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【ブラックスワン・プロジェクト】「予測不可」を予測する

myコンサルティングの新しい研究課題として、ブラックスワン・プロジェクトを立ち上げます。ブラックスワン現象とは従来の知識は経験からは予測できない極端な変化や現象のことをいいます。一般に予測不可能と見られるものを何とか予測できないか。プロジェクトはそれを目標にします。

二つのブラックスワン現象

経済・社会面では今世紀に入り、このブラックスワン現象ともいえる予測もしなかった大きな事件が二つありました。
一つは2008年のリーマンショックであり、もう一つが新型コロナウイルスの世界的感染拡大、パンデミックです。
この二つに共通するのは、従来の知識や経験、その知見が全く役に立たないということです。

リーマンショック

リーマンショックは、2008年に米国の投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが6000億ドル超ともいわれる史上最大級の負債総額を抱えて倒産し、世界的な金融・経済危機です。

危機を招いた主な要因とされるのが、米国の低所得者層を対象にした高金利住宅ローン「サブプライムローン」の破綻でした。低所得者でも利用できるように融資基準を大幅に緩和したサブプライムローンを組み込んだ証券化商品が乱発され、地価の下落でその証券バブルが崩壊したのです。
そのような複雑なローンを組上げたのはそれまで発達を続けていた金融工学でした。

金融工学は、このリーマンショックの前、1998年にもその限界を露呈していました。ノーベル経済学賞受賞者らも参加したヘッジファンドの、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻です。
世界トップレベルの学者らが考案したLTCM独自の方程式で、市場相場を予測し、資産価格が割安か割高かも判断できるという触れ込みで機関投資も含め多くの資金を集めましたが、ロシアの財政危機などの巨大な市場エネルギーには理論が役に立たず、破滅しました。

このような事例からも、市場原理主義に基づき金融工学を御旗にしたこれまでの世界の証券、金融業界のビジネスのセオリーは、過去のものになりつつあるのではないでしょうか。

市場予測の難しさ、ブラックスワン現象は、リーマンショックほどではありませんが今年2022年の暗号資産市場にも見られました。暗号資産市場で大きな影響を与えたのはTerra(LUNA)の暴落FTXの経営破たんでした。

Terra(LUNA)は米ドルなどの安定通貨と連動し、価格が安定したステーブルコインを発行するプロジェクトで、世界最大規模のブロックチェーンネットワークの構築を目指していました。Terraがそのプロジェクト、LUNAはその中で流通するトークンです。

2022年に入り暗号資産の価格が暴落して多くの人が損失を出していたところに、年利20%でステーブルコインUSTが運用できるということで、Terra(Luna)は割のいい投資先として一躍大人気となりました。そして4月にはTerraの時価総額は4兆円規模にまで膨れ上がり、一時は暗号資産の時価総額ランキングも10位以内に入っていました。

しかし、5月に何者かの攻撃を受け、Terra(Luna)およびアルゴリズム型のステーブルコインであるUSTの価格が維持できなくなり、取り付け騒ぎが起こって一夜にしてほぼ無価値になるという事態が起きました。数兆円規模のものが、一気に無価値になるというのは誰も予想だにしない、まさにブラックスワンといえるような出来事でした。

このTerra(Luna)で運用していた暗号資産レンディング企業やVC、ヘッジファンドなどが連鎖倒産を引き起こしました。そして、11月には暗号大手資産取引所FTXおよびAlameda Researchが破産という大事件が発生し、多くの人の資産が凍結される事態となりました。

事の発端は11月2日にCoinDeskからAlameda Researchのバランスシートのリーク記事が出たところからでした。このリーク記事が出た後、11月6日にはBinanceのCEOであるチャンポン・ジャオ(CZ)氏が保有するFTTの全売却を示唆しました。すると取り付け騒ぎが起きてあっという間にFTTの価格は暴落し、FTXおよびAlameda Researchは破産にまで至りました。経営破たんの規模は数兆円にも及び、その後の調べでFTXの顧客資産の流用などFTXの元CEOであるSBFの様々な悪行がリークされて世界的な大問題となりました。

コロナ・パンデミック

もう一つのブラックスワンは新型コロナウイルス感染拡大です。
新型コロナウイルスは2019年末に中国・武漢市で初めて確認され、翌年3月世界保健機関(WHO)は世界的流行、パンデミックと認めました。感染者数は2022年12月に入り全世界で6億5000万人と、1918年のスペイン風邪(世界で5億人)を超え、WHOは人類史上最悪クラスのパンデミックと事態を重視しています。

後述しますように一部で、ウイルス感染症の世界的拡大を危惧する声はありました。しかし人とモノの交流が一段と増大した21世紀のパンデミックは、短期に予測もつかない爆発的な拡散を見せました。
今回のパンデミック犠牲者は1500万人にのぼるといわれ、その経済的損失も加味すれば、史上最大の被害ともいえます。

