マガジンのカバー画像

JAXA'21宇宙飛行士選抜試験受験記

22
2021年JAXA宇宙飛行士選抜試験の奮闘記です。
運営しているクリエイター

記事一覧

挑戦を許された日

挑戦を許された日

2021年11月19日おそらく私はこの日を忘れることは生涯ないだろう。

幼い頃から夢見てきた宇宙飛行士。その募集要項に大きな変化があった。

身長:149.5〜190.5cm

何度目を疑ったことか。大声を発しながらベッドで飛び跳ね、訳もわからず冷水で顔をジャバジャバ洗っていた。

身長152cmの私。幼い頃から牛乳を飲んだり懸垂にぶら下がったり、ヨガを続けて背骨のバランスを調整したり。(結果1

もっとみる
そもそもなぜ宇宙に惹かれたのか

そもそもなぜ宇宙に惹かれたのか

「アインシュタイン 16歳の夢」何か大きなきっかけがあったわけではない。ただ1つだけ覚えていることがある。それはたしか幼稚園の頃に教育番組で観た「アインシュタイン 16歳の夢」。

光速に限りなく近い速度で飛んだらどうなるのか、という内容だった。同じく宇宙が好きな父親の隣で、難しい顔をしながら画面に食い入っていた。

それから私は夜眠る前、カーテンと窓の隙間に入って空を見上げるようになった。「この

もっとみる
いざ、選抜試験準備。

いざ、選抜試験準備。

これは文章で書くより、動画を観ていただいた方が早いと思う。

前回の記事で触れた、なぜ結果的にアストロバイオロジーについて卒論を書いたのかについても詳しく答えた。

ただ動画について補足。
「簡単」っていうのは「努力でどうにでもなるレベル」という意味で、私の学力がどうとか、試験の難易度がどうとか、そういう話ではないので誤解しないでほしい。

あとは結局理系のほうが有利?なんて話も出ているが、私はそ

もっとみる
能力と興味の不一致に悩んでいる方へ

能力と興味の不一致に悩んでいる方へ

これは宇宙飛行士選抜試験に直接関係ある話ではないかもしれないが、今回の試験に向けて私はかなり自己分析をした。
また同じく選抜試験を受ける様々なバックグラウンドを持つ方々との出会いもあった。それを踏まえて、選抜試験準備で挫けそうな人はもちろん、就活や受験に悩む若い世代へ向けてもメッセージを送りたい。
(私もこんなこと言える立場ではないのだが、人より失敗は多くしてきたほうだと思うので、反面教師にしてい

もっとみる
目的は何か問い続けろ

目的は何か問い続けろ

手段を目的にしてはいないか?準備初めたての頃、夫に訊ねられたことがある。
「君は"宇宙飛行士を目指している人"になりたいの?」と。
これは自分の中で結構ショックだったし、ということはつまり心のどこかでそんな気持ちがあったのだと思う。

「この参考書フォロワーさんにお薦めされて買ったんだよね」「今度YouTubeにゲスト参加させてもらえることになったよ」「最近スペースで情報交換してるの」「ES提出日

もっとみる
宇宙は味方。〜私の説明書〜

宇宙は味方。〜私の説明書〜

この記事は、直接選抜試験に関係するものではないことを、初めに断っておく。
ただ私を応援してくれているある親子、そして同じような困難を持つ方へ伝えたい、宛先のない手紙である。
もしかしたら不快な思いをされる方がいるかもしれない、先に謝っておく。

発達障害はハンディキャップか私は先日宇宙飛行士選抜用のツイッターアカウントでアスペルガー症候群 / ADHDであることをカミングアウトした。
これは別に言

もっとみる
サイコロで考える自分の「やりたいこと」

サイコロで考える自分の「やりたいこと」

先日Twitterで「宇宙開発に携わりたいとき、大企業がいいか中小企業がいいか」という話題が上がっていたので、これについて考えてみる。
上記内容だけでなく、これは今回私が宇宙飛行士選抜試験へ応募した際にも取り入れた「自分がそれをやるかどうか」決める方法を紹介しようと思う。
一歩が踏み出せない誰かの参考になれば嬉しい。

