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2022年に作ったもの/書いたものを振り返る

今年作ったもの/書いたものを、時系列順に振り返ります。

Sea Of Solaris

ドイツの謎多きレーベル1834からリリースさせていただきました。
1834は楽曲データが全てhttp://archive.org上に存在する不思議なレーベルで、姉妹レーベルであるINNERSPACE Prod.と共に、SUPERPANGやimportant drone recordsなどからリリースしているAuslandがキュレーターのようです。

Sea Of Solarisは、昨年のDrone Studies 3以降から追及してきた環境音とスペクトラルフィルターによる純正率ドローンの一つの集大成のような作品で、主音の異なるふたつの7リミット純正率を、共通音をピボットとして緩やかに遷移させ、倍音が時に干渉したり溶け合ったりしながら、やがてひとつの響きの海に合流するような表現を意図しました。
この作品のアイデアは、La Monte Youngはもちろん、Catherine Christer Hennix、Folke Rabeに強い影響を受けています。

Noise In The Brain / Ikuko Morozumi

音楽家Ikuko Morozumiさんよりご依頼をいただき、"Noise In The Brain"に関する文章を書かせていただきました。発達障害者の脳内を音で表現した楽曲で、Ikuko Morozumiさんの作品の中ではやや異色ですが、疾病や障害をテーマにした芸術作品の系譜として、とても興味深い作品です。

Kepler

ドイツのEngram Recordingsからリリースされたコンピ"Genealogy 2"に1曲参加させていただきました。
『音楽をつくりはじめるにあたりインスパイアされた楽曲を、記憶のみを頼りに再作曲する』という面白いコンセプトのコンピで、私は敬愛する竹村延和氏の"Kepler"に挑戦しました。
音源は竹村氏が使用していたYAMAHA MU1000の下位機種にあたるMU 500で、MaxからMIDIノートを送っています。
簡単な分析記事も書きました。

Get This: 32 Tracks For Free - A Tribute to Peter Rehberg

$ pwgen 20レーベルからリリースされたPitaへのトリビュートアルバムについて紹介記事を書きました。

Eulalie

Make Noise 0-COASTを購入して、ひとまず作ってみた曲です。

SC 220718 221321

SuperColliderで作った短い曲です。三和音のオルガンっぽい音にノイズが乗って、ちょっとOvalprocessぽい感じです。

Summer '22

南阿蘇の白川水源でフィールドレコーディングした素材を使ったアンビエントです。この曲で聞こえるハーモニーは阿蘇で流れていた時報の音楽を録音したものをベースに加工したものです。神社の鈴やこどもの声も聞こえます。

32.825359, 131.096755

こちらも上の曲と同じく、白川水源でのフィールドレコーディングです。加工は最小限に、いくつかの場面をフェードイン・アウトで繋いでいます。

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SOMA laboratory LYRA-8で作ったカオス的なノイズと、熊本市街地でのフィールドレコーディングをJetpack Cognition LabのSensorimotor Primitives Auditory Perception Softwareで構成した曲です。

of crumbling silence seriously smiles

bandcampでセルフリリース。SOMA laboratory LYRA-8で作ったいくつかの曲をまとめました。1曲目のarti冒頭で聞こえるノイズの音色は、PitaのSeven Tons for Freeに強く影響されています。この曲はノイズを構成素としつつ、構成の面ではシステムや偶然性を完全に排除して、意識的に起承転結を持った「楽曲」として組み上げることを意図していました。
アートワークに用いた写真は、とある夜間保育園(?)のエントランスです。Sonic Youth "Dirty"のジャケにMike Kelleyのぬいぐるみの写真が使われていましたが、ああいう一見可愛いものが不気味に見える感じが面白いなと思って採用しました。

Auditory Scene Splicing

SuperColliderからの音とフィールドレコーディングをJetpack Cognition Lab Sensorimotor Primitives Auditory Perception Softwareで構成しています。Nina Protocolからリリースしてみました。Ninaはブロックチェーンをベースにした新しい音楽プラットフォームで、今後の動向が気になっています。

FFTイコライザー

Max/MSPで、FFTによるイコライザーを実装。尊敬する湯浅譲二先生の名作"ホワイトノイズによるイコン"へのオマージュです。

p​.​clear​.​pop

dagshenmaさんが立ち上げた新しいレーベルWind in Her Hairのコンピレーション"Go Free"に参加しました。フリーウェアとオープンソースのソフトで作られた音楽縛りのアルバムで、この曲はSuperColliderで書いた加算合成のコードを使っています。
この頃、加算合成を色々試していて、Twitterにいくつかアップロードしたものも載せておきます。

来年はSuperColliderの電子音だけでアルバムが一枚作りたいな…と思っています。

Immersion

Masanori Nozawaさん主宰のレーベルmedium初のアンビエント・コンピレーション"Medium Ambient Collection 2022"に1曲参加させていただきました。自分の曲がフィジカルとしてリリースされるのは初めてで、CDプレーヤーから流れる自分の音を初めて聴いた時の感激は一入でした。参加されている他の音楽家の方々(豪華すぎるメンツ!)の楽曲、よろすずさんのライナーノーツ、Hermippeさんとレーベルオーナーによるアートワーク、松坂大佑さんによるマスタリングなど、作品全体としてのクオリティがとても高く、このアルバムに自分が関われたことは最高に光栄です。
自分の曲では、フィールドレコーディングと、スペクトルフィルターによるドローン、SuperColliderによる電子音を組み合わせ、アコースティックな音響と電子音が侵食しあい、境目が曖昧になるような状態を意識しています。

おまけ

それでは、良いお年をお迎えください。


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