政治・外交での予測不可現象

政治・外交面での予期せぬ突発事案は、今年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻です。世界最多の核兵器を持ち国連の常任理事国でもあるロシアが起こした戦争は、ロシアへの経済制裁のため、輸出入や金融・為替、マネーロンダリングの規制を厳しくし、世界経済にも大きな影響を与えています。

また前世紀には見られなかった資本主義、民主主義の限界が叫ばれるようにもなりました。
1989年のベルリンの壁の崩壊以降、共産主義は破たんしたといわれ、以降資本主義が世界の経済を決める唯一のシステムでした。資本主義の象徴ともいえる米国は、コンピュータからパソコン、インターネットの分野で次々に世界で覇権を握る企業を生み出し、GAFAが世界の産業を支配するようになりました。
産業構造は鉄鋼などの製造業からITへ。見えるものから、見えないものの時代へ大きく変貌しました。

その変化を主に担った米国は、世界の勝者でした。その象徴はニューヨークのウォール街ですが、そのエンジンともいえる金融工学はリーマンショックで限界を示しました。そして深刻な貧富の格差拡大が米国はじめ資本主義国内で深まり、社会不安を高めています。グローバル経済による米国内製造業の衰退、その不満が、トランプ前大統領を生み出しました。

パンデミックに対応するための世界的金融緩和は、ウクライナ戦争による食料、エネルギー危機も加わり、物価の高騰など資本主義経済に深刻な不安定要素を与えています。

この中で注目されるのが中国の3期目に入った習近平政権です。GDPで米国に次いで世界第二位となった中国は、いま経済発展とともに米国に対抗すべく軍事力を強化し、「一帯一路」そして「グローバル開発」という構想のもとに、世界での覇権を握ろうとしています。

この習近平総書記、そしてロシアのプーチン大統領に代表される権威主義、独裁主義は、貧富の差の拡大などで資本主義に疑問を抱く各国民の支持を集め、発展途上国にも同調する国々を増やしつつあります。

これは民主主義の後退という要素も含みます。欧州などで目立つ極右主義への支持の拡大も不安定要素です。増加の一途をたどる難民への反発もあり、難民排除を叫ぶポピュリズムの台頭など、民主主義を蝕む権威主義、独裁主義の浸透が世界に広まっています。

不確実性の時代を乗り越えるために

リスクは統計的に計量可能で、確率分布を求めることもできます。しかし不確実性は計測や数量化が不可能で、将来の発生確率も期待リターンも求めることができません。この不確実性が資本主義には付きまとっています。

資本主義の限界から、パンデミック、そして戦争と権威・独裁主義。
これらはいずれも従来の進歩の構図からは予想できない大きな事件でした。しかしこのような革命的ともいええる巨大な変化も、その予測をしなくては21世紀における展望は築くことができません。私たち個人も、予測なくしては自分の将来を計画することができません。
 
これまで各種保険において「戦争」は免責事項でした。しかしウクライナ侵攻を経験し、台湾有事と北朝鮮のミサイルと核の危機が迫る日本でも、「戦争」免責、対応拒否では、人々の安全が確保しきれない時代なのです。21世紀は予測のできない突発性への対応が求められています。

ブラックスワン現象は、予測できない諦めの事象ではなく、改めてそれを研究し、本当に予測がつかないのか追求してみることが大切だと考えています。不確実性と言われる対象のなかに、予測可能なものを探る努力、これを課題にしたいと考えます。
 
ブラックスワン現象を提唱したのはナシーム・ニコラス・タレブでした。
そのタレブは、一般には予測不可能と受け取られているリーマンショックも、新型コロナのパンデミックも、予測が可能なホワイトスワンだったと説いています。

彼の著書「ブラックスワン」の刊行は、リーマンショックの前の2007年です。この本で彼は正にリーマンショック発生の現実性を指摘し、予測していました。そしてコロナ・パンデミックについてもタレブは、ビル・ゲイツや科学ジャーナリストのローリー・ギャレットなどと並び、このような感染症の流行を予測して警告していたといいます。

当時、中国・武漢市から発生した新型コロナウイルスの感染は、まだおおむね中国国内にとどまっていました。しかしタレブらは感染拡大が「非線形的」(※)になるだろうとそのリスクを警告していました。

(※非線形=線形とは力と変形、応力ひずみの関係が予測可能な比例関係の状態を示します。この関係は簡単な計算で算出できます。これに対し非線形は、力と変形や応力ひずみの関係が比例関係になく、インプットされたものと不釣り合いな大きなアウトプットとを生むような現象で、状況の把握には高度な解析が必要です)

タレブが真のブラックスワンとするのは、2001年9月11日に3千人近い人命を奪ったアメリカ同時多発テロ事件だけです。

予測ができないと言われるものを、どこまで予測できるのか。
不確定要素をどこまで排除できるのか。
極めて見通しがつかない「不確実性の21世紀」であるがゆえに、このブラックスワン研究に取り組む価値は大きいと思います。
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