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【観劇レポ】ロンドン小劇場 『The Woman in Black』


ロンドンに1年間留学中の女子大生です🇬🇧

ロンドンといえば大劇場のグランドミュージカルが連想されますが、中小劇場における公演や、歌のないストレートプレイも多く上演されています。そのうちの1つ、Fortune Theatre の『The Woman in Black』を観劇しました。




劇場について

Fortune Theatre は、キャパ432人、客席2階建ての小劇場。
トラファルガー広場やコヴェントガーデンの側にあります。
周囲には沢山の劇場があり、Charing Cross駅から徒歩で劇場に向かう道中には、『Back to the Future』の Adelphi Theatre、『SIX』の Vaudexille Theatre、『Lion King』の Lyceum Theatre 等が並びます。当の Fortune Theatre も『Frozen』の Theatre Royal Drury Lane のお向かい。
ミュージカルオタクの私は、歩いているだけで劇場がぽんぽん登場するこの地域に大興奮でした^^

劇場自体はかなりこぢんまりしています。
飲食売店もありますが、かなり小規模です。
エントランスを抜けた先で1階席と2階席への道がすぐ別れます。
チケットを確認する際に道案内をされるので、2階席の私は結局1階の客席を見ることはありませんでした。こっちの劇場って、各客席入り口で係の人がチケットを確認していて、口頭で席を案内されるんです。私は日本では、自分の席と違うフロアに立ち寄ってそこからの見え方を楽しむのが好きだったので、こっちではそれができず残念です💧
劇場の内装も、ロンドンの他の劇場に比べるとシンプルでした。

開演前

私は今回お値段抑えめの2階席後方。
それでも、キャパ自体が小さめなので舞台はかなり近かったです。
2階席が低い(?)のか、あまり高さも感じませんでした。見やすかったです。


演目 『Woman in Black』 について

ストレートプレイの2人劇です。映画が原作だそうです。
現在と劇中劇 (過去) を行ったり来たりしながらお話が繰り広げられます。
現在の登場人物は、弁護士のアーサーと若い俳優。2人で、アーサーが過去に経験した事件を台本にしたものを読む、そのお稽古の場面です。
その台本の中の世界が、劇中劇。そこでは、現実で若い俳優を演っていた人がアーサーとなり、事件の一部始終が描かれて行きます。
事件は殺人で、結構怖いです。


感想

まず、ザ!2人劇!という感じが好きでした。
年始に日本で観た『Muder for Two』以来の2人劇、ミュージカルとストレートプレイという違いはあれど、すごく両者に類似性を感じました。
キャスト自身が小道具を動かしてセットを組む感じや、「自分は今舞台に立っている」ということを踏まえた上での演技(動きを忘れる演技や、照明さんにキューを出す演技など)が、変に気取ってなくて好きなんですよね。
それでいて、2人で数時間の演劇を回す訳なので、よく見るとお互いの小さな所作を拾って活かして、両者の視野の広さと臨機応変さが伺える。2人で大勢の観客を楽しませるんだ!という意気込みが今にも聞こえてきそうでした。
ちなみに、若い男性1名とおじさま1名の2人、という構成も『Muder for Two』と似ているなあ、、なんて思って観ていました。

冒頭は、アーサーが下手に台本を読んで若い俳優がダメ出しして、再度挑戦するも上達しなくてまたダメ出しして…の繰り返しです。
笑いをとるポイントは所々あるのですが、視覚的に変化がなく、まだストーリーにも乗り切れていない状態で、単調な印象を受けました。

ただ、アーサーの演技がめきめき上達して本格的に劇中劇が始まってからは、ストーリーの展開がスムーズになり面白さにも拍車がかかります。
前述の通り結構ホラー色は強め。不気味な演出や、女性の影、女性の叫び声、誰もいない部屋でロッキングチェアーだけが前後に動いている等。しかも、叫び声が唐突に大音量で鳴り響くので、ホラー関係なく反射神経的にびっくりします。笑
2幕になると事件もクライマックスに差し掛かり、とっても面白かったです。純粋に次の展開は何だろう…とわくわくして集中できます。

休憩中


お気に入りは、2幕で登場するわんちゃんのスパイダー。
実態はなく、そこにいる程で演じられます。ちなみに『Muder For Two』にも空想のわんちゃん登場しますよねたしか (笑
ストーリーがどんどんシリアスになって舞台にも客席にも緊張感が張り詰める中で、スパイダーの行動が場を和ませてくれます。キャストさんの戯けた演技が見れるのも楽しいポイントです。

スパイダーと同じように、緊張感の緩和剤となっているのが、劇中劇から現実世界(お稽古場)に戻る場面。寒くて暗くて不気味な空気の漂う劇中劇の間に、薄明るくて暖かくてぼんやりとした印象のお稽古場を挟むことで、観ている側も疲れないし、ストーリーや感情を整理する時間をとれる。
冒頭では単調に感じていた場面も、対照的な場面との対比に用いることで重要な役割を果たすようになるんだなあと感じました。

劇中劇が、お葬式やお屋敷等様々な場面を舞台にして展開されるので、セットは手が混んでいました。射幕の前後を活用しているのが印象的でした。特に、射幕の後ろに組まれていた密室のセットが、ロッキングチェアーのみならず他の家具も充実していました。

結末は、その後どうなったかは観客の皆さんの想像に任せます的な、もやもやとしたもの。劇中劇がアーサーの過去であるという、現実世界と劇中劇のリンクを活かして、それらをうまく混ぜ合わせた余韻の残し方でした。


総じて

印象を一言で表すならば『「Muder For Two」に似ている!!』です。
ストレートプレイよりはミュージカル派なのですが、今回はかなり楽しめました。個人的には、ストレートプレイの場合、大勢よりも少人数のキャストさんの方が、その演技力も際立つし面白さが増す気がします。
これまでにロンドンで観劇した舞台とはまた異なる劇場、舞台で面白かったです。また、日本ではあまり有名ではないですが、ロンドンでは結構ロングランで上演されていて各所で広告も目にするので、その舞台を観劇できたことにも価値を感じます。
ミュージカルや大劇場の公演だけでなく、小劇場のストレートプレイも観劇できて良い経験になりました!


※見出し画像は『The Woman in Black』ATG Tickets HPより
https://www.atgtickets.com/shows/the-woman-in-black/fortune-theatre/


作品情報

Date:  01 October 2022 4:00 PM
Venue: Fortune Theatre
Cast: 
   Arthur Kipps - Julian Forsyth
   The actor - Matthew Spencer
Creatives:
   Playwright - Stephen Mallatratt
   Author - Susan Hill
   Director - Robin Herford
   


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