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読書📚『羊と鋼の森』『人間は、いちばん変な動物である』

GWから日常へ帰還し、ゆっくり読んだ2冊です。暑いのか涼しいのか、なんだか落ち着かないですね。

『羊と鋼の森』   宮下奈都

宮下さんの作品は『窓の向こうのガーシュウィン』に続き2冊目。まだまだビギナー読者(?)ですが、じわじわ心を奪われています。

表紙の印象でピアニストのお話と思い込んでいたところ、調律師が主人公と知って手に取りました。
主人公をはじめ、ピアノに惹かれた人がたくさん登場します。

調律や音楽など一つの物事に心を注ぐことの美しさ。澄んで愛らしい表現なのに、手探りで進む主人公と一緒に底知れなさを味わい、息をのみました。
ものに深く魅せられるのは少し怖い。けれど、入り込まなければ見えてこないもの、たどり着けない場所があると思い知らされる。

また、北海道の僻地出身の主人公を通して、すごく「良い意味での地方性」を見せてもらったなあ、と。
開けた場所や、自然に囲まれた場所でいつもより深く呼吸ができる身体。人が少ないことで研ぎ澄まされる感覚……。
私は新潟で生まれ育ったので、そういった「プラスの地方性」を久しぶりに思い出せて、嬉しかったです。

土地に限らずとも、散らかった部屋にいると気持ちも荒れやすいように、やはり人間は周囲の環境や見てきたもので作られていくのかな。
だとしたら自分は一体何でできていて、何を持っているのだろう? と考えています。

ちなみに調律に興味がわいたのは、長野の中古ピアノ店「サンピアン」さんのYoutubeがきっかけ。
ピアノ素人ですが、スタッフさんピアニストさんがチャーミングで、見ているだけでも楽しいチャンネルです↓


『人間は、いちばん変な動物である』   日髙敏隆

動物の本が好きです。日髙さんの訳書は『ソロモンの指輪』『裸のサル』を読んでいて、著書はこちらが初挑戦。

動物を見ていると、ときどき「こんなに毛むくじゃらでいったい何を考えているのだろう?」と思う。でも動物たちからすれば、身体のところどころにしか毛がなく、二本足でフラフラ歩く人間の方が、むしろヘンなのでは……と思っていました。
そのあたりの、人間と他の動物との差異や共通性について楽しく学べます。

著者が客員教授をされていた、京都精華大での半年の講義をまとめた本。平易で柔らかい語りで、この数十年の動物行動学について俯瞰して見ることができました。

学問における時代の移り変わりがすごい。子殺しをする動物などの今はわりと一般的なことも、当時の研究者が「この動物は群れに新しく入ったオスが子殺しをするようだ」と発表したのに対し、「動物は自分の種を守るはず。そんなことをするはずがない」となかなか受け入れられなかったとか。
当然なのですが、生身の学者がそれぞれに考え抜いて、新たな知見を切り開いていったんだ、と実感させられます。

あとは「遺伝が強いのか、学習が強いのか」が興味深かったです。
ずっとカラスの声を聞かせて育てたら、ウグイスは「カー」と鳴くようになるのか否か? など。考えると恐ろしいですが、すごく大事なこと。
人間に関する遺伝VS学習(努力)の話も詳しく知りたいな。

動物本、もっと読んでいこう。日髙さんの本のほか、鳥取環境大の小林朋道さんのシリーズや、テンプル・グランディンさんの『動物感覚』が気になっています。

読書、今までは「休日一気読み派」だったのですが、気負わず平日もちょこちょこ読めばいいのではと気づき、毎日のじわじわ読みを心がけて(?)います。一気読みもジワ読みも、それぞれ良さがありますね。
結論:いずれにしても読書は楽しい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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