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【音楽旅のすゝめ】音楽を求めて旅したら、音楽には関係ない絶景にも出会う<ヨーロッパ>

「音楽旅」とは・・・
このコンサートを現地で聴きたい!
思い切って現地に行って鑑賞してしまう旅のことを、私は「音楽旅」と呼んでいる。クラシック音楽やオペラを愛する私にとって、それは主にヨーロッパで演奏されるコンサートである。

だが、しかし、旅に出るというのは色んなオマケがついてくる。本来の目的ではない、音楽に関係のない場所で感動することもある。たとえば、美しい風景に出会ったとき。

純粋に音楽を追いかけていただけなのに、「え?!何コレ?!」な瞬間(笑)

嗚呼、我が最愛の音楽サマ!
音楽一筋、音楽命なのに、ごめんなさい!
これは浮気なのだろうか?!
ワタシは罪人?!

いや、そんなはずはない。これもきっと音楽の恵みの一部だ。
音楽を求めて旅しなかったら出会えなかった絶景たち。
音楽に感謝!あなたはやっぱり尊い!(笑)

たくさんあるのだが、これまでの旅の中からいくつか厳選してご紹介しよう。


オーストリアの山 ブレゲンツの森

M Suzuki | August 2013 | Au, Austria

オーストリアのスイス国境近くにブレゲンツという町がある。そこからバスで山に向かう。ブレゲンツの森は、山に囲まれた村々である。

小さいけどシューベルト好きの間では有名な音楽祭シューベルティアーデは、その村の1つ、シュヴァルツェンベルクで開催される音楽祭。(もう1つの会場として、ブレゲンツに近い町ホーエネムスでも開催されている。)

シューベルティアーデには2013年と2015年に行ったのだが、初めて行った時は、私はあまり旅慣れていなかったので、現地まで自力で辿り着けるか心配だった。

最寄りの国際空港はスイスのチューリヒ。そこから電車に乗ってブレゲンツまで行って、さらにローカルなバスに乗って山に入っていく。旅慣れない初心者にとっては不安でいっぱいだ。

音楽祭の村シュヴァルツェンベルクは小さな村なので、音楽祭のお客さんすべてを泊めることはできない。小心者の旅行者としてはホールの徒歩圏に泊まりたかったのだが、それはかなり難しい。

調べてみると、どうやら音楽祭のシャトルバスがブレゲンツの森の村々を回って客を運んでくれるようだ。つまり、シャトルバスが停車するホテルを選んで泊まれば良いのだ。

そんなわけで、私はAuという村のホテルを予約し、なんとか無事辿り着いた。バスから見た眺めは素敵だったような気はするのだが、ホテルに辿り着くまでは落ち着かないので見て見ぬふり。

翌朝起きて、ホテルの外の風景に驚いた。上に掲載した写真の山小屋がドーン。曇り空なのに感動的な風景!

なんじゃこれは?!

とんでもないところに来てしまった!

夢中になって音楽を追いかけてきただけなのに、まるでアルプスの少女ハイジ的なところに来てしまった!(笑)

ここはどこ?私はハイジ?(←違う!)

M Suzuki | August 2013 | Au, Austria

小心者のスズキは、その年は音楽祭のコンサート以外は、ホテルの周辺を散歩するだけで幸せ気分いっぱいだった。他の宿泊客によると山がすごいらしいのだが、山に行ってみるなんて余裕はなかった。近所の散策だけで感動しすぎて「ごちそうさま」な感じだったのだから。

それでも、2013年の旅は私を旅人として大きく成長させてくれた。急に強気になって、ヨーロッパならどこでも行けるような気がしてきた。旅の楽しみが広がっていきそうだ。鉄道もバスも村も山も、もう怖くない。

ブレゲンツの森の音楽祭シューベルティアーデを2015年に再訪。宿泊したのは同じホテル。前回は全然使わなかった3泊以上泊まる客に配られる地域バス乗り放題チケットも大いに活用した。山にも行った。乗り放題チケットは山のケーブルカーも乗り放題。山は最高だった。

M Suzuki | August 2015 | Diedamskopf, Austria

合成写真でもAI画像でもない!本当にこんなところだった!
音楽を追いかけていたら、こんなところに来てしまったのだ!

M Suzuki | August 2015 | Diedamskopf, Austria

観光客は多いのだが、ヨーロッパ内(特にドイツ語圏内)からの客ばかりで、アジア人はほとんどいない。(テンション上がる!笑)

M Suzuki | August 2015 | Diedamskopf, Austria

ウシさんの顔を見ていると忘れそうになるが、この旅の最大の目的は音楽である!音楽こそ最高!シューベルトさんLove!(でもウシさんの乳のチーズも最高だった!笑)

車窓より オーストリア、スイス、イタリア

M Suzuki | August 2015 | Austria (near Innsbruck?)

