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経済安全保障の闇暴走する公安警察―大川原化工機「冤罪」事件②

前回の記事の続きです!


冤罪はなぜ起きてしまったのか?!
なんと政治が関連していたとの話が………


事件の捜査を担当したのは警視庁公安部外事課第5係。いわゆる外事警察です。
第5係は不正輸出担当です。
外事警察が扱う情報は、外国関連の機密情報が数多く含まれ、捜査対象も捜査手法も秘密のベールに包まれています。

2017年から内定調査が始まりました。
輸出する製品が規制に該当するかどうかその要件を定めるのは経済産業省の役割なので、第5係は経産省と打ち合わせをしながら捜査を進めました。
噴霧乾燥機が規制対象となるためには、「定置した状態で内部の滅菌、又は殺菌をすることができるもの」という省令にあてはまる必要があります。
噴霧乾燥機で生物兵器を製造した場合、製造後に機械内部に有毒な菌が残ってしまいます。
作業する人間がその菌に感染するのを防ぐため「定置状態」つまり機械を分解しないそのままの状態で内部の菌を殺滅=無毒化できる性能が軍事転用には必要とされるのです。

省令にある「殺菌」とは何を指すかが曖昧でした。
元々は「消毒」という意味で化学薬品を使って菌を殺すこと定義していました。
第5係は独自の解釈を行います。
化学薬品を使って消毒しなくても「殺菌」という言葉には菌を殺す具体的な手段方法は規定されていないとし、大川原化工機の噴霧乾燥機の「熱風」に注目しました。


捜査はなかなか進展しませんでしたが、2018年公安部長が動いて強制捜査の道が開かれます。
大川原化工機は同社の噴霧乾燥機が中国の軍事企業に流れているという指摘を受けて、中国にある自社製品の所在をすべて確認しました。ですが軍事転用の事実は見つかりませんでした。
むしろ同社は輸出先の企業には軍事転用しない旨の誓約書を書かせていました。

2018年12月から2020年3月まで任意の事情聴取を重ね、会社や工場などを徹底的に家宅捜索しましたが軍事転用の証拠はありませんでした。

実は大川原化工機の噴霧乾燥機には構造上温度が上がりにくい場所(測定口)があり完全な殺菌ができませんでした。
この事実は会社の従業員もすべて知っていたので、実験をしてその結果を捜査当局に届けました。
また警察独自で実験するようにも依頼しました。
ところが警察公安部はその実験結果を無視。自らも再実験しませんでした。(この対応は違法と認定されました。)


こうして2020年3月に社長ら3人を逮捕に踏み切ったのです。
証拠がないまま自白を取ろうとしたため保釈を認めず勾留は約11ヶ月に及びました。
逮捕された一人の島田順司さんは公安部の取り調べで、捜査当局が勝手に作った「弁解録取書」にサインを強要されました。
これは本来逮捕直後に被疑者に容疑への言い分を聞き作成するものです。
明らかに公安警察は自分たちの勝手なストーリーを作り、それに沿って事件を作り上げようとしたのです。

 

なぜこのような暴走がおこったのでしょうか??

当時の安倍晋三政権は「経済安全保障」に力を入れようとしていました。
「経済安全保障」とは半導体など戦略物資の輸出規制など経済的手段で国家の安全保障を確保することをめざすものです。

生物兵器製造に転用可能な危険な機械を中国軍とも関係がある企業が不正輸出、それを警視庁が取り締まる・・・
そのような形で経済安保に協力すれば、政権の意向にも沿うことができると警察上層部は考えていたのかもしれません。

予断と偏見に満ちたあまりにずさんな捜査でした。
貴重な人命が失われてしまいました。
都や国は控訴しましたが、このようなことが二度とおこらないよう自らしっかり検証をすべきです。


執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン

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