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新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part1ロンドの旅 全編
Part1 ロンドの旅
Chap1 ニューヨークの事件1.探索
ニューヨーク郊外で3人は1人の女性を待っていた。
七分袖のジャケットにTシャツとハーフパンツ、革靴を合わせた男性と、シンプルなワンピースを着た少女2人は、全身をまっさらな白色で揃えている。さらに、肩まであるストレートの金髪と金色の瞳はこの3人に共通していて、いささか異彩を放っていた。
初めまして。
腰まである黒髪ストレート
新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part2ソナタの旅 全編
Chap1ルンビニの事件1.悲願
朝起きるとすぐ異変に気付いた。自慢の黒髪ロングストレートがベリーショートになっている。縮毛矯正も期限切れでクシャクシャだ。だが、程なくしてそれは自身の決断だったことを思い出す。昨日、長年伸ばし続けた髪と訣別したのだ。それは決して後戻りをしないという、彼女の決意表明であった。一見穏やかにも感じ取れる日常は、少しずつ蝕まれていて、音を立てて崩れ落ちるのは時間の問題だ
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件
11. 銷失
3人が建物内に入ると初老の女性が出迎えた。ロンドとソナタが思わず顔を見合わせたのは、彼女から発せられる謎の黒いオーラが消えていたからだ。2人はすぐにでも議論を交わしたかったのだがそんなわけにはいかず、平静を装い普段どおりに振る舞った。
あら、あなたたちそんな驚いた顔してどうしたの?
2人はまた動揺した。いつもなら表情や体の動きに気を配り、心中を簡単には表に出さないようにしてい
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件
10.反応
警察官がやってきてからは、鑑識などによる現場検証やロンドたちや事務局員からの聞き取り調査が行われた。血液が付着した車は証拠品として押収されるため、女性には代車が用意される。並行して周辺の捜索活動もされたが、凶器や不審な人物、怪我を負った者など事件に関係しそうな手掛かりは一切発見されず、一通りの確認を終えると彼らは速やかに去っていった。気付けば時は過ぎ、もうすぐ正午になろうとしている。
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件
9.波動
は、初めまして。あの…ここに来る時こちらの女性の車に乗せていただいたのですが、少し車から離れて戻ってくると、車体に大量の赤い液体が付いていました。人間の血液ではないかと思っています。
それは大変ですね。すぐに見にいきましょう。
ロンドは珍しくたじろぎつつ状況を伝えた。初老の女性がほかの事務局員と見られる人間に一言告げたあと、5人は車を止めてある場所へ向かう。道中では、女性がいる
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8.慄然
旧友が座っていた助手席側のドア外面全体にベットリとした赤いものが大量に付着している。ロンドが鼻を近づけ確かめると血のニオイがした。ドアやその周辺をよく見ると地面も含めて飛び散ったようなあとがあるためここで人が刺されたのか殴られたのか…そんな憶測がされる状況である。
もうすぐ時間になるね。ひとまず僕らだけでも集合場所に向かおう。そこで状況を説明して警察を呼んでもらおう。
そうね。
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7.逐電
鬱蒼と生い茂る木々の間を抜けて4人を乗せた車は直走る。舗装されていない道を地図だけを頼りに進んでいた。なぜかカーナビで確認しても目的地である施設は出てこないのだ。とにかく3人は、とても歩きづらそうな道中を見ながら、車に乗せてもらえて幸運であったと思っていた。
あ、もしかしたらあの建物かしら。
そうですね。こんなところにいくつも施設はないでしょうから。
それにしても、君たちラ
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6.境界
3人は電車を降りてバスに乗り換えた。くねくねとした山道を登って下っての繰り返しだ。タウンの敷地内なのかどうかも分からないが、訪れたことのないエリアであることは間違いなかった。集合場所まではバスを降りてから1時間ほど歩かなくてはならない。小さく華奢な体に似合わない大荷物を持った彼らには過酷な時間となることは分かっていた。
次のバス停で降りてそこから徒歩になるね。
もう…なんでこん
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5.考察
ロンドたちが10歳になったころに開催された"上"の集合研修は、異例づくしのイベントであった。これまで個別にオンラインで行われてきたのに対し今回は複数名の対面型で、日程は長くても半日であったが10日間にも渡る長丁場だ。どうやら、直近3年間で大卒レベルの資格を得た者が対象のようで、小学2年生でそのレベルに達した彼ら3人にも声が掛かった。案内には集合場所と時間のみで、どこで行うどんな内容の研
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4.突出
タウンの住民は生まれてから死ぬまで"上"の教育を受け続ける。小学校から能力による明確なクラス分けがあるが、最下位のクラスであっても卒業するころには全員が世界各国の最上位の大学にあっさり合格できる学力は持ち合わせている。ロンドたち3人はその中でもトップのクラスに入学したが、早々に博士課程までをクリアしたため、小学2年生で卒業した。さすがにこの前例はなかったのだが、偶々なのか、この学校は一
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3.逸品
タウンの中で人気の料理店がある。店内は小ぢんまりとしているが、提供される食事や酒は絶品で、子供から老人、様々な人種の舌に不思議と合う料理であった。3人は店主を"マスター"と呼び幼少期から慣れ親しんでいる。ランチからディナーの間は店を閉めているので、この時間帯は彼らの溜まり場と化していた。恩師宅と同じくらいの頻度でよく通っていたのである。
マスター、僕はこの店を拡張して従業員も増やす
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件
2.胡乱
先生!ロンドがまた学校をサボってます。
ロンドが何か悪いことをしたら恩師に言い付けるのがソナタの役目だった。ロンドの両親は子供を自由に育てる主義らしく、何も言わない。何をしても、何をしなくても良いも悪いも言わないのだ。両親には考えがあってこんな教育方針をとっているのだろうが、幼いソナタにとってはそんなことはお構いなし。ど正論をど直球でぶつける学級委員タイプである。恩師は学校の教師で
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.3マスカットの事件
1. 手蔓
"タウン"…誰しもがそう呼んでいた。ほかにもあるのか、どこからどこまでがそうなのか、分からないことは多いのだが、確かにそこには彼らの暮らしがある。
タウンの住民は何らかの形で"上"と繋がっていることは、みんなが認識していた。ただし、"上"という組織は実体を伴わないから、組織でも個人でも誰がどう繋がっているかは世間一般の者には分からないし、"上"の存在自体を知らない。そして、何より住
新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.2アントワープの事件
29.模糊
事件当日、幼馴染と団長は楽屋で話をした。
本当に久しぶりだね。元気そうで何よりだよ。
団長、ご無沙汰しています。その節は母が大変なことをしてしまい、どうやってお詫びをしていいのか…申し訳ありません。
…私にも大きな責任がある。だがいまの立場を退かないことにしたのは、その"責任"から逃げないためだ。ところでいまも音楽は続けているんだろう?
ええ。でも今日はそのお話ではな