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悪あがきのラブレター

拝啓
JAXA宇宙飛行士選抜試験採用ご担当者様

二度目まして。宇宙を愛する者です。
一生のお願いがあり、勝手に手紙を書かせていただきます。


宇宙飛行士候補者募集要項に、下記の文面があります。

国際共同事業、多国籍なメンバーシップのチームの中において、日本の代表として、多様性を尊重しつつ、ミッションを成功に導くための協調性と十分なリーダーシップを発揮できる。
7.求める人物像

これは、受験者本人が「多様性」と呼ばれる存在である場合にも、適用されるのでしょうか?
それともあくまで多様性を尊重できる「一般的」な視点が必要なのでしょうか?


今の世の中には、たくさんの「多様性」が介在しています。
その中には建前、政治的、やむを得ず書かれた多様性があることも知っています。

「多様性」ってなんなのでしょうか?
自分とは違う特性を持つことや、マイノリティーな存在を、「多様性」と呼ぶのでしょうか?
それであれば、ほとんどの人間は「多様性」に属するのではないのでしょうか?


ずっとずっと苦しいです。
けれど私よりももっと苦しい「多様性」を持つ方々がいることも知っています。

だから私はあえて自分の「多様性」と呼ばれる部分をカミングアウトしたうえで、何も隠さない素の自分で、今回の選抜試験に臨んでいます。


「私を合格させろ」とか、そんなことを言っているわけではありません。
そんな奴はそもそも宇宙飛行士に向いていないと自分でもわかります。

ただ私の覚悟を知ってほしいです。
「多様性を尊重」することを求めるのであれば、その多様性とはどんなものなのか、包み隠さず教えてほしいのです。
仮にそれで私が選ばれなかったとしても、多様性のベクトルが違ったのだと真摯に受け止め、もっと努力して改善します。
多様性が多様化してしまったことは、誰も悪くないし、むしろ世の中が良い方向に進むきっかけになっていると理解しています。


もちろん国際的な取り決めにより、宇宙飛行士に求められる身体的特性の基準が公開されていないことは知っています。
それについて異議はありません。

でも、だからこそ、その「多様性」をしっかり教えてください。
綺麗な理由を後付けして、いつの間にかスッと消してしまうような、そんな形での戦力外通告はしないでほしいです。
きちんと戦わせてほしいです。負けても文句は言いません。
今までそうやって生きてきたので、悲しいけれど慣れています。

もし私の特性だけを見て、速攻で不合格の箱に入れたのならば、それが「JAXAの多様性」なのか、今後国際社会を生き抜く中で、一度立ち止まって考えていただけるきっかけになれれば幸いです。


心身ともに「一般的」であることを、宇宙という壮大な存在は望んでいるのでしょうか?
我々が立ち向かう宇宙自体、それそのものが多様な存在なのに…。
(これには私のエゴが混じっています。エゴだらけです。)


決して喧嘩を売っているつもりはございません。
同じく宇宙を愛するものとして、仲間だと思っています。
その「多様性」とやらが、"They"ではなく"We"であることを切に願っています。


だからこその、一生のお願いです。


大人になりきれなかった大人の盛大な悪あがきです。
私のこの一通の手紙が、日本の有人宇宙飛行に輝く一筋の光になることを祈って。


かしこ

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