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あなたと私のイッテンゴ/それがLIVE、それがLIFE

そのおっちゃんたちはメインイベントが始まるか始まらないかのタイミングで入ってきた。
新年最初のビッグイベント、泣く子も黙る東京ドーム。
ひとりはビールを持ってもうひとりに渡してる。
「どうぞどうぞ」「どうもどうも」って、〝おじさん〟同士のあの感じ。
2人はスーツ姿、なんとなくだけれど会社でも上の方の人?みたいな雰囲気。
もしかして「観に来たくて」じゃなく、ご招待とか、お付き合いとかかなあ。
だって全部で10試合以上、夕方16時から21時までの興行、の最後にだけ来た。
でもね、私のそんな予想は全くはずれてた。と、よくよくわかる。
試合が始まるとおっちゃんたちは両手を頭の上にあげて拍手! 手拍子! 拍手! 拍手! 
技が決まる度に、拳を振り上げ、全身を揺らすように拍手し、互いに肩を叩き合って喜ぶ喜ぶ。
このご時世、大声を出すのはNGだが、マスク越しに叫んでた「うぉー!!」
オカダカズチカに「うぉー!」 ウィル・オスプレイに「うぉー!」
気付けば私は泣いていた。涙が出てきてならなかった。

俗に言う「イッテンヨン」「イッテンゴ」。
新日本プロレスの、年明けいっぱつめ1月4日と5日のビッグマッチだ。
東京ドームというあのデッカい球場の真ん中にリングを設営して試合がある。
私にとっても憧れだった。「いつかきっと……」叶った今年!
「ちょっとした用事と大事な用事」と合わせて、しかもチケットをいただいて!
プロレスに関しては特に好きな選手なども居ないので祭り気分。調子に乗って酒も進む。
イオンのフードコートのように飲食店が立ち並び、酒やソフトドリンクの売り子さんも笑顔で駆け回る。
「ドームって大人の遊園地やん!!」
そんな日の最後に目にしたのが、前の席に座った、冒頭のおっちゃんたちだった。

実は会場の雰囲気に呑まれていたところもあった、浮かれて呑んではいても。
熱気が違う。お客さんの熱さ、ガチさが違う。我々関西での観戦とは。
選手の応援グッズや選手Tシャツに身を包んだファンがほとんど、ってか、想像以上に多かった。
選手の〝コスプレ〟をしているファンも結構見た。
そしてそれらが「はしゃいでる」とかじゃなく、しっくり自然に見えるのだ。
我々関西で言うところの見るところの
「甲子園に「正装」で行く(からの、帰りの阪神電車でもそのまま帰る)」みたいに。
さらに私の席はそこまで前の席ではなかったのだが、熱心なファンだらけだった。
でっかいカメラを持って撮りまくるファンさんも「自然」。
近くの席のおねえさんはスマホケースも待ち受けも推しの選手だった。
私は彼女の推しと戦っていたワル役の子が面白くてげらげら笑っていたのだが、
あきらかに不快な空気を醸し出されたほんまごめん。
親に選手や今のプロレス的物語状況を説明しながら観戦するファミリーも自然。
勿論、我らがエディオンアリーナ(私的には「府立」と呼ぶ方がしっくりくる)や、
昨年はじめて行けた大阪城ホールでもちょいちょい見かけるよこういう風景。
でも、なんだろう、大阪弁じゃないからかな、いや、それだけじゃないな、なんだろうな。
年明けのビッグマッチ、観逃がせない試合ばかりというのもあるだろうが、思った。
関東は「本場」だ。
ドーム下の後楽園ホールでは定期的に新日の試合が行われている。
ガチになれば関東圏で追っかけも出来る。
我々よりも身近に新日を観られる観ているお客さんたちの「心の距離感」は、
我々以上なのかもしれない。ああ、「本場」。
ちょっと、いや、かなり熱気に呑まれた、
祭り気分な私はなんだか自分が「不真面目」「不謹慎」みたいな気すらしてしまった。圧倒された。

そんな「私的初イッテンゴ」のメインになって、駆け込んできたのが冒頭のおっちゃんたちだった。
拍手、手拍子、ばしばし(肩たたき合い)、「うぉー!」 
笑ろた。笑ろてもた。笑いすぎて涙出てきた。でもその涙はほんまに涙になった。マジで。
メインの試合の攻防とおっちゃんたちのはしゃぎっぷりを観ていて。
うんうん、ええな、たまらんな、うれしいな、わかるよ。
そうそう、うれしいですよねたのしいですよね、一緒です。
ごめんね、観察してる訳じゃないよ。いや、そうなんかな。癖? 業? そんなええ風に言うたらあかんか。
でも、試合と、うおーうおー言うおっちゃんたちを観て、涙が止まらなくなった。

「ああ、みんな主役なんや」「みんなが、それぞれの人生の主役なんや」「今、生きてるんや」……皆で!