サイコロで必要なのは「6」か?
すごろくをイメージしてみてほしい。
ゴールへ辿

もっとみる
物理学徒から見た「心理学のすゝめ」

物理学徒から見た「心理学のすゝめ」

初めに断っておくが、私は物理学が専門であり、心理学はせいぜい大学教養課程や独学でしか学んでいないため、専門家からすれば解釈が間違っている部分も多々あると思うので、そこはご容赦いただきたい。
ただ自分自身、心理学にはこれまで幾度となく救われてきた。実を言うと私の本棚は物理学の本と同じくらい心理学の本が並んでいる。
そんな私から見た、「心理学のすゝめ」を今回はお伝えしたい。

「ビッグ・ピクチャーで捉

もっとみる
自分の人生を生きる

自分の人生を生きる

宇宙飛行士選抜試験に向けて準備をしていると、自分を見つめる時間であったり、勉強で躓いたり、誰しも落ち込むことはあると思う。人間は基本的に弱い生き物なので、一度落ち込むと闇から抜け出せなくなる場合もある。
過去の色々な記事を参照してもらえれば、私がこれまで幾度となく闇の沼に溺れたかわかっていただけるかもしれない。

今回はそんな闇からの脱出方法を書いてみようと思う。
おそらくだが選抜試験を受ける方の

もっとみる
憧れのJAXAを退職しました。

憧れのJAXAを退職しました。

私事ですが、本日2022/03/31をもってJAXAを退職いたしました。
任期制職員だったため、任期を更新せず、満了という形での円満退職となります。
上司に頭突きをしたわけではありませんのでご安心を。

JAXAを目指したときのこと。具体的にいつ頃から私はJAXAへ入りたいと思っていたかは思い出せない。幼い頃から宇宙飛行士になりたくて、そのためにはJAXAの職員にならなければいけないのかな、と漠然

もっとみる
悪あがきのラブレター

悪あがきのラブレター

拝啓
JAXA宇宙飛行士選抜試験採用ご担当者様

二度目まして。宇宙を愛する者です。
一生のお願いがあり、勝手に手紙を書かせていただきます。

宇宙飛行士候補者募集要項に、下記の文面があります。

これは、受験者本人が「多様性」と呼ばれる存在である場合にも、適用されるのでしょうか?
それともあくまで多様性を尊重できる「一般的」な視点が必要なのでしょうか?

今の世の中には、たくさんの「多様性」が介

もっとみる
オレの名前を言ってみろ…!!

オレの名前を言ってみろ…!!

※ちゃんと宇宙飛行士選抜試験受験記です。

こんなセリフを吐けるのは、私が知っている中では三井寿とジャギくらいだ。

ジャギの問いは目的が違うのでさておき、三井寿はこの時も三井寿である。
その自覚も持った上で問うている。

ここでこの記事を書いている私、そして読者に問いたい。

「オレの名前を言ってみろ…!!」

私はSpicaだし、国からは八木澤遥香と呼ばれている。
そして読者のみなさんもきっと

もっとみる
書類選抜通過!

書類選抜通過!

2022/04/22 正午。泣きまくった。

発達障害があっても落とされないことがわかった。
これは私の合否に関わらず、多くの人に希望を与えるJAXAの英断だったと思う。

なお「書類選抜」という言葉は誤解を招くので補足しておくと、今回選抜で見られた要素は
・健康診断結果
・健康状況申告(自身の既往歴や服薬歴等を申告する問診のようなもの)
・応募資格(募集要項を満たしているか)
の3点のみ。

もっとみる
何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。

何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。

今回の記事で書きたいのは2つ
・「選抜試験」というものについて
・家族のサポートについて

どちらも大切なのは「覚悟」。

「選抜試験」というものについて文字通り、選び抜かれる試験だった。

選ばれる者がいるということは、選ばれない者もいるということ。
それについて、これまで考えが浅かったこと書類選抜結果の発表後に痛感した。

正直人生で1番の思い出ができた。青春だった。
でもこれは遊びではなく正

もっとみる