インド物語-アグラ⑥-

コーラの瓶を揺らしながら話しかけてきた男は雑貨屋の店主で各国の観光客から様々なワードを教えてもらっているらしく、日本語のレパートリーも豊富だった。きっと賢いのだろうと思う。彼が記憶から言葉を引き上げる仕草をどこかで見たことのある気がした。面長の筋張った頬はこけていて、よく見たら日本で勤めていたときの先輩によく似ていた。というか瓜二つだった。先程の眼鏡に手を置きながら考える仕草もほとんど同じ。世界にはそっくりな人が3人いると聞いたことがある。その先輩も賢い人だった。人相と性質っていうのは世界に共通した関係性があるのだろうか?この土地は死者の墓で賑わう街であり、その根はもう引き抜かれることはなく街に深く広がっている。それと同じように、どこかで繋がった魂の根っこようなもののことを考える。この雑貨屋の店主と、私の先輩の根もきっと、どうやっても引き抜けない深いところで繋がっているのだろうと思う。そうでないと、仕草までそっくりな彼らを説明することができない。世界中で行われていることは、どこも大して変わらないというのが私の持論ですが、この時もやっぱりそう思った。私たちは時間と場所を超えてずっといつまでも同じことを繰り返している。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。