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「量」の採用から「質」の採用へVol.8(2/7)

3.採用活動は企業目的達成のための一環

私が、このコラムを通して提唱する科学的アプローチをとり入れた「戦略的」採用システムとは、中・長期的経営戦略に基づいて自社に必要な人材像をまず策定する。そのうえで、求める人材を惹きつけ、確実に採用するために、「組織が必要とする人材」に極カアピールできる方法を通じて母集団形成をし、科学的な選抜・合否決定をする。そして、人材の定着のために、その後の配属・研修・育成まで、コンピテンシーをベースに一つのシステムとして構築していく――こうした一連の内容を包括したもののことをいいます。

さらには将来において、自社の事業を牽引(けんいん)する中核的リーダー(コア人材)となり得る人材の選抜・育成までをも、こうした戦略構想の視野に入れていいでしょう。

事実私たちMSCでは、主にアセスメントセンター方式およびインタビュー方式のアプローチで、このような領域のすべてをサポートしています。言い換えれば、採用活動も適材適所の配属も、あるいは人材育成、人事評価、そして次世代リーダーの選抜も、すべては一本につながっているのです。

これらを一本につなぐ共通の要素となるのが、コンピテンシーをベースとした適正なアセスメントであり、その目的は自社の競争力を高めるということにほかなりません。企業価値を生みだす最大の源泉であるヒトの適切な評価・選別・能力開発を通じて、企業の継続的成長・発展の原動力となる市場競争力を強化・向上させること。採用活動はこの目的を達成するための最初の入口として位置づけられるべきであり、採用戦略はそのためにこそ構築されるべきものなのです。 

ただし本コラムで、以上に述べた広範な領域のすべてに筆を進めることはテーマの拡散につながるため、とりあえずは控えたほうがいいでしょう。 

採用のテーマに絡めて一つだけ提言するなら、優秀な人材を組織に定着させ最大のパフォーマーにしていくうえでの鍵を握るのは、マネージャーによるところが大きいということです。現に、1年以内に新入社員が会社を辞めていくその理由のトップは、上司との関係ということです。最近どの企業も取り組んでいる「リーダーシップ開発」を含めたマネージャーの課題など、このテーマについての説明は別の機会に譲ることにします。 

本コラムでは序章から書き続けてきた採用活動の改革そのものにフォーカスし、「システマティックな採用プロセスを通して、自社に必要な人材を採用するにはどうすべきか」との観点から、その戦略化のための要点を整理していきたいと思います。

4.「将来」を見据えて採用のあり方を見直す

採用には、直近かつ緊急のニーズに応えなければならないケースが少なくありません。「欠員が生じたからすぐ補充してほしい」という要請に対応した中途採用から、かつてのバブル期のように「とにかく人手が足りない。多少リスクがあってもいいから採用してまわしてくれ」という要請に基づく新卒者の大量採用まで、それはさまざまです。 

もちろん、必要な数の人員確保は採用の大切な目的の一つですから、こうした活動をないがしろにすることはできません。ただ、その一方で、「企業競争力の強化に沿った採用とはどうあるべきか」を、人事担当の方だけでなく経営者も、また経営の一端に携わる管理職の方にも、考えていただく必要性を痛感します。

そのとき重要なのは、けっして現在を軽視するのではなく、現在という現実に立って、将来を見据えるという視点です。「とにもかくにも“今”役に立つ」という人材を確保することは現実的問題の解決として必要ですが、「とにもかくにも“今”役に立つ」能力要件が“将来”においても引き続き役立つという保証は何もありません。 

企業は、自らを取り巻く環境の変化に適応するために進化し続ける有機体であり、ビジネス環境の変化や技術革新によって、事業内容もビジネスモデルも、それを方向づける経営方針もどんどん変わっていきます。そしてその変化に応じて、「成功する人材」「必要な人材」の能力要件も確実に変わっていくのです。 

しかも、ことに新卒採用の場合“今”採った人が力をつけて戦力となり、さらに経営の基層を担うマネジメント力を発揮するようになるのは、企業が変化していく先の“将来”においてです。採用を戦略的に考えるというのは、こういう視点をもって現在の採用のあり方を見直すことにほかなりません。 

見直すべきところはいろいろありますが、最も効果的なのは採用すべき人物像――そのコンピテンシーの要素でしょう。といっても、コンピテンシーを評価の対象にしていない企業が数多くあるという現状では、「見直す」というより「新たに策定する」といったほうがいいかもしれません。 

いずれにせよ、面接で評価すべきコンピテンシーの要素として、将来必要とされる人物像の能力要件を組みこんでいくことが重要です。 

今までとは違うやり方、違う基準を適宜とり入れて採用していかないかぎり、人材は刷新しませんし、企業は来るべき環境変化に対応しにくくなります。どの企業においても、古いカルチャーのほうが強いのです。 

人材の刷新がないところで組織の新陳代謝は起こらず、したがって企業の進化もまた滞ってしまうでしょう。新陳代謝とはけっして世代間の交代を意味するのではなく、新しいヒジネス環境への適応力の強化にほかなりません。だからこそ将来を見据えて、採用を戦略的に行っていただきたいのです。


【著者プロフィール】 伊東 朋子
株式会社マネジメントサービスセンター執行役員 DDI事業部事業部長。国内企業および国際企業の人材コンサルティングに従事。

お茶の水女子大学理学部卒業後、デュポンジャパン株式会社を経て、1988年より株式会社マネジメントサービスセンター(MSC)。

人材採用のためのシステム設計、コンピテンシーモデルの設計、アセスメントテクノロジーを用いたハイポテンシャル人材の特定およびリーダー人材の能力開発プログラムの設計を行い、リーダーシップパイプラインの強化に取り組む。
(※掲載されていたものは当時の情報です)

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会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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