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散文

これは散文。
文芸的な価値もないし、社会に主義主張を投じるものでもない。

たまたま長距離のバス移動が必要となり、イヤホンもPCも忘れて仕事もできない環境なので暇つぶしである。

私は今、秋雨が降るJR仙台駅の東口にいる。土曜の夜とあって、引き出物の大きな袋を持った結婚式帰りと思しきスーツを着た若者たちが目を引く。

30歳より若いだろうか。かつては自分もそんな時期があったなぁと羨望する一方で、「彼らが未踏の未来に自分はいるじゃないか」と年の功を正当化してみたりする。

ここで、ファミリーマートで購入した発泡酒を一口飲み下す。

かれこれ20年前からこのバスを不定期で利用しているが、当時から車両の設備はアップデートされておらず、ドリンクホルダーもUSBのジャックもない。エアコンの効きが抜群なのと、カーブでも揺れが少ないところは気に入っている。

さて、何の話をしようか。
私は文章家ではないけれど、何の狙いもなく筆を取るタチではない。

最近いろんなことが立て込んでいて、起床している時間は何かしらやらなきゃいけないことがあった。

仕事が終わればお酒を飲んでリラックスして一日を終える。と思っていたが、直近の未来を杞憂して疲れは取れていないんだろうと思う。

今年に入って、コロナに感染したのを含めて3-4回体調を崩した。「これはやばい」と思って床に伏すも、苦しくて寝るどころではないし、「休める」よりも「休まなきゃ」という無駄な使命感が余計に眠りを妨げる。

なので、「何もしなくていい2時間」よりも「何もできない2時間」の方が開き直ることができて、少し精神的な圧迫感はないなぁと思う。

発泡酒ぐび。

酒に弱くなった。20代の頃は日本酒とワイン以外はザルだったのに。いまでは缶チューハイ500ml×2など飲み干せばTKOだ。

このペースでアルコールの耐性が無くなっていけば、10年後にはめんつゆとファンタでスレイブ状態になれる体になるかもしれない。還暦を迎える頃には聖職者も夢じゃない。

発泡酒ぐび。

さぁ、スマホのバッテリー残量は13%だ。この限られた時間でどれだけおしゃれなたわい事を書けるかが試されている。

っていう、ゴール地点から逆算して考えることを毛嫌いする人種がいることを最近になって知った。

特定の誰かを指しているわけではなく、そういう人種が存在するのだ。だからこそ、いま「何もできない2時間」を活用して、ぞういう人種の行動様式を勉強させてもらっているんだ。

まことに面倒臭い話だ。
私は元来、計画性に長けた人種ではなかった(と思っていた)が幾星霜の社会人経験の中で笑顔と人当たりだけでは生き延びられないことを知ってしまった。その結果、私は一端の社会人にはなれたかもしれないが、血と涙は失われた。(その割に、甲子園やスポーツのドキュメンタリーではよく感極まる)

ストゼロぷしゅ。

これを飲み干したら、セコンドからタオルが投げられてもおかしくない。

そう、私は少しばかり社会のノウハウを知った代償に血と涙を失った液体金属製のターミネーターになってしまった話だ。

でも、よくよく思い返せば昔からその片鱗はあった。

小学校の頃、男子生徒は学校帰りに野球をしたり、友達の家に遊びに行ったりするのがアクティブな小学生ではデフォルトだが、私の場合は学校であれだけ遊んでるのに何故に放課後までみんなで遊ぶ必要があるのかと思っていた時期があった。

学生や社会人になって好意を抱く女の子がいても、連絡先を自分から聞くことはないし、よしんば連絡先を交換していても相手が望んでいないことをこちらから持ちかけるのは迷惑だろうと考えて、自分から連絡することは一切したことがない。結婚する時のプロポーズさえ相手から促されてから着手するくらいだ。「お前はゲイか液体金属製のターミネーターか?」的なことを友人から指摘されたことも数回ある。※文言は脚色している。

それなのに、私は人から好かれるインターフェイスを持っていた。
大学に入学して1ヶ月後に友人から「お前のような奴が羨ましい」と言われ、新卒で入った会社では営業成績など微塵もないのに上司と同僚からは下の名前で呼ばれ、他の支店の飲み会に呼ばれた。飛び込み営業でも3件に1件は商談につながり、先方の担当者が「うちに来ないか?」とヘッドハンティングをされた。

そんな連中に低姿勢で接し、気持ちよくさせる技術が先天的に備わっていた。いまでもそれは感謝すべきことではあるが、同時に、納得のいかない話題で明らかに不機嫌になっているのが顔に出るという頑固さもあった。(自分では認識していなかったが)

チューハイぐび。

そのような二面性を兼ね備えた私は、どうしても一人にならなければ自分の意思を確立できない(と思っていた)時期があった。それなのに、身の回りでは表面上の人間関係は円滑だし、人に嫌われるほど尖りたくもないという承認欲求もあって、最近まで自分の意思と本音と建前のメタ認知が出来ていなかった。

缶チューハイぐび。

スマホのバッテリー残量は残り7%。いま飲んでいる酒のアルコールの含有率と同じくらいだ。

書き散らかしも掃除の時間になったようだ。

私はいつも自分のいまいる環境、自分の生まれた川で泳ぐのが苦手だった。アウェイこそが主戦場であるし、一番速く泳げる場所だと思っていた。今もそれは変わっていない。だがアルコールの耐性と比例して、どんどんリスクを恐れ、安牌を探すようになった。

それが成長や叡智と呼べるものだとしても、やはりそれは私らしくはないのだ。
若かりし頃、何度もヘマをぶっこいて怒られた。半分くらいは悪いとは思っていなかったけど。怒られた分、そのチャレンジや働きを評価してくれた人もいた。そういう人は何をやっても「お前、バカだねぇ笑」と遠くで認めてくれる。

私よ。いや俺よ。
お前がいくら賢くなろうが、要領を得ようが、お前を認めてくれるのは優秀なお前ではなく、「何かしでかすバカ」なお前なのだ。そして、そういう俺が俺も好きだ。

しかし、バカなキャラを作るのとバカをしでかすのは違う。
他がやらないからバカと揶揄されるだけで、頭が悪いわけじゃないんだ。

分かったらアウェイに喧嘩を売りに行け。

缶チューハイぐび。

TKO。

収。



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