ぐっどないともり

自分の才能が怖くて震えてます。

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「シン•オジサン」 第1話

「次のニュースです。昨夜、新宿区笹塚の雑居ビルで未成年と見られる遺体が発見された事件で、被害者の身元は都内に住む須貝弘大さんということが分かりました。須貝さんは…」 知り合いが死亡したニュースを見て安心するようになったのはいつからだろう。 佐々木達也はリプトンの紅茶をすすりながら、7時50分の報道番組を横目で見ていた。 被害者には申し訳ないが、死んでも致し方ない人相だ。その事を生前のご本人に直接お伝えできなかったことだけが悔やまれる。 ココナッツサブレを2枚齧り、紅茶

    • Googleマジックで消してやるのさ

      新年明けましておめでとうございます。 何かおめでたいことが確約されているわけではないのに、なぜか新年になると世界中のほとんどの人がこの言葉を使う。 新しい年をより良い、おめでたいものにしよういう気概がなければ現在にパワーを注ぐことはしないだろう。 私は来年の今頃に2024年が来てくれて良かったと思いたい。だから、私と私に関わってくれる人には新年明けましておめでとうと言う。 2024年1月8日未明。私は酒を飲んでいる。 正直、飲む必要はほとんどなかったのだが、想定外のア

      • 散文

        今週もやって参りました。 ベジータが手詰まった時にやりがちな連続エネルギー弾よりは散らかっていない私の散文のお時間です。 早速だが、日曜日の夜の家電量販店ほど気が滅入るものはない。 閑散とした店内に最新のテレビやスマホの鮮やかな光が満ち溢れ、繁忙期のを戦い乗り切って、目の光を失った販売員がゾンビのように彷徨っている。 購入の下調べや、時間がある場合はこういうタイミングを利用するのも悪くないのかもしれない。 しかしながら、この祭りの終わり感と店じまい感の圧力の中で、日立

        • スーパーヒーローが死んだ日

          お父さん、今年の春は去年に比べてとても寒い。4月の中旬だっていうのに、ダウンジャケットとウールのセーターが手放せない。もちろん庭の手入れはちゃんとしているよ。花だって咲いてる。フリージアやネモフィラは咲いてないんだけど。お父さんが知らない品種の花ならたくさん咲いてる。お母さんもマッケンローも元気にしてるよ。ただ、マッケンローはその…少し元気過ぎるかな。スーパーヒーローが死んだあの日から。 第一章 何が正解で何が間違いかを一つの角度から判断することは難しい。 ライオンに食べ

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        「シン•オジサン」 第1話

          散文

          これは散文。 文芸的な価値もないし、社会に主義主張を投じるものでもない。 たまたま長距離のバス移動が必要となり、イヤホンもPCも忘れて仕事もできない環境なので暇つぶしである。 私は今、秋雨が降るJR仙台駅の東口にいる。土曜の夜とあって、引き出物の大きな袋を持った結婚式帰りと思しきスーツを着た若者たちが目を引く。 30歳より若いだろうか。かつては自分もそんな時期があったなぁと羨望する一方で、「彼らが未踏の未来に自分はいるじゃないか」と年の功を正当化してみたりする。 ここ

          「シン・オジサン」 第10話

          📕 桐生崇憲は焦っていた。 新しいナノマシンの情報を手に入れてオーガの細胞の構造をアップデートさせなければ、いずれ改村中のオーガの頭数は減っていく。 細胞と身体能力の急激な変化を伴うオーガへの変態は体への負担が大きい。最初の変態から30年以上経った今でも、一日7000kcal以上のエネルギーを必要とする。 本来であれば、人間が成長する為に必要な成長ホルモンの類はオーガの変態とナノマシンに充当される為、見た目も身長も中学生の時のまま止まっている。中学3年生の時にオーガに

          「シン・オジサン」 第10話

          「シン・オジサン」 第9話

          🚚 1993年。 オーガとなった改村中学校の生徒たち約70名は12時間で2,000名近い市民を死傷させた。 かじわら商店の店主、梶原健三と娘の洋子は三奈本地区の生徒19名にOG3システムと呼ばれる細胞の変異装置の発動権限を与え、街を守ろうとした。 しかし、オーガの殺傷能力はOG3のそれを凌駕した。三奈本地区のOG3を発動した生徒たちは必死でオーガと戦ったが、集められた住民を一網打尽にされ、オーガの猛攻を防ぐのが精いっぱいだった。 街の住民だけでなく、OG3の生徒たち