さて、2013年のブレゲンツの森で旅人として自信を付けたスズキは2015年の再訪の際は、前回とは異なるルートでブレゲンツの森に向かった。飛行機を乗り継いでザルツブルクへ。そこから鉄道で4時間かけてブレゲンツへ。よく知らないで乗ったのだが、ご覧の通り緑の山々を眺めながらの素敵な鉄道旅となった。私の周辺に鉄道オタクはいないので自慢する場がないのが残念。

M Suzuki | December 2017 | Switzerland (near Lugano?)

鉄道オタクがいれば、2017年の鉄道旅も自慢したい。旅のメインはミラノのスカラ座でのオペラ他の鑑賞。その後、イタリアのミラノから鉄道でスイスのチューリヒに向かった。途中の湖に鏡のように映った山。

窓の汚れが残念だけど、気に入っている写真の一つ。風景は徐々に雪景色となった。そして、チューリヒで1泊してから夜行寝台列車でドイツのハンブルクへ。写真はないのだが、ハンブルクから高架橋で有名なレンズブルクへ。

M Suzuki | December 2017 | Italy (near Venezia)

鉄道といえば、ミラノ滞在中にヴェネツィアにも行った。ミラノで鑑賞予定のない夜にヴェネツィアのフェニーチェ座でヴェルディの「椿姫」が上演されることを知った。

ヴェネツィア・・・美しいけど観光客でごった返す場所かぁ・・・日本を始めとするバスに乗ったアジアの団体旅行客がウジャウジャいるヴェネツィアに行くなんて・・・抵抗感はあったのだが、音楽のために頑張って行くことにしたのだった。

鉄道がヴェネツィアに入るときに思わず撮ったのが上の写真。真っ青な水が美しい。そして激混みを覚悟して乗り込んだヴェネツィアは、拍子抜けするぐらい穏やかなところだった。(最近の東京の混雑の方がはるかに酷い。)

サン・マルコ広場は観光客だらけだったが、町の中はほとんど人のいない通りもあった。フェニーチェ座近くのホテルは美しい上に格安(2017年当時)だった。観光客だらけだからと諦めないで良かった。音楽のために行ったから、こんな風景を見ることができたのだ。ほら、やはり音楽は偉大なり!

スイスの町 ルツェルン

M Suzuki | August 2013 | Luzern, Switzerland

話が前後するが、2013年のオーストリアのブレゲンツの旅では、飛行機の到着地チューリヒで2泊することになっていた。2泊の間、何をしようか。音楽好きとしては出来ることならコンサートに行きたい。調べて見たところ、チューリヒから電車で1時間のルツェルンで音楽祭があるではないか!しかもちょうどワーグナーのニーベルンゲンの指環「ワルキューレ」の演奏会スタイル上演がある。当時まだ指環を一つも鑑賞したことのない初心者だったが、ここで出会ったのも何かのご縁。思い切って行ってみた。

チューリヒでは、駅のスタッフに少々冷たい対応をされて、なんだかスイスは苦手だなと思っていたのだが、ルツェルンに到着した瞬間に突然スイスが好きになってしまった。なんという美しいところ!(しかもチューリヒより人々が優しい 笑)やはり、音楽を追いかけて良かったと思ったのだった。

北ドイツの現代美術館 NordArt

M Suzuki | July 2016 | NordArt, Büdelsdorf, Germany

音楽旅がもたらした再会だった。

遠い昔、私は高校の交換留学プログラムでアメリカに1年間留学したのだが、同じプログラムで来ていたドイツ人の友達と、その後も連絡を取り合っていた。「会いたいね」「遊びにきてね」なんていうのは社交辞令のようなもので、何年経っても実現しそうになかった。

私がヨーロッパに音楽旅に行くようになって、ようやく再会が現実味を帯びてきたのだ。

「うちの地域でも音楽祭をやっているから来て!家に泊まって!一緒に音楽祭に行こう!」と誘ってくれた。北ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭だ。もう私は行くしかない。断る理由など一つもない。こうして十数年ぶりに再会。その後、すでに3度も北ドイツの友達宅を訪問している。

