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人生に迷ったら、何度も戻ってきたい一冊

photo by うみ

お金ってどうやって使えばいいのだろう?自分の「ほしい」や「やりたい」気持ちに忠実に「今に投資」することが正解なのか、「今を我慢」して貯金をすることが正解なのか様々な考えの人がいるけれど、きっと正解はないのだろう。大切なのは、「自分が生きていく上で大切にしたいことが明確になっているかどうか」なのだと思う。

この『三千円の使いかた』にも「三千円の”正しい使い方”なんてものは書いていない。物語に登場する4人の家族の人生を疑似体験しながら、自分だったらどういう選択をし、どういう生き方を選ぶかを考えさせてくれる。

この4人が悩みに向き合い、乗り越えていく姿と、私たちが抱える漠然とした不安とを重ね合わせて作品を読み終えた頃には、お金に対する価値観がほんの少し変わっていることに気付く。「自分はどうなりたいのか、と人生に迷子になった人」にとってもおすすめの作品。



「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」という美帆の祖母の話


「お金の使い方が、自分の人生を表している……?」。はじめはイメージが湧きづらかったその言葉。ふと自分の部屋においている小物や家具を改めて眺めてみると、特に思い入れがあって長く使っているものが少ないことに気付く。

お金の使い道はモノだけではない。ヨガやお料理教室など習い事も友人に勧められるままに入会。毎月、一回も行けないか、期限に追われて焦って通う始末だ。こういったお金の使い方が、今まで「自分のご機嫌取りのため」を理由に生きてきた私の人生を表しているということになるのだが……納得である。本当は、「なりたい自分」が自分の中で明確だったら、これらのお金の使い方も変わっていたのかもしれない。

なぜ、「お金の使い方」が大事なのか。この本では、「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」という少しドキッとする美帆の祖母の言葉から物語が始まる。少額のお金で選択・購入するものが人生を形作っているという。

日々忙しい毎日を過ごしていると、自分がどんな人生を歩んでいきたいか、どんなゴールに向かいたいかを見失うときがあるという人も多いのではないだろうか。これが「目的のないお金の使い方」を選択させてしまっている。逆に言えば「目的のあるお金の使い方」は、その価値が何倍にもなるということだろう。

この作品を読んでからは、お金を支払う前にふと冷静になれる瞬間がある。まずは自分の大きなゴールを思い出すとともに、支払う対象物・コトが自分の人生そのものだといわれて納得ができるかどうかを考えている。少々大げさに聞こえるかもしれないが、それを繰り返しているうちに「お金の使い方」が変わってくるのだと思っている。


登場人物4人の悩みがそれぞれリアルでとても共感できる


登場人物の1人目は就職したばかりの美帆。貯金が苦手で婚約者が奨学金を抱えているため将来について悩んでいる。

2人目は美帆の姉、真帆。真帆は1,000万円貯めることを目標に日々貯金に苦心している。若くして消防士の彼と結婚して賃貸アパートで娘と3人で暮らしている自分と、実家がお金持ちの人と結婚して豪華マンションに住むことになった友人と比較し、思い悩んでいる。

3人目は美帆と真帆の母、智子。入院費用などの出費が重なり、貯金が100万円弱になった不安に加え、友人が熟年離婚をしたことを機に、自身の我慢していた気持ちに気付き始め、家庭の在り方についても悩み始める。

4人目は美帆と真帆の祖母、琴子。73歳で貯金は1,000万あるが、年金だけでは生活できず日々貯金を切り崩しながら生活をしており、その状況に不安を抱えている。まだまだ自分も世の中の役に立ちたいという熱意はあるものの、年齢という壁が琴子の前に立ちはだかる。

それぞれが抱えるリアルな悩みや不安を、前向きに乗り越えていこうという姿には勇気をもらえる。お互いにヒントを与え合ったり、励ましあったりしながら前を向いて突き進む姿勢が胸に刺さる。年齢は違えど、それぞれの登場人物の悩みに深く共感できるところもポイントだ。人生の節目とピンチを乗り越えるためのヒントがこの作品の中には、ぎゅっと詰まっている。

これから、その三千円をどのように使っていくか


三千円の使い道を後悔なく判断できるようになることをまずは考えてみる。先ほども書いたが、大切なのは「自分がどんな人生を歩んでいきたいか」を明確にすること、また、具体的な人生プランのイメージを持っておくことだと作品の登場人物が教えてくれる。

人生の目的が明確であれば、目先の「ほしい」「やりたい」、その場限りの「自分の機嫌取り」のために、コストパフォーマンスの低いお金の使い方は避けるようになるだろう。もしかすると、「三千円ごとき」と思う人もいるかもしれないが、自分の人生の方向性に迷ったら、まずはその三千円で、この『三千円の使いかた』の本を手にとってほしい。

登場人物4人が実体験を持って、私たちの漠然とした不安を包み込み、進むべき方向を提示してくれるはずだ。



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