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「発達障害の診断を受ける3つの意義」を読んで ー診断を受けた後のことを考えるー

こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。暑い日が続いています。私の地域は北国ですので、比較的涼しいですが、それでもつらいです。猛暑の地域にお住まいの方は、熱中症等に注意してくださいね。
さて、今日はmsnニュースで見かけた記事の紹介をさせてください。発達障害の診断についての記事です。

診断を受ける「3つの意義」

立石美津子さんという方の知人が、夫に反対されながらも、息子の発達障害を疑い、診断を受けました。その際に感じたメリットについて書いてある記事です。

この記事では、以下の利点を挙げています。

  1. 【医師の診断により、合理的配慮を得られる】

  2. 【家族の理解を得ることができる】

  3. 【自分を責めなくなる】

これらの利点については、まったく異議がありません。
特に、”3”については大きな意義があると感じています。
本来は、診断が付く前から自分を責める必要は無いのですが、診断があることで、

親は「しつけの仕方が悪い」が誤解だと分かり、本人も「自分が友達と同じことができないのは、障害のせいなんだ」と自分を責めることがなくなります

本文より

と考えられるのは、大きな利点でしょう。
一方で、診断を受ける前の予備知識として、以下のことがあると良いでしょう。以下は、特別支援学級教員として13年間勤めてきた感じている”診断”についての補足説明です。

特別支援学級教員からの補足情報

診断がついたとしても、子どもは変わらない

以前、

こちらの記事で紹介した保護者会の会長は、

自閉症と診断された瞬間、かわいかった我が子は一度死んだように感じました。

と、その時のことを振り返っていました。
その後、”診断があっても、我が子は変わらない”ということに気付いたと言っていましたが、それまでは時間がかかったようです。
これまで、おうちの人が感じてきた

  • 生まれてきたときに自分を見つめてきた、かわいらしい瞳

  • 初めて歩き始めたときの、嬉しかった感情

  • これまで培ってきた家族の歴史

などの様々なこと。診断が付いたとしても、これらが否定されるようなことではないということだけは、心に留めておいてください。

診断をすぐに受け入れられなくても良い

伊藤明芳という方が、”保護者の「子どもの障害認知と障害受容過程」の様相ー事例分析に見る7つのパターンー”という論文の中で、次のように言っています。

先天性の奇形がある子どもをもった親の段階的な心理的反応は、キューブラー・ロス(1969)の死の受容プロセスと類似している。

伊藤明芳:保護者の「子どもの障害認知と障害受容過程」の様相ー事例分析に見る7つのパターンー
より

キューブラー・ロスの”死の受容プロセス”は5段階あると考えられています。大きな病を患った方が、自らの死を受け入れるためには、時間がかかる。そして、その段階も一つずつ踏んでいく場合が多いというものです。

キューブラー・ロスの死の受容プロセス

子どもの障害を受け入れるということも似たようなプロセスをたどるということは、私も特別支援学級の教員として、保護者の方とたくさん語り合ってきた中で感じてきたことです。
すぐに受け入れる必要はありません。ひょっとすると、一生受け入れられない部分もあるかもしれません。でも、大丈夫です。一番大事なのは、”子どもが幸せになる”ということです。

すぐに支援につながろう

立石美津子さんの記事では”合理的配慮”という言葉が出てきましたが、合理的配慮は、お子さんが受けられる支援のうちの一つです。
そして、立石さんの記事の中でも

障害者差別解消法により幼稚園、保育園、学校側に対し、合理的配慮も求めやすくなる

本文より

と書かれています。
つまり、支援というものは待っていても受けられません。支援を受けるためには、施設や支援者につながっていく必要があります。
主に、つながりやすい機関として

  • 教育支援センター(教育センター・教育相談センター)

  • 児童相談所

  • 相談支援事業所(デイサービス等、福祉との連携の相談に乗ってくれます)

  • 学校(特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーを指名しましょう)

  • デイサービス

  • 発達クリニック(病院)

等があります。
児童相談所と聞くと、「虐待?保護?」などネガティブな思いをもつ方も多いと思いますが、本来業務は児童の育ちや育て方での不安について寄り添ってくれる機関です。地域によっては養育手帳(愛護手帳等)の交付機関でもあります。
乳幼児期であれば、保健師の方への相談が有効な場合も多くあります。
”つながる”ということは、面倒ですし、難しいです。でも、経験が多ければ多いほど有益なつながりを作れるようになります。勇気を出して一歩踏み出しましょう!

進路の情報について調べよう~学校祭見学のススメ~

発達に障害があることを診断された場合、私たち親がたどってきた教育ルートと別のルートを歩むことがあるかもしれません。その場合、かなり不安になることでしょう。
その際は、

  • 地域の教育支援センター

  • 特別支援学級担任

  • 高等支援学校進路担当教員

に連絡し、

自分の子どもには○○という障害が診断されている。
これからどのような進路につながっていくのか不安がある。

ということを伝えてください。きっと答えてくれるはずです。
また、私は個人懇談で、保護者の方に

地域の高校、もしくは特別支援学校高等部(高等支援学校含む)の学校祭に、お子さんと一緒に出掛けてみてください。

とアドバイスしています。

  • 子ども自身が自分の進路について楽しみながら考えることができる。

  • 体験入学やオープンハイスクールよりも、生徒の自然な姿が見られる。(恋愛・青春している子もいる!)

  • 廊下に”進路情報”が貼ってある

というメリットがあります(生徒が作っている軽食も美味しいです!)。私は、できるだけ早くから行くことをおススメしています。
※コロナ対応のため、学校祭への一般参加を禁止している学校が多くあるようです。事前に確認をしっかりとりましょう。

診断はツール。本当に大事なのは子どもをよく見ること。

自閉スペクトラム症と診断された子が二人いる。二人は双子である。
Aくんはずっと電車の本を見ている。支援者とは話さない。
Bくんはずっと仏像の話を支援者としている。止まることは無い。

これは、とある講義で聴いた話です。
”自閉スペクトラム症”という同じ診断を受けた二人ですが、まったく別の傾向を示しています
診断というものは、同様の傾向を示す大まかなくくりです。医師は治療や投薬、療育の必要性に応じてカテゴライズをする必要があるため、診断をします。それは本当に大切な仕事です。
しかし、診断がその子のパーソナリティすべてを満たすかというと、そうではありません
その子が何を求めていて、どのような能力があるのか。
どのような時に笑顔になって、どのような時に怒るのか。
どういった人に出会い、どのような人生を歩んでいくのか。
それはその子が歩んでいく人生です。
診断に関わらず、見つめていってあげる必要があるのではないでしょうか。
では、またね~!

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