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140字小説

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オリジナルの140字小説です。 フリー台本としてお使い頂けます。 1分ほどで読めます。
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#ショートショート

ウワサをすれば【140字小説】

 優雅な午後のティータイムに来訪者。回覧板を持ってきた隣の田中さんの奥さんは、本当によく喋ること喋ること。
「ここだけの話なんだけど、402の渡辺さんの旦那さん、不倫してるかもなんだって。」
 私はその時の動揺を隠せていただろうか。渡辺さんの旦那さんと関係を持っているのは、私だった。

エンドバースデー【140字小説】

「大人になんかなりたくない。」

 君の口癖。大人は汚い。平気で嘘を吐き、君を傷つけ搾取した。

「私もそんな風になっちゃうのかな。」

 傷だらけを心を抱きかかえ、怯える君。でも大丈夫。君を汚い大人になんかさせない。大人になる前の綺麗なままの君を、僕が。ハッピーバースデー。さよなら。

小さな魔法使い【140字小説】

ここは魔法を売る古いお店。今日は随分と小さな女の子のお客様。手のひらに握られた銀貨を3枚差し出しこう言った。
「魔法をくださいな。」
「どんな魔法にしましょうか。」
「お母さんが笑ってくれる魔法!」
「それならこれを差しあげましょう。」
私は一輪の花を渡し、女の子を見送った。

終わりの雨【140字小説】

もう口も聞いてくれないんだね。終わりにしよう、が最後の言葉。あなたはもう愛しても怒ってすらいないんでしょう。こんな風になるならいっそ、私たちは始まらなければ良かったね。ドアの手前、あなたはなにか言いかけて、でも振り返らずに行ってしまう。外は雨だよ。行かないで。

Everynight【140字小説】

「眠れなくて。」
そんなことを口実に深夜の電話。今日はどんなことがあった?なにかつらいことはなかった?そんな話を時間も忘れて延々と。他愛のない話でいい。ずっと声を聴いていたい。あなたに名前を呼ばれていたい。こんな夜がどうか終わりませんように。