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群島を巡る、夏の旅

7月、こちらの国は大人も1ヶ月の夏休みだ。
しかし子供ともども長い休みをどう過ごすかというのは結構悩みのタネになったりもする。
中学生の息子はすでに6月から夏休みに入っているので、友達も旅行やサマーハウスへ行ってしまい遊ぶ子もいなくなり、時間を持て余し気味だ。

夫は若い頃は留学もしてたし、国外出張も多くこれまでいろいろな国を訪れているのだが、基本そんなに旅行が好きではなく、家でのんびりダラダラまったり過ごしたいタイプ。
家族旅行はいつも私が何処へ行くか計画を練り、フライトやホテルの予約・手配、滞在中も私が行きたい場所に夫もおとなしくついて来る感じ。
だから夫に任せておくと、休み中いつまでも何処にも行かないということになる。
今年の夏休みも1週間が経過しても何処へも行く気配がない…。
痺れを切らした私が、どっか行きたい!こんな長い休みの間ずっと家に居るつもりなのか!と急かしても、どっかってどこよ…?とベッドに寝転んでいる夫。

「そうだアーキペラゴに行こう!長年この国に住んでいるのに一度も行ったことないし!」
えーっという顔をする夫。アーキペラゴは島々を渡るのがけっこう面倒臭いんだよ…とかなんとかモゴモゴ言ってる。

アーキペラゴとは、群島を意味する。

多島海(たとうかい)は、多数の島嶼が存在する海域である。
英語の archipelago(アーキペラゴ)に対する訳として用いられる。
この語はもとは「多数の島を含む海域」すなわち多島海を意味していたが、現代ではほぼ例外なく「多数の島嶼」(諸島・列島・群島)を指す言葉となっている

Wikipedia

この国には世界でも有数の群島が密集している多島海域地帯があり、夏になるとヨットで島々を巡る人や観光船も出ており、フェリーに車ごと乗船し各島々で下船しながら巡ることもできる、夏は現地でも人気のスポットなのだ。

私は島が大好き。
しかし日本に住んでいた時はあまり行く機会がなくて、「SHIMADASシマダス」という日本の島ガイドブックを眺めては妄想し、行った気になったものだ。
今私が住んでいる街は100を超える大小の島に囲まれていて、この国に住んでから島はとても身近になった。おまけに昨年夏まで私は、街中だが小さな島に住んでいたのだ。
それでもアーキペラゴの規模はそれらとは比べものにならないくらい広大で、一度は訪れてみたいと常々思っていた。

島なんて何もないし退屈だから嫌だ…と渋る息子と腰の重い夫の尻を叩き、
思い立ったらゴー!!さあ行くよ!と有無を言わさず、いざ出発!

まずは3つの街を移動しながらスパ・ホテルに宿泊。
ホテル内にはフィットネスジムや様々なプールがあり泳いだりアクアビクスしたりした後は、併設されている色々なサウナに入れるので人気がある。
息子も夫もスパ・ホテルは好きなので、これで釣るのだ。
ホテル内は朝晩バスローブ姿で歩く客ばかり。私たちもバスローブを羽織りサンダル履きでウロウロ(笑)なんだか日本の温泉地で浴衣を着て歩く感じにも似ている。

翌日は2時間かけ車ごと乗船できるフェリー乗り場へ向かった。
しかしグーグルマップを見ながら辿り着いた場所は、辺りには何もない無人の小ちゃな船着場で、どう見ても大型フェリーは来そうにない。
不安がよぎるが待つこと30分後、対岸から車4、5台も乗れば満杯になりそうな車両専用フェリーがやって来た。これは渡し船であり、対岸に渡ってからさらに車で1時間の道を移動しないと大型フェリーの来る港には着かないという。
しかもその大型フェリーは島々を巡っているので、すでに船内が満車の場合は、次の船をさらに2時間以上も待たなければ乗れない場合もあるという。
やっちまったなぁ…夫の言ってた通りけっこう面倒だ。

しかし別に急いでいるわけではない。時間はたっぷりとある。
こうなったら、のんびり行こうではないか。

その後、港から無事に時間通り大型フェリーに車ごと乗船し、クルーズを楽しみながら群島巡りがスタート。
上に記したように
渡し船に乗り対岸へ移動→下船
島内を車で移動→
大型フェリーに乗船→下船
島内を車で移動→以下続く
というのを繰り返しながら巡ることになった。
橋が架けられている島もあるが、かなりの数の群島なので船でしか渡れない島も多い。
サマーハウスや集落らしき場所も点在していて夏を過ごすのは気持ちよさそうだが、冬でも島で暮らししている人はけっこういるという。
天候の悪い冬は島の外へ出られず文字通り孤島と化すのだろうが、それでも海の側や島で暮らすことにこの国の大多数の民は憧れを持っており、魅力を感じているようだ。




群島や西海岸には、隣国にルーツを持つ民が昔から多く住んでいて、彼らはこの国と隣国の二か国語を話し独自の文化を持つ。全国民の中では少数派だが今でも著名人やアーティスト、財界人を多く輩出している。
普段はこの国の言葉を使い、家族や身内と話す時だけ隣国の言葉になる人も多く、ぱっと見は気づかなかったりする。お店などでいきなり隣国の言葉が返って来ても私は全く分からずチンプンカンプンだけど、いちおう公用語なので学校では習うため夫は話せるし息子もちょっとは理解できるようだ。
道路の標識などもこちらの地域へ来ると隣国の言語での表記が先に書かれているので、ちょっとした異国感がある。
"群島パン"と呼ばれるダークシロップ入りの仄かに甘くしっとりとした黒パンは島の名物で、ニシンの酢漬けをのせて食べると美味しい、私も大好きな味だ。
他にも島の野外市場などでは、スモークサーモンやニシンの酢漬けなどの魚の加工品、ベリー類のジャムやシロップ、オーガニックな食材も売られている。



海風に吹かれ、キラキラ光る波間をかき分け進んでゆく船の甲板に立つと、次々と島が見えてくる。
抜けるような青空にはカモメが飛び交い、心がどんどん開放されてゆく。

長い冬に耐えるエネルギーを蓄えるように、人々はありったけの輝くような夏を過ごす。
この国の夏はとても短いけれど、一年の中でもとくに美しい季節だ。



気づいたら写真はほとんどなくて、動画ばっかり撮っていたので、まとめてみました。





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