友達の家でのホームステイ、友達のご家族(旦那さんと娘さん)の存在は、私のドイツ語学習のモチベーションにも繋がっている。

3回の訪問で、日本人観光客があまり来ない北ドイツの名所をたくさん回った。その中から2つだけご紹介しよう。

上の写真、空を見上げるゴリラさん(?)集団は、レンズブルク近くの現代美術館NordArtで撮った。実はNordArtもシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭の演奏会場の1つなのだ。ハイドンのオラトリオ「四季」を鑑賞。この音楽祭のユニークな会場は州内全域に点在している。


北ドイツの城 グリュックスブルク城

M Suzuki | June 2023 | Schloss Glücksburg, Germany

団体観光客に有名なノイシュヴァンシュタイン城?
いえ、違います。北ドイツにあるグリュックスブルク城である。

2023年の旅では、ウィーンでの音楽鑑賞の前に北ドイツの友達を訪ねた。コンサートには行かなかったが、また北ドイツの名所を回った。こんなに絵になるメルヘンチックな美しい城なのに、意外なほど訪問客が少ない。

名所はどこも激しい人混みの日本に住んでいる私から見ると、なんという不思議な光景。人がいないというだけで得した気分になる。

旅の詳細

音楽旅2023年6月ウィーン


ドイツの山 バスタイ(ザクセン・スイス)

M Suzuki | December 2016 | Bastei, Sächsischen Schweiz, Germany

バッハが活躍したライプツィヒのトーマス教会でクリスマスにバッハのクリスマスオラトリオを聴きたいという目的でライプツィヒとドレスデンを訪問したのは2016年。

ついでに行ってみたのがこの山。(オーストリアの山の後、旅先では山が気になるようになった。)ドイツの中のスイス的な山々?!ザクセン・スイス国立公園のバスタイという岩の崖。

ドレスデンから電車に乗って川沿いの小さな駅へ。ボートで川の向こう岸に行って、30〜40分ほど山を歩けばこの圧巻の景色を拝める。

夏は人が溢れる人気の観光地なのかもしれないが、私が行ったのは12月で、山を歩く人はごく僅か。バスで山頂近くまで来た人たちの方が多かったかも。

地面が凍って足元が滑る氷点下になってしまったら断念するつもりだったが、気温は摂氏10度ぐらいだったので迷わず決行した。

個人的な印象なのだが、なぜか私にはここがワーグナーの「ニーベルングの指環」の舞台のように思えてくるのだ(笑)ほら、あそこにヴァルハラが・・・(どこ?)

私が作成したニーベルングの指環の "なんちゃってチラシ" でも、ここで撮った写真を活用している。

山から見下ろしたところに川があるのだが、この川は指環に出てくるライン川ではない。エルベ川である。北ドイツからチェコに流れる川だ。

M Suzuki | December 2016 | Bastei, Sächsischen Schweiz, Germany


チェコの小さな町 ミクロフ

M Suzuki | November 2018 | Mikulov, Czech Republic

日本からプラハへの直行便はない。よくあることだが乗り継ぎ便が遅れて予定より遅い時刻にプラハに到着。疲労困憊なのに寝付けない。仕方ないので朝早く起きて散歩。青く澄んだ美し過ぎるヴルタヴァ川(モルダウ川)を見た瞬間に疲れは吹き飛んでしまったのだった。

この記事でご紹介するのは、そんなチェコを旅した人なら誰でも知っているプラハではなく、チェコ第2の都市ブルノに泊まったときに足を伸ばした小さな町ミクロフ。ここもきっと夏はワイン好きの観光客などが来るのかもしれないが、私が訪問したのは雪が降りそうな寒い11月。旅行者はまばらだった。

ブルノに行ったのは言うまでもなく、好きな作曲家の一人であるレオシュ・ヤナーチェクが活躍した場所だから。ブルノを含むモラヴィア地方に絶対に行ってみたかった。ヤナーチェクのオペラ「利口な女狐の物語」を鑑賞した。

ブルノは驚くほど小さな町だったが、ミクロフはさらに小さい。ヤナーチェクが好きじゃなかったらブルノには行かなかった。ブルノに行かなかったらミクロフにも行かった。ミクロフに行かなかったら、この美しい景色を見ることもなかった。旅でどこに行くかなんて偶然の産物だ。

旅先では、少し高いところから街を眺めたい。これもオーストリアの山の影響だろうか?(笑)やや急な傾斜だったと思うが頑張って登った。

M Suzuki | November 2018 | Mikulov, Czech Republic



ハンガリーの小さな町 ショプロン

M Suzuki | June 2023 | Sopron, Hungary

2023年、人生2度目のウィーンでの音楽鑑賞を実現。目当てはワーグナーのニーベルングの指環の「ジークフリート」だが、他にも複数のオペラに加え歌曲リサイタルなど、充実の鑑賞ラインナップを楽しんだ。

