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むるめ辞典
■立入禁止
[読]たちいりきんし
立つのも入るのも禁止
[例文]
雨の降るしっとり濡れた空気が指にあたって冷たいので傘をさす持ち手を変えながら歩いていた。左手から右手に、また左手に戻したくらいの頃に図書館に着いた。
扉を開けるとまず検索機があって、今日はその手前に二つ赤いコーンが置かれていた。先っちょに繋がれた紐に案内紙がぶら下がっていて「立入禁止」と大きく赤字で書いてある。
中に入ると、貸し出しのカウンターより奥も「立入禁止」になっていた。
世情の影響で図書館は予約資料と返却のみを受け付けていて、館内から本を選ぶことはできなくなっている。
受付の二人のおばさんのうち一人は忙しそうに予約資料を探したり整理したりしているのに、もう一人のおばさんは肘をついて本を読んでいた。
立入禁止の掲示以上に殺伐とした空気を感じて、予約資料を受け取り、そそくさとそこを出た。
雨の日に本を借りたかっただけなのに変な人間模様を見てしまった。おかげで帰り道は余計に手が冷たい気がした。
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。