インド物語-バラナシ⑨-

本棚にあった深夜特急のページを繰っていたら美人のaがやってきた。「外に出ようよ」と彼女は言った。この宿には見張りの立つ施錠された扉以外に出口はなく見張り本人に錠を開けさせるしかなかった。それで200ルピーを懐に忍ばせて交渉した。「男だけなら行ってもいいぞ」と見張りは言った。倍出すよ、と言うと23時を過ぎた時計を見ながら「故郷に家族がいるんだろ?」とaに向かって言った。それで彼女は諦めて部屋に戻った。個室がどんな風になっているのか尋ねると、彼女は少し逡巡して部屋を見せてあげると言ってドアの前で私を待たせた。

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