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むるめ辞典

■空洞

[読]くうどう

空の洞

[例文]
帰省していても落ち着かなくて、この連休が明けて実行しなければならない仕事の不快さが、じんわりと薄い影になって私のそばから離れなかった。

黒い恐怖に常に押し込まれていて、まんじりともせず、頬が痺れているのをそのままにしておいた。

そういうわけで今そこにあるはずのない緊張を抱えたまま帰省中の時間を過ごした。私を安心させたのは両親が元気そうだということだけだった。

幼い頃から自分を隠すことが得意だった私にとって、久しぶりに会った友人や、一つ屋根の下にいる家族に、この緊張を悟られないように過ごすことは難しいことではなかった。

私はただその場にある空洞に過ぎず、誰の注意も引かないように渇いた笑い声をその空間に響かせるだけでよかったのだから。


サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。