年齢も、立場も、想いや目的も、性別も違う皆が客席に、ハコに集う。
皆で観る。気持ちを送る。重ねる。
その熱が、想いが、空気となって、
言葉じゃなく肌や感覚で感じるなにかになって、
そこに居るすべての人のこの先の生きる力になる、
自分自身の血に肉にpowerになる。
プロレスは、勝ち負けというやつが(一応)はっきりその場でつくことで、特に、「託せやすい」「重ねやすい」。
勝ち、負け、イデオロギー、譲れないもの、世代間闘争。追ったり追われたり、因縁つけたりつけられたり。
からの、体を張っての勝ち負けだもの、まさに、「うぉー!」だ。
見せたり、観たり。魅せたり、魅せられたり。重ねたり、重ねられたり。
リング(舞台)の上にも、下、いや、まわりにも、「物語」がある。
≪正装≫の皆も、
でっかいカメラを持って撮ってSNSで自己表現する皆も、
(愛と自己表現のバランスはむずかしい&気遣いや注意が必要とは常々思うが(笑))
能書きや審査員や評論家な皆も、
(愛と自己表現の……(以下略))
ガチ恋も。
それぞれ皆の「私」の人生。それらが、この瞬間、重なる。
この日、東京ドームなら「×6000人」分と、選手たちと裏で支える現場の皆たちのそれが。

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泣きながら笑った思った。
あの2人、きっとこの後、焼鳥屋さんだかどこかでプロレス話に花を咲かせるんやろな。
今日のオカダくんとオスプレイの話……は勿論、
でもタイガーマスクとかブッチャーとかデストロイヤーとかブラッシーとかハンセンとか、
あ、そこまでじゃないか、長州藤波蝶野とかかな、やっぱ猪木話(今の)もするよな。で、明日は今とは違うシャキッとした顔で出勤し、仕事をするんだろうな。
と、笑った私も、この年明け、今時の言葉で言うと「推し活」だった、「大事な用事」とはまさにまさしくソレ。
私用や色々はあるが、「第一目的」。他でもない、ストリップ。
ストリップ劇場で活躍する大好きな踊り子さんのお正月公演のステージだ。
プロレス会場でおっちゃんたちの姿が愛おしかった?!
推し活の劇場たちの「カーテンコール的時間」でおっちゃんたちの生き生きした顔に笑い泣く?!
なに言うてるんですか、あなたこそ一番喜んでるじゃないか、楽しんでるじゃないか、
会場で、劇場で。うん、そう、そうなんだ。楽しい。うれしい。大好き。まさに、「うぉー!」。

誰かにとっての「うぉー!」は、誰かにとってなんちゃないもの・ことかもしれない。
滑稽かもしれない、理解できないもの、または全く知らずに通り過ぎるものかもしれない。
「なんか違う」「別に好きじゃない」ものや存在かもしれない。
でも、誰かにとってそれは生きる活力であり、
報われたり報われなかったり……ってそんな考え方すらおかしいのだけど
「ああ明日からも頑張ろう・頑張れる」とか「よっしゃあ、「次」まで生きよう」なのだ。ジャンルは問わず、いろいろ、いろいろ!
救われてるし、(たぶん)救ってる。双方向。でも、たまに(いや、常に?)一方通行や混線も多々?!
あ、勿論(絶対に(現実問題として))課金も重要、大事、だって「生きてる」「生きる」ことそのことそのもの。
そんな誰かと誰かが一期一会、
名前も知らない、
次いつ一緒出来るか、出来ないかもしれない、
けれど「その時」を共に過ごし、別れる。
儚くも強く、一瞬だけれど永遠なその時間と熱が、
あなたを、私を、私たちを、生かし、生かせ合ってゆく。会場で、劇場で、いろんな場所で、日々まいにち。
ハコ(場所・劇場)っていいな、生っていいな、人間って(ややこしいけど)いいな。
年明け最初にそんなことを考えたり思いを馳せた。
今、あのデッカい会場とおっちゃんたちと熱気を思い出して、また、ぐっと来ている。
また、どこかで一緒になりたい。「送り合い」たい。あなたも。あなたとも。
だから、どうぞ、皆、お体・心、気を付けて。
今年は絶対、良い年になるよ。観るよ。書くよ。〝送る〟よ。 うぉー!


◆omake◆
以前のいろんな(似たようなこと書いた)話。


わしの中ではこれも同じ。

〝劇場〟が好き、人間が素敵。(なんちゃって!)

◆◆◆
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大阪の物書きです。中村桃子。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。
現在、ウェブマガジンにて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回(New!!) 



そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼちと。

ふだんはラジオ番組の構成などに関わっています。
現在の主なものは、AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)。
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