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第15話 個性の輪郭

2016年4月。
twitterに張り付いていた甲斐あってか
僕にはすでに「友達」がいた。

抑うつ症状は消え去ったものの、予期不安は健在だったため
入口の近くの席にさりげなく座り、入学式を終える。

それから約1か月間、新歓ムードの中
僕は約10人程度の「お友達グループ」を作り上げていた。


ここに僕を知っている人間は誰もいない。
今までの負け組の僕とは決別する。
生きた心地のしなかった18年分の青春を取り戻す。


このグループの中にいた、ショーゴという男。
彼がきっかけとなり、僕は自身の
「個性の輪郭」を捉えることになる。


僕が出会った人間の中で間違いなく5本の指に入る整った顔。
いかにもファッションが好きそうな派手な見た目に反し、柔らかい物腰。
言葉の端々に垣間見えるユーモア。
おまけに何人も女を抱いてきたという
男なら誰もが一度は憧れる武勇伝を持っている。
しかもそれを自らは一切語らない謙虚さ。

「こいつと仲良くなりたいな。」
珍しく僕にこう思わせた彼もまた「光属性」だった。


数か月たったある日、彼との会話で「ADHD」の存在を知る。
彼の幼少期は、まるで自分の写し鏡のようだった。

じっとしていられない。注意散漫。
悪戯をせずにはいられない。
口を開けば誰かを必ず怒らせる。

それだけではない。
物事に集中し、気づけば恐ろしいほどの時間が過ぎている事や
待ち合わせ時間が守れない事、
忘れ物・失くし物が多い事など。
この時「僕のような人間」に初めて出会った気がした。


彼は自身のことを「ADHDなんじゃないかと思う」と話していた。
「ADHD?なにそれ。」
その話をきっかけに、ただの「鼻つまみ者」ではなく
僕の個性に「ADHD」という輪郭がうっすら描かれた。


この頃、もう一人のキーマンである「ビッグ」という男と出会う。
彼もまたファッションが好きで、独特な雰囲気を纏う。
基本ソフトな人当たりだが、時折毒を吐く。彼もまたユーモアの持ち主。
(正直はじめは苦手だったのだが)のちの僕とショーゴの保護者兼友達となる人物。

話してて何となく波長が合う(と、僕が一方的に思っていただけかもしれないが)彼らと、大学生活における行動を共にするようになる。







時は経ち、2018年4月。
恋愛に関してはあまりいい思い出が無く、ショーゴの浮いた話に
ただひたすら胸を躍らせていた僕に
文字通り「春」が訪れる。



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