曲のメインとなるコード(概略図の"Chords")の譜面を示す。 Low Pass Filterで削られたような倍音の少ない響きで、深いリバーブの影響もあり、静謐な印象を与える。 全体は48小節という非常に長い周期でループして

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              • 08 Shamanic Birds Of Healers

                精緻にエディットされたビートが印象的な楽曲。恐らく、ピッチ処理や、スタッター、ビットクラッシュ、フィルターなど様々なエフェクトでビートを処理した後、細かく切り刻んで、再構成していると思われる。 これまでは6小節と8小節など、3と4のずれで構造化した曲が多かったが、この曲では、ビートが9小節単位、旋律が12ないし24小節単位となっている。 冒頭のフレーズ。柔らかい音色で緩やかに動くパートと、FMのような鋭い音色で間欠的に動くベースラインが、対位法に動く。ベースラインの開始点

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                • 07 I Was Told I Was Born On A Heavy Snowy Day

                  ゆっくりと踏みしめるような重いビート。 これまでの曲でもそうであったが、ビートの音を含め、部屋鳴りのような空間を感じさせる音色が多く用いられている。こうした音色は、Aphex Twinのアルバム"I Care Because You Do”でも多く用いられており、立体的な音像の獲得に寄与している。 まず以下のベースラインが登場する。 譜面では反復する音をすべて記譜しているが、実際はディレイを用いている。ベースのハーモニクスのような音色で、基音以外の倍音が目立って聞こえる

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                  • 06 Sun | Moon

                    このアルバムの中でもとりわけ美しい楽曲。弦楽や合唱のような音色が幾重にも重なっていき、暗闇に柔らかな光が差し込むような印象を与える。 はじめに以下のパターンAが登場する。4度の響きがメイン。この楽曲においても、これまでの楽曲同様、Aを含む複数の旋律は12小節単位で一つのパターンを形成し、ブロックのよう組み替えられながら何度も登場する。 次にパターンB。 Aは2声であったが、Bは新たな音色も加わり3声となる。7の和音が展開された2度の響きが美しい。 ここでリズムトラック

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                    • 05 Gogh Did His Thing. I Will Do My Thing.

                      強い決意表明のようにも読めるタイトル。3曲目のマラルメに続き、19世紀を代表する芸術家の名前が登場する。 曲は5度、4度の空虚な響きと、拍節感の薄いプロセスされたビート/ノイズに導かれて始まる。 続いて、以下の3つの旋律が、順番に、あるいは組み合わされて登場する。 旋律A 旋律B 旋律C 旋律Aは、前曲と類似した音型を用いており、やはりAphex Twinの"4”を彷彿とさせる。 まずハイハットの刻みとともにAが登場。 続いて徐々にビートが密度を増しながら、B

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                      • 04 Warmth Of The Invisible Love

                        高速で刻まれるビートと、力強いメロディが印象に残る楽曲。前半と後半でほぼ同じ音楽が繰り返され、これまでの楽曲の中では平易な構造をしているが、旋律のパターンが24小節単位で切り替わっていくのに対して、ビートは18小節単位でループしているため、ビートのループ感が和らげられ、延々と展開していくような印象を与えている。 楽曲はビートと共に以下のフレーズで始まる。 4度や5度の響きがメイン。13〜24小節目は、1〜12小節目を逆行したものであることに注意。また、37~48小節目は、

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                        • 02 Non-Acid Classic #2

                          1曲目はBPM 130であったが、2曲目はBPM 150にテンポアップ。共通しているのは12小節がループ単位のベースになっている点。ループに3の系列を持ち込むことで、予定調和が崩される。 楽曲の全体図は以下の通り。 楽曲は、深いdelayのかかったリズミカルなフレーズ(以降、Synth1)から始まる。 Synth1はベースラインとして楽曲全体を通じてループする。1〜4小節と5〜8小節はほぼ同じフレーズの反復だが、音符の順番が微妙に変化している。9小節目の後半に大胆な休止

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                          • 01 I Am Well, Thank You. And You?

                            アルバムの冒頭を飾る楽曲。最小単位(基本となるパターンの長さ)の異なる幾つかのフレーズとビートが、"ずれ"を伴って組み合わせられ、無駄のない美しい構造を作り出している。 楽曲の全体図は次の通り。A〜Dは旋律の基礎となるパターンを示す。 基礎となるビートは、24小節単位で大きなひとつのフレーズを形成し、細かな変化や抜き差しを伴いながら反復する。 楽曲は以下のAパターンの旋律から始まる。 パターンAの旋律は24小節でひとつのフレーズを形成しており、これはビートの最小単位と

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                            • 03 What Stéphane Mallarmé Has Seen

                              この曲も1, 2曲目と同じく、ビートが12小節単位となっている。一方で旋律パターンの多くは8小節あるいは16小節単位であるため、ループがずれて重なることで、新たなパターンが生み出される。こうした手法は、スティーブ・ライヒなどのミニマリズムの作曲家たちの技法にも通ずる。 楽曲全体の見取り図は以下の通り。 まず12小節単位のビートと共に、ストリングス、ピアノ、低音のシンセ(Synth1)が同時に登場する。 ピアノの旋律は以下の通り。ディレイを伴って、ビートのアクセントに一部

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                              • まえがき

                                "最も重要なのは、或る傑作に含まれる未知の潜在力を守ることだと私は考えている"(『現代音楽を考える』 ピエール・ブーレーズ/著 笠羽映子/訳 より引用。) 音楽作品の分析は、それが新たな音楽の種子となる限りにおいて意味を持つと考えます。 今回、Yaporigamiさんの作品を分析する機会をいただき、まず考えたことは、誤解も込みで、私がこの作品をきっかけに思考したことを文章化することでした。 ここに私が書いた文章は、あくまで私の個人的な解釈であり、私がこの作品から受け取っ

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