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「チャンの失踪」~市内一周駅伝大会~前編


これは、繋がりと絆のおはなし。
お正月は駅伝大会で盛り上がる。
神奈川県伊勢原市にも市内一周駅伝大会がある。

木ノ子二十歳くらいのはなし。 木ノ子とは、私。

いつもの様にフラフラフフフの毎日を、過ごしていたのだが、駅伝のチラシを見つける。閃いた私は、友人の彼に電話をする。

「俺達ならやれる」
「俺達なら走れる」


彼と言うのもかったるいのでポップとする。

ポップと俺は、5人いなければ駅伝に出走出来ないので、メンバーを集めた。やることがない日常を打開するのに必死だった。連絡を取ったのは高校の同級生。もと2組の奴らだ。

言えばホイホイ捕まるので、走る事になった。

ここにチーム「もと2」が誕生する。

ただ走るのはつまらない。そんなもの木ノ子じゃない。

俺は企画書を書いて伊勢原FMに持ち込んだ。

伊勢原FMとは地元ローカルのラジオ局であり、当時市内一周駅伝を実況するという奇跡的なラジオ局である。

現在は、存在しない。

俺は塞ぎ込んで毎日に文句を言っていた日々から、脱するようにふざけた。

「素人が繰り上げスタートにならずに襷が繋がるか取り上げて欲しい」

明らかに、お膝元箱根駅伝の影響を受けていた私は、無謀にも突撃した。

言えばホイホイ捕まる伊勢原なので波もなくすんなりと、取り上げてもらう事になる。

ここから真剣な練習が始まる。本気でふざけないと面白くないのが俺なので、かなり走り込んだ。

毎日。ほんとに毎日である。鶏の胸肉中心の食事。サラダばっかりとかなり絞った。

日々軽くなっていく体は、体重と比例してタイムが伸びていく。実感として感じる事はダイレクトに自分に跳ね返ってくるので走るのが、楽しくなっていった。

ある日ポップから集合の連絡がメンバーにかかる。

「大事な話がある」

大事な話とは大抵そうやってはじまる。

「親父に監督をしてもらいたい」

すごく真面目なテンションで彼は語る。

ポップとは天然である。

「そしてメンバー発表をしてもらいたい」

は?

最初から5人ですけど

繰り返すがポップとは天然である

この頃になると何回かラジオ出演も果たしており、俺はそっとポップに「俺達伊勢原のアイドルだぞ」と事あるごとに吹き込んでいた。

ポップはその気なのである。

本番一週間前である。メンバーの1人「チャン」が、辞めたいと言い出した。練習中に田んぼに落っこちて泥だらけになり、俺達に笑われたのが原因だ。

チャンは言った

「アイドルなんかなりたくないんだよ」

当たり前だ。

その日以来、練習に現れず最後のラジオ出演をポップがする。ここで、彼の天然が極まる発言をするのである。

「僕達は、伊勢原のアイドルとしてやってきましたが、今ピンチです。仲間が一人アイドル辞めたいと言い出しました。でも僕はこのラジオを聞いていると信じています。皆さんと明日お会いして襷と絆が繋がる奇跡を体感しましょう」

なんのはなしですか

俺が一生こいつと仲良くしようと思った瞬間である。

2022年の秋に行う予定のKONISHIKI来日40周年記念イベントに向けて、自分達なりのお祝いを自分達の生まれた町、神奈川県伊勢原市で行うために、過去から現在を綴っていきます。ご一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

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