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2021年に作ったもの/書いたものを振り返る

今年作ったもの/書いたものを、時系列順に振り返ります。

bd+psr+e

TidalCyclesというライブコーディング環境で、ユークリディアン・リズムを試していて出来た曲です。ちょっとMark Fellぽくなりました。リンク先にコードを載せていますがすごくシンプル。ユークリディアン・リズムは非常に面白く、TidalCyclesで簡単に試すことが出来ます。bd、psr、eはサウンドファイルの名前です。

Light Ascent

ドイツ・ベルリンのレーベルEngram Recordingsのコンピレーションに参加させて頂きました。各々違う周期で揺らぐサイン波を60ほど重ねて、汎調性的なクラスターを作っています。ここで試したモーダルなクラスターという方法論は、この後のDrone Studies 3やSea of Diracに繋がっていきます。

Drone Studies 3

フィールド・レコーディングにスペクトラルフィルターをかけて、個別の周波数を抜き出して重ねる、という手法を初めて試した作品です。ドローンですが、周波数同士の干渉で、色々なメロディが浮かび上がってきます。12音平均律に則った音符ではなく、周波数で指定していくので、あらためて純正律に興味を持つきっかけになりました。この作品では、初めてこの手法に気づいた純粋な喜びが聴こえてくるような気がします。

TOKINOGAKE - 202105

時の崖コレクティブというプロジェクトのアルバムです。複数名がクラウド上でサウンドファイルを共有し、自由にエディットして作られています。普段は使わないような要素を、各自が自由に持ち込めるため、とても楽しかったです。

以下、私が関わった曲について簡単に書きます。

003_a0_pq.wav 私が声のファイルをMax/MSPでエディットしたものを、a0n0さんがモジュラーでエディットしたものです。

015_007pq+008nz_013ik-edit.wav  私とnzworkdownさんのファイルをIKTSさんがエディットしています。私のファイルは大分の神社でフィールド・レコーディングしたもの。

016_005_pq+007_pq_kh-edit 上の曲と同じく大分でのフィールド・レコーディングと、Max/MSPで作ったアンビエントをkenji hamadaさんがモジュラーでエディットしたものです。

018_004_a0+017_pq_pq-edit a0n0さんのファイルと、最低やさいコーナーさんのテキストを読み上げたファイルをArgeïphontes Lyreでエディット。

020_019_pq_nz-edit 私のドローンをnzworkdownさんがエディット。原曲も同アルバムに収録されており、全く違う世界になっています。

019_pq 上の曲の元々のファイルです。Grain Scannerを使って大分の海岸で録った音などをエディット。夜明けの海岸のイメージ。

024_kg+021pq+013ik-edit KAGAMI Smileさんと私のファイルをIKTSさんがエディット。切り刻まれすぎて原曲のファイルが思い出せません(笑)。素晴らしい。

Sea of Dirac

時の崖のコンピレーション第1弾"Ultimate_Collection ''hydrocycle on a lake''に提供した曲です。Drone Studies 3と同様の手法ですが、こちらは音律としてLa Monte Youngが"The Well-Tuned Piano"で用いた7リミットの純正律を借用させて頂き、いくつかのブロックを重ねてクラスターを作っています。作りながらリゲティも念頭にありました。音律のすべての音がクラスターとして響いた後は、前半の補集合が残るように作ってあります。

Yaporigami - "IDMMXXI-L" の構造分析

Yaporigamiさんの"IDMMXXI-L"について分析をさせて頂きました。プロジェクトファイルや譜面を見せて頂いたわけではなく、気合いで(!)耳コピして譜面に落とし、分析しました。譜面に起こすと、ただ聴いているだけでは分からない構造(ループ単位の違うフレーズを複数組み合わせるなど)が見えてきて、非常に興味深い経験でした。

TOKINOGAKE - 202106

時の崖コレクティブの第2弾。新たなメンバーが参加し、リズムの強い曲や、様々なジャンルを参照したような要素も加わることで、より多彩になっています。

062_[057_pq+035_kh]_fd-edit 私のLo-Fi Hip Hop的なトラックと、kenji hamadaさんのファイルをfendoapさんがエディット。

053_pq29_ay31_fd42_a043_pq50_ik-edit 私を含む複数メンバーのファイルをIKTSさんが闇鍋エディット。具材が溶け込んでいて、自分の素材が思い出せません。

046_044_026_pq_me-edit_me-edit 私の複数のファイルをmesaelechtele aka Uhito Kiyosueさんがエディット。これもどんな素材だったか...。

055_050_pq[+026+048+rap]_me-edit 私のLo-Fi Hip Hop的なトラックを含む複数のファイルを、Uhito Kiyosueさんがエディット。FMシンセの解説動画から抜き出した音声がラップ的に用いられています。

While You Were Sleeping

SOMA laboratory LYRA-8で作った曲です。LYRA-8は非常に独特なインターフェイスを持ったシンセサイザーで、鍵盤は無く、指先で電極に触れて通電することで発音し、音高はツマミで指定します。この曲は敢えて音階を作って弄っていたところ、エモい感じになったので、極端に歪ませてみたらシューゲイザーぽくなりました。タイトルはOpiateの名作からの引用です。

TOKINOGAKE - 202108

時の崖コレクティブの第3弾です。今までと違う表情の曲が更に増えています。

108_078_nz_082_lf_pq-edit nzworkdownさんとLetter from objectことMasanori Nozawaさんのファイルを私がエディット。nord modular G2のパッチでエモいコードを演奏したものを重ねてます。