          「シン・オジサン」 第9話

          「シン・オジサン」 第8話

          🥛 「洋子さん、どういう事ですか!」 佐々木達也は岡山圭吾と秋津にある梶原洋子のマンションを訪れていた。 「どうやったのか知りませんけど、圭吾に発動システムを与えるなんてどういうつもりですか!」 激昂する達也を目の前にして、洋子はしばらく黙ったままだった。まるでこうなることを予想していたかのような素振りだった。 「達也、落ち着きなさい。圭吾自身を守る上でも、私たちを守る上でも必要な事だったの。」 「たしかに発動する事で圭吾は戦力になるかも知れない。でも、それは圭吾

          「シン・オジサン」 第8話

          「シン・オジサン」 第7話

          🧪 梶原健三が長野県に来て2年が経とうとしていた。 長野県の施設では4つか5つの研究チームに分かれていて、チームの研究員の入れ替わりは激しかったが、いずれも世界最高峰の知識を持った専門家が集められていた。 健三は長野に赴任して1週間後にマンションと新車のレンジローバーを与えられ、月給は倍になった。 大手製薬会社のBroccoRangaでもこれまでにないほどの好待遇であったが、その分、仕事は苛烈を極めた。 健三の主な研究テーマは細胞の変化を促す電気信号および伝達だった

          「シン・オジサン」 第7話

          「シン・オジサン」 第6話

          💊 1978年。 梶原健三は東京駅近くの喫茶店で、浮かない表情でコーヒーを飲んでいた。 大学では生物の運動と電気信号を専攻し博士号を取った。世界有数の製薬会社であるBroccoRangaの研究員として5年ほどアメリカで過ごした。 東京に戻り、日本法人の研究チームのリーダーとして成果を上げてきた。 なのに、突然の転勤。しかも赴任先は長野県ときた。 自分はスギ花粉の研究をするためにBroccoRangaに来たわけではない。そんな不満が健三の頭から離れない。 研究成果は

          「シン・オジサン」 第6話

          「シン・オジサン」 第5話

          ⚔ 長保3年(西暦1001年)。 信濃国の集落で激しい戦が起こっていた。 村人と侍の死体がそこかしこに転がり、村は火の海に包まれていた。 「張り合いがないのう。頼光ぅ。後ろを気にしながらでは戦になるまいて。」 男が率いる軍勢は約200。騎馬隊はおらず、刀を帯びている者も一人もいない。朱色の甲冑のようにも見える兵の体表は赤黒い毛で覆われていた。 「何ゆえに村を襲うのだ桐生!お主らのような強者ならば名のある武将と喧嘩をすればよかろう!」 頼光は馬上から桐生兼昌に向か

          「シン・オジサン」 第5話

          「シン・オジサン」 第4話

          🍪 11月の東京は過ごしやすかった。 時折、ビル街に冷たい風が吹いたが朝晩だけ厚着をしていれば日中の日差しで暖かかった。 梶原洋子は西武池袋線の秋津駅近くのマンションの一室で、三奈本小学校の元悪ガキたちの到着を待っていた。 3か月に1回の定期メンテナンスや調査依頼で個別では合っていたが、メンバーが集合するのは数年ぶりだ。 島貫遥人の誘拐事件を受けての対策会議なので、パーティを開くわけではないのだが、洋子はせめて飲み物だけでも準備しておこうと近所のスーパーへ出かけた。

          「シン・オジサン」 第4話

          「シン・オジサン」 第3話

          🍬 夕方のかじわら商店は子供たちで賑わっていた。 紐がついたコーラ味やフルーツ味の飴、五円チョコやきなこ棒やラムネ。子どもたちはお菓子を食べながら、狭い店内で嵐のようにはしゃいでいた。 三奈本小学校3年生の佐々木達也はミニバスケットの練習が終わり、チームメイトと共にかじわら商店にやってきた。 3年生以上の子どもたちは梶原のじいさんの特製ジュースがタダで飲める。 娘の洋子さんはバスケの事や学校での出来事を飽きずに聞いてくれた。 アンジェラという名前の茶色い毛のラブラドー

          「シン・オジサン」 第3話

          「シン・オジサン」 第2話

          🛤 長野県改村市は人口6万人弱の田舎の小さな市だった。 冬には豪雪が街を覆ったが、それでも静かで平和に暮らしていた。自然減少以外の死傷事故と言えば、きのこ狩りに行って遭難するとか、マムシに咬まれるとかその程度だった。 佐々木達也も岡山圭吾も改村市の郊外で生まれ育った。 郊外と言っても小さな集落のようなもので、200世帯ほどがそこで生活し、子供達はみんな同じ保育所で、同じ小学校に通った。 改村市立三奈本小学校は全校生徒が30人程度。1年生から6年生まで全員が幼馴染で、遊

          「シン・オジサン」 第2話