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#スキしてみて
2021/10/10 即興詩 「学ばない男 - irreversible regret - 」
まさかでした
こんなに早くあなたに会えなくなるなんて
思ってもみませんでした
思えば そういえば元気にされているかなと
脳裏をよぎったとき
それはきっと
神様が会いなさいと教えてくれていたのでしょう
僕はいつも
なんだかんだと理由をつけて
先送りにしておりました
むろん 会いたくなかったわけではございません
会いに行くには お金が淋しいとか
会いに行くのに 口実がないとか
その時の僕には それ
2021/09/30 即興詩「朧心、朧月の影」
夜風が冷たくなったころ
ため息がそっと白くなる
私はそれに寂しさを覚え
震える心を睨みつけた
思うようにいかないとき
そっと支えてくれたのは
何者でもない 遠い月
毎晩 ひっそり見つめていた
ふんわり明るく わずかに白く
太陽よりも やわらかく
もしもあなたがいなければ
夜道を照らす 光はなく
どれだけ私が寂しくとも
毎晩涙を濡らそうとも
あなたはいつも 見守るの
一人でひっそり 見守るの
2021/09/14 即興詩「穴」
明かりが灯っていれば
気づいたであろう穴は
私の足に手をかけ
ゆっくりと引きずりこんでいった
すでに朦朧としていた意識は
なにが生じているかを読み取ることもなく
ただただ
奈落の底へ向かうことだけを
無意識に伝えていた
目を覚ますまで
僕は夢を見ていた
打つ手がない 絶望した夢
つい数時間前まで
希望や妄想にふけっていたくせに
その穴にやられてからは
失意の底にいた
穴よ
穴よ
穴よ
お
2021/09/13 即興詩「無題」
傷つかないために張った予防線
その内側に広がるグラウンド
何周も何周も
走り続ける
その素晴らしさは
やった人にしかわからないのだと思う
張ったことで閉ざされた風景
危険もあるし
美しさもある
中の幸せ
外の可能性
選択の責任は 私にある
外の人は
早く出ればいいのにという
中の人は
外なんか行かなくていいと
それぞれの世界は
それぞれが作って
それなりのところに落ち着く
それでいいと思う
2021/09/12 即興詩「非マニュアル化」
誰かが言葉を添えなくとも
そこに価値はあるし
受け取る側に
委ねてほしい
信じることは
期待することじゃない
何があろうとも
そのまま包み込む
己の覚悟
油断してると
己の煩悩に食い散らされる
頭の中にある 引き出しよりも
目の前のそれに 向き合うこと
私とあなた
私と書物
私と事件
全て 二つの間にしか
答えは存在しない
素晴らしいマニュアルがあるなら
それは手順ではなく
心構えを示すもの
2021/09/05 即興詩「ひこうき雲」
ひこうき雲は
空を股にかけ
私の思いを
どこかにつなぐ
繋がれた先に
わたしがいることを
今は まだ知らない
その向こうにある漠然としたなにかに期待しながら
その何かを作るのは自分だということを
今は まだ知らない
誰に期待するより
自分に期待するとき
私のひこうき雲が残っていくことを
今は まだ知らない
———
ひこうき雲というと、もう心は完全に荒井由実さんに満たされてしまうくらい、曲
2021/09/04 即興詩「追憶のオーバーラップ」
あんなに鳴いていた蝉の声が
いつしか鈴虫の鳴き声にすりかわり
線香の香りがどんどん薄れ
知らない間に 扇風機が仕舞われている
久しぶりに
熱いコーヒーを入れた
飲み終わる頃には
次なる暖を探すことと思う
そうやって流れていく季節に
だんだん何も感じなくなっていく
夏の終りに感じていた寂しさが
まるで事務処理のように
シュレッダーにかけるものになる
カレンダーに目をやると
時折 ふと思い出す
2021/09/03 即興詩「すきな言葉」
大きな大きな
まあるい円に
たくさんの言葉を書こう
なんでもいいよ
すきな言葉を書こう
その中に書かれた言葉が
君を作る言葉
わたしと君は
同じ言葉を書いていたとしても
まるっきり同じわけではない
そうだよ
同じようで ちがう人間なんだ
もしそこに
きたない言葉があっても
落ちこまなくていい
言葉は
えらぶことが出来る
のぞまない言葉を
使わないことが大切
同じように
だれかとお話しするとき
2021/09/02 即興詩「はじめの一歩」
いちにのさんで
踏み出した一歩は
その期待とは別のところで
僕たちをいろんなところへ連れていった
こんなはずじゃなかった
そんなこと 死ぬほどある
でも
こんな喜び 思いもよらなかった
死ぬほどじゃないけど
それなりにあるんだ
いちにのさんで
踏み出そうとしている一歩を
押し留める理由はない
未来は決められていないから
僕にだってわからない
価値があると思ったら
そのまま
踏み出す
その後
2021/09/01 即興詩「また『たら/れば』の風が吹く」
雨が止んだら
海で泳ぎたい
風が止んだら
キャッチボールをしたい
君が来たら
たくさんおしゃべりしたい
君が笑ったら
きっと僕は 幸せ
もうしばらくは
雨は止んでない
風も止まらない
ずいぶん君に会っていない
君は笑っているのかな
そうこうしているうちに
日は暮れて
僕は少しずつ
干からびていく
そうなる前に
渇きを潤したい
どうにもならないのではなく
きっと何もしていないだけ
出来ること
2021/08/30 即興詩「頭の中のシアターは每日上映している」
ごろんと転がったベッドの上で
なんとなく
天井を見つめていた
幾度となく見た天井なのに
今日は少し
違って見える
たぶんだけど
いつもは天井を見ているようで
見ていなかった
天井に視線をやりながら
頭の中のシアターで
別のものを見ていた
今日は違った
頭の中のシアターは休館日らしい
ぼんやりと しかしはっきりと
天井を見つめながら
どうやってつけたかわからない
不思議な模様を
ひたすら 目で
2021/08/29 即興詩「一人の食卓」
窓の分だけ
光がくり抜かれ
私の頭を照らしている
食卓に写った影が
今 ここにいる人数を
何の感情もなく示している
外から聞こえる夏の虫の声
仕切りに走る車の音
冷蔵庫のジー、という音と
時々耳につく私の呼吸
呼吸を意識すると
なんとなく深呼吸をしたくなって
深呼吸をすると
なんだか少し 恥ずかしくなった
たった一日
誰かがいないということを噛み締めて
もしこれが
このまま一生続くと思うと
2021/08/27 即興詩「僕があなたにできること」
聞く聞かないは別にしても
あったこと
なかったこと
それを全て一旦受け止めてから
純粋にあなたと向かい合いたい
色々考えたんだけど
僕には多分
それしか出来ないんだ
信じること信じないこと
全ては人の権利だし
義務でないことを
多分もっとみんな知った方がいいし
信じること信じないこと
それを選んでいるのは
あくまで自分であり
「信じてたのに」なんて言葉は
誠に身勝手と
言わざるを得ないという
2021/08/26 即興詩「モザイク・コミュニケーション」
そうじゃない
そこじゃない
僕が知りたいのは
そんなことじゃない
そんな風な
雑なコミュニケーション
どうなってんだ
そう思いながら
僕は君に過剰に求めていたことに気づく
感じることを
感じたように伝えることが
どれだけ難しいか
聞きたいことを
聞きたいように聞き出すことが
どれだけ難しいか
話をしてくれてありがとう
聞いてくれてありがとう
その気持ちがなくなったから
今こうしておかしなこと