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燃えあがる女性記者たちーペンの力で社会を変える‼️

先週末に、インドの映画を見てきました!!

インド北部のウッタル・プラデーシュ州にあるダリトの女性たちだけで立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ(ニュースの波という意味)」の活動を、5年間にわたって記録したドキュメンタリー映画です!


燃えあがる女性記者たち(2021年 インド)


映画の舞台のウッタル・プラデーシュ州はインドで最も人口が多く(約2億人)、農業への依存度の高い地域です。
なんといまだに電気や水道のインフラが整備されていないエリアが多く、汚職や女性に対する暴力、社会的少数者への残忍な抑圧が行われていることで知られています。

そのような州で、インドのカースト制の最下層のダリト(不可触民)に位置づけられる女性たちだけで運営されている新聞社が、「カバル・ラハリヤ」です。

32歳の主任記者であるミーラが28人の記者からなるチームを率います。
取材対象は大手メディアが注目しない農村や都市の環境、インフラの問題、違法労働、地域社会での差別、女性に対する性暴力など。
「農村ジャーナリズムとフェミニスト」を掲げ、地元の生活に根ざした草の根報道をモットーにしています。

最初は紙媒体で報道していましたが、創刊15年目でデジタルニュースに移行。
スマホを活用して動画でニュースを伝えるようになりました。
汚職や女性に対する暴力、整備されない道路や不十分な公衆衛生、貧弱なインフラ、違法稼働中の採石場での危険労働などの問題を報じる彼女たちの映像は人気を集め、2016年の撮影開始時には数千回であったYouTubeの再生回数は1億5千万回近くに達します。

彼女たちはどこへでも現場に足を運び、採石場をしきるマフィアにも、性暴力の捜査をしない警察にも汚職の疑いのある政治家にも突撃取材をします。

取材には車やバイクは使わず。貧しい人たちと同じようにバスや列車や徒歩で移動します。
金銭や飲食の供応も受けません。


記者たちは全員ダリト出身ですから決して恵まれた環境にはいません。
リーダーのミーラは14歳で結婚。
婚家の支えがあって学業を続けられました。
しかし新聞の仕事を始めたときは家族に反対され、夫からもやめてくれと言われています。


新人記者のスニータは10歳の時から違法採石場で働いていました。
今は記者の仕事を始めて成長著しいですが、家族や周囲から結婚を迫られています。
また記者の中には十分な教育を受けたことがない女性もいます。
シャームカリは銀行の書類も書けません。
英語も読めなくてスマホの操作も十分にできませんでした。
でも記者の仕事には情熱を燃やします。
夫に反対されても、「あんたは捨てても仕事は捨てない」と言い返します。



ダリト(不可触民)に対する差別は激しく、ダリトの家は村はずれにあって電気もなく夜は真っ暗。家の中にトイレもありません。
女性でも外の森に用を足しに出かけるのです。

ダリト女性は暴力に遭うことも多く、たとえ性的暴行を受けて警察に訴えても取り合ってもらえません。

しかし、カバル・ラハリヤが取り上げて報道することでトイレができたり、道路が舗装されたり、目に見えて環境が改善しました。
性暴力の加害者も逮捕され起訴されました。

ダリトで女性というカーストとジェンダーの二重差別を受けている女性たちが「ペンの力」で確実に社会を変えているのです。


ジャーナリズムの仕事とは何か?この問いにミーラは答えます。

「ジャーナリズムは民主主義の源だと思う。
権利を求める人々の声を、メディアは行政まで届けることができる。
人権を守る力があるからには、それを人々の役に立てるべきだと思う。
責任を持って正しく力を使う。
次世代の人々はいつか私たちに問う。
『報道が抑圧された過度期のインドで、あなたたちは何をしていたの?』うちの記者は胸を張って答えられる。
『権力の座にある人々に責任を問い続けた』『社会の声となってもろい民主主義の柱を支えた』と。
私たちは今までもこれからも社会を映す鏡なのだ。」


今日も「カバル・ラハリヤ」はニュースを配信します。

「カバル・ラハリヤ、身近なニュースを声に」


参考資料
映画公式パンフレット


執筆者、ゆこりん


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