それより10年ちょっと前の初ウィーンの時は、日帰り旅として隣国スロヴァキアの首都ブラチスラヴァを訪問。2回目のウィーンではどこに行こう。旅好きとしては、まだ行ったことのない国に行ってみたい。となると、もうここしかない。ハンガリーだ。

首都のブダペストより近い小さい町ショプロンを訪問。電車でウィーンから1時間ぐらい。ヨーロッパの絶景でよくあることなのだが、こんなに美しいのに人がいない(笑) やっぱり来て良かった(笑)

旅の詳細

音楽旅2023年6月ウィーン


フランスのドイツ風の町 ストラスブール

M Suzuki | December 2022 | Strasbourg, France

日本に閉じ込められたコロナ禍は地獄だった。私はヨーロッパに音楽旅に出ないと生きていけない。

記念すべき旅再開ではドイツのフランクフルトに。フランクフルト歌劇場でオペラ三昧というスケジュールだったのだが、鑑賞する公演が何もない日があった。近隣都市のどこかで何か上演していないか調べてみたところ、電車で2時間ほどのフランスの町ストラスブールでモーツァルトのオペラ「魔笛」がある。初めての音楽旅パリを実行した2012年以来、実はフランスに行っていなかった。10年ぶりのフランス。よし、行こう!

ビジネス都市のフランクフルトは比較的リーズナブルなホテルがたくさんあったのだが、ストラスブールは小さな町。ホテルが少ない上に、有名なクリスマスマーケットの時期なので目玉が飛び出るほど高い。一瞬諦めようかと思ったのだが、こんなにぴったりのタイミングでオペラを上演してくれるのに、行かないと後悔する。涙目になりながらエイっとホテルをポチッと予約した。

フランクフルトのクリスマスマーケットも非の打ち所がないぐらい素敵だったのだが、ドイツと似ているようで違う美しいストラスブールのクリスマスマーケット・・・

オペラがなかったら、ストラスブールまで行くことはなかっただろう。

オペラも面白くて笑いまくったのだが(なぜ笑ったかは旅の思い出を綴った下記リンク先のサイトで見てね)クリスマス時期のストラスブールを楽しめたことは幸運だった。

ありがとう、モーツァルトさん!(←?)

旅の詳細

音楽旅2022年12月フランクフルト&ストラスブール

音楽旅を推したい。円安やインフレのため、気軽にヨーロッパを旅できなくなってしまったけど。

クラシック音楽を鑑賞するとは、作品、作曲家あるいは演奏家と、どのように出会って、どのように関係を育んでいくかということだと思う。一緒にストーリーを作っていく。人生という旅のお供。

それはまるで人間関係のようだ。出会ったときは、イマイチだったけど、徐々に仲良くなって、一時期疎遠になったこともあったけど、復活して今に至る・・・みたいな(笑)

ネットやオーディオで気軽に自宅で鑑賞することもできるのだが、旅を通して、より関係を深められるわけだ。

旅をすると、この記事で紹介した絶景のような「オマケの楽しみ」も付いてくる。記事では省略したが、訪問地の歴史を調べたり、美術館や博物館を訪問したり、食べ物や飲み物を味わったり、現地で出会う人々とのコミュニケーションなども実体験できる。旅が視野を広げるきっかけとなり、刺激を受けて、そこから新たな人生が始まる可能性もある。

時間も費用もかかるのだが、音楽好きとしては、自分にとって大事な音楽をよりよく知るチャンスなのだ。そのためなら、可能な範囲で最大限、時間も費用もかけていいと思う。人生一度きりなのだから。

自宅で音源鑑賞するだけでも沢山語れる内容がある感性豊かな人もいる。素晴らしい。ぜひ話を聞きたい。一方で、音楽のためにわざわざ旅した人の話も面白い。ぜひ話を聞きたい。ワクワクする。どうやってその作品等と出会って、それまでどのように鑑賞してきたのか。現地まで行こうと決断した理由は。どのように鑑賞の準備をしたか、現地で鑑賞した感想、その後の鑑賞への影響・・・などなど聞いてみたくなる。もちろん、音楽に関係のないオマケの旅話も。


ああ、それにしても・・・

久しぶりに写真を取り出して眺めてみると懐かしくて泣けてくる。
ヨーロッパが好き過ぎて、日本にいると虚しい気分になってしまう。

次のヨーロッパ音楽旅まで、退屈な日本で何とか耐えなければならない。
頑張れ自分!

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