113_066_fd_070if_072pq_073_107_ik_078_nz_084_a0_089_me_105_fd_ik_edit 複数名のファイルをIKTSさんが闇鍋エディット。どんな素材でもIKTSさんの色に調理されるのはやはりすごいです。

093_pq SOMA laboratory LYRA-8とHologram Electronics Microcosmによる一発録りです。

094_pq SOMA laboratory LYRA-8とHologram Electronics Microcosmによる一発録り第2弾。

111_069_pq_070_lf_092_pq_093pq_094_pq_me-edit 上記2曲を含む私の複数のファイルをUhito Kiyosueさんがロングミックスしたもの。While You Were Sleepingと同じファイルも使われていますが、Uhitoさんの処理で格段に音が良くなりました。

Sea that has Become Known

Ueda Takayasuさん主催のレーベル、Unfinished Houseからリリースさせて頂いた作品です。Drone Studies 3、Sea of Diracと同じ手法を使っていますが、こちらは3-リミットの純正律を採用し、システマチックに音を重ねています。音の重ね方については、Minoru Sato-m/s & ASUNA - Texture in glass tubes and reed organが念頭にありました。Sea of Diracは(自分の中では)かなり音楽的に作りましたが、もともと違和感のあった起承転結のある音楽の作り方から離れ、より音の現象自体にフォーカスしたい気分が出てきています。

Aen - coffee (peeq's caffeinless remix by Yoichi Ichikawa)

Unfinished Houseからリリースされた、Aenさんの"stand​.​music"収録曲をリミックスさせて頂きました。Aenさんはspekkレーベルのコンピレーション"Small Melodies"以来のファンなので、とても光栄でした。原曲のくぐもったラウンジのようなループに、50年代のビッグバンドジャズから抜き取った断片と、パルサー合成によるノイズを重ねています。

Psychology Of Emotional Nerve

Erica Synths Pico System IIIで即興的に録音したノイズをエディットしたものです。ブルータルです。タイトルは萩原朔太郎"月に吠える"の序文を捩っています。

TOKINOGAKE - 202109

時の崖コレクティブ第4弾です。今のところこのプロジェクトの最新アルバムです。

109_077_me_107_ik_pq-edit IKTSさんのリズムファイルに、Uhito KiyosueさんのファイルをMax/MSP上でエディットしたものを重ねています。ミニマルな感じを意識しました。

099_pq iPhoneで録った、近所の用水路のカエルの声そのままです。

106_099_pq_067_pq_fd-edit 上のカエルの声を、全く別曲の波形をサンプル単位でサンプリングして、波形を置き換えることで再現した、fendoapさんによる驚きのエディットです。

104_066_ld_096_me_101_kh_pq-edit Uhito Kiyosueさんとkenji hamadaさんのファイルをsoundhackでコンボリューションしてアンビエント化し、For Ninaさんのスピーチファイルをエディットして重ねたものです。宇宙ステーションのイメージ。

103_060_fd_pq-edit fendoapさんのファイルのアタックをMax/MSPで検出し、TR-808や909のサンプルをトリガーして重ねたもの。

067_pq 既出のWhile You Were Sleepingと同一曲ですが、Uhito Kiyosueさんによる素晴らしいマスタリングで生まれ変わりました。

Hidenobu Ito - Die Ruinen​(​peeq's biosemiotic remix)

Oval - "Systemisch"の続編を作るというコンセプトで作られたHidenobu Itoさんの"Systemisch2"は長年愛聴している名盤ですが、そのリミックス盤"Re:Systemisch2"に参加させて頂きました。原曲の音の断片と、近所の河原で録音した水の音、虫の声を、Argeïphontes Lyreなどを使ってエディットしたものです。タイトルのbiosemioticは生物記号学という意味で、"生物から見た世界"を書いたユクスキュルへのリスペクトです。

田中事件 - この変な世界図

シンガーソングライターの田中事件さんが企画・総編集、100人以上がそれぞれの世界を書き表したコンピレーションンブック、"この変な世界図"に寄稿させて頂きました。同じ時代に存在する全く違う世界線が、一冊に凝集された素晴らしすぎる奇書。私は"バンドマンのための現代音楽入門"というタイトルで書いています。

211108 1 - autoedit - 49

Erica Synths Pico System IIIで即興的に録音したノイズをいくつかのパーツに切り分け、Jetpack Cognition LabのSensorimotor Primitives Auditory Perception Softwareで構成したものです。音楽情報検索(Music information retrieval; MIR)の技術に興味をもつきっかけになりました。これ以来Pythonを独学中です。

Mark Fellのリズム構造について

Mark Fellのアンソロジー本"Structure and Synthesis"の発刊を(勝手に)記念して、Mark Fell自身の文献を元に、彼のアルゴリズミックなリズム構成法について書きました。"Multistability"以降のリズム感は、色々なアーティストによって模倣・発展され、今や電子音楽シーンに定着した感があります。非常にシンプルなアルゴリズムから最大限の効果が引き出されていることに驚かされました。

Epicurus' Garden

時の崖のコンピレーション第2弾Ultimate_Collection ''beech trees''に提供した曲です。実はこの曲は第1弾コンピ用の曲として制作したものの最終的に採用しなかったもので、制作時期は今年の初め頃です。コンピ収録にあたり、IKTSさんの鮮やかなマスタリングで蘇りました。MetaSynthを主に使用しており、音符を書くのでは無く、音律とグレインの密度やエンベロープを操作する手法で、叙情的な雰囲気を作ることにトライした曲です。

来年もどうぞよろしくお願いします。良いお年を。

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