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「うまいけど、ダメな写真」と「ヘタだけど、いい写真」

「うまいけど、ダメな写真」と「ヘタだけど、いい写真」

作家の岸田奈美さんと16才の男子高校生に写真を教えることになった。二人ともカメラのことも写真のこともまったく知らないようだ。それでもシャッターを押せばうつるのが写真の魅力のひとつだ。

しっかりのレベルにもよるけど、カメラのことと写真のことをしっかり学ぼうとしたらそれなりに時間がかかる。大学や専門学校で写真を専攻したぐらいだと、撮影現場ではまったく役にたたず、足をひっぱるだけの存在になって辛酸をグ

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3歳の誕生日。

3歳の誕生日。



息子が3歳になった。ちょうど誕生日の夜に熱海で花火大会があることを知った。
出発した日は大雨だけど、翌日は晴れるという天気予報だ。

去年のいまごろは泣くか笑うという表現でしか主張ができなかったのが、いまでは言葉で主張するようになったので、子育てがとてもラクになった。
食べたいもの、飲みたいもの、遊びたいこともすべて言葉でいってくれる。

親子そろって好きなことをやって、嫌なことをしない日々を

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ママを探す、お父さんとの冒険。

ママを探す、お父さんとの冒険。

妻はぼくのことをお父さんとよび、ぼくは妻をお母さんと呼んでいる。

でも息子の生きる世界では、だれかにぼくたちのことをパパママと呼ばれることが圧倒的におおい。だから息子はぼくのことをおとーさん、妻のことをママと呼んでいる。

ぼくのことをパパと呼ばないのは、だれかにパパと呼ばれる回数よりも、妻が息子にぼくの話をしている回数がおおいからだとおもう。

この日は職場の食事会が夜にあり、18時す

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ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。



ぼくは作品が有名になってほしいとおもったことはあるけど、自分自身がタレントや文化人のように有名になりたいとおもったことは一度もない。講演会やイベントなど人前は苦手だし、取材などで写真を撮られるのも苦手だ。撮られる側になってみてわかったことだけど、写真を撮られるのというのはストレスだ。

それでも病気になってから“有名にならなければいけない。”とおもうようになった。有名になって女性にモテたいとか

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気仙沼

気仙沼



東日本大震災から8年がたった。

黒い津波が畑と住宅をのみこむ映像をNHKが中継していたことを鮮明に覚えている。時刻は16時ぐらい、東の海から上ってきた津波が西日にあたり、ぼくは美しさのようなものを感じてしまい、いまこの瞬間にここに行って写真を撮りたいとおもった。

甚大な被害があることは容易に想像ができた、いまふりかえれば恐怖心から一種の現実逃避だったのかもしれない。

“ファインダーを

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写真集 幡野広志

写真集 幡野広志



死ぬまえにやっておこうと決めたことが、ひとつづつ消化されていく。背負ったすこしおおきな荷物をおろしたときのような身軽さを感じるのだけど、写真集に関しては長年ノドにささった魚の骨がとれたようなスッキリ感や安堵感がある。

ぼくは肉派だし魚の骨が何年もささったことがないからわからないけど、ずっとなんとかしなきゃとおもっていた写真集をだすことができた。

初めての写真集だ。次の写真集をだすことはない

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自分をたもつために。

自分をたもつために。

大晦日だ、病室でゆっくりすごす年末年始もそう悪くない。
原稿を書いたり、病室から外の写真を撮ったり、映画を見たり、読書をしたり、あまり日常と変わらない日々をすごしている。ただ場所が病室なだけだ。

noteの投稿企画に“今年のベストショット”というものがあり、なんとなく今年一年でセレクトして保存した写真の枚数を確認してみると15000枚の写真があった。きっとこの10倍はシャッターを押しているので、

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死ぬかもしれないから、言っておきたいこと。

死ぬかもしれないから、言っておきたいこと。

ガン患者になってちょうど一年がたつ。
この一年はまさに激動だった、充実していたともいえるのであっという間に過ぎたようにも感じた。このペースで進んだらあっというまに人生が終わってしまいそうだ。

去年とおなじように今年も病院でクリスマスと年末年始も過ごすことになった、じつは肺炎で入院している。肺炎ってはじめてなったけどけっこうヤバい。

いつもの仮病とは明らかにちがう様子に妻が異変を感じ、大学病

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ネパールから帰国。

ネパールから帰国。

帰国して数日がたつ、ようやく写真の現像が終わった。

こんかいの旅は動画撮影がメインで、動画のカメラはライフルのような大きな装備で、写真のカメラはピストルのような小さなおしゃれカメラで撮影をした。
たぶんネパールの方々からはぼくの顔よりもカメラが印象に残っているとおもう。

これから動画の編集作業もはじまるので、たのしみだ。
ネパール、たのしかった。

成田空港に到着して、お昼にお寿司を食べた。

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子どもの場所。

子どもの場所。



立川市にある昭和記念公園にいってきた。

ぼくは立川市出身なので昭和記念公園は、子どものころになんども行った場所だ。子どものころになんども行った場所というのは、大人になるとあまり行かなくなる。

行動範囲が広くなったことが理由なのか、行動圏内から外れてしまうのか、昭和記念公園でフラれたとか、とくにイヤな思い出があるというわけなじゃないのに、行かなくなる。

子どもがいると自分の子ども時代をなぞ

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東京からバンコクからカトマンズ。

東京からバンコクからカトマンズ。



はじめての場所ってやっぱり、たのしい。
今日はどこにいってどんなものを撮るのだろう、たのしみ。

伝えたいことを、伝えること。

伝えたいことを、伝えること。

銀座ソニーでの写真展が明日でようやく終わる。

この記事は写真展が終わったあとになぞなぞの答え合わせのつもりで公開しようと思っていたのだけど、イタズラをしたときについつい犯人であることを名乗り出たくなるようなものでいま書いている。

2週間の写真展はおかげさまでとても盛況だった。
一万人をこえる人が来てくださった。ありがたい。新宿のニコンで一週間個展をしたときの来場者数が一日で来場しているような状

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優しい写真

優しい写真



写真展をやります。というか今日(11月2日)からやっています。
和光と三越のある銀座を象徴するような銀座四丁目の交差点、銀座プレイスの6階ソニーイメージングギャラリーにて11月15日までやってます。

きっとこういう告知って1週間とか2週間前からやるものなんだろうけど、なんだかんだ当日の朝になってしまった。忙しいとか、体調が悪いとかが理由ではなくて、これがぼくの性格なんだとおもう。

8年前に

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妻の写真。

妻の写真。

病気になってから写真が変わりましたか?

よく聞かれる質問だ。
写真が良くなったとか、撮らなかったものを撮りだしたというような趣旨の答えを期待されるのかもしれないけど、現実はそんなにスイーティーではない。

撮りたいもの撮るというシンプルな価値観なので、健康だろうが病気だろうが撮る写真は変わらない。べつに写真家だからとかではなく誰だってそうだとおもう。

ネコが好きな人はネコばかり撮るし、美味し

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