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宮廷画家ゴヤは見た(監督:ミロス・フォアマン)【映画感想をしていたら預金残高がゼロになっていた。こうなったらこの状況を描写してやるしかなかった。爆発しろ、脳よ】

ゴヤ関連の映画をレンタル屋さんで見かけました。
その映画を観てはいませんが、以前にゴヤ主題の映画を観たことがあるので、それを紹介します。

ゴヤが生きていた時代、
スペイン王室の宮廷画家だった時代が描かれています。
時代はフランス革命前夜。
ただし、ゴヤ本人は狂言回しの役割で、
メインキャラは、ゴヤが見た当時の「物議をかもした有名人たち」です。
それをゴヤが見て「絵」で語る、みたいな感じのストーリーですね。

そして「有名人たち」の話はムナクソ展開です。ご注意ください。
ちょっと紹介するのをためらっていました。

裕福な商家(実質貴族)の明るいお嬢さんがいて、
貧民から成り上がった修道士がいます。
修道士は性格が闇をしています。
お嬢さんを異端裁判にかけ、
投獄して、ムリヤリ自分のものにしてしまいます。

なんでゴヤがこのエピソードを知っているかというと、
ふたりともゴヤのお客さんだったからです。
ゴヤは絵描きですからね。

それから何十年か経ちます。

ナポレオン麾下のフランス軍が攻めてきて、入れ替わりでイギリス軍もやってきます。
修道士は性格が闇なので、事情があって亡命したあげくフランス軍の一員で戻ってきます。修道士の悪漢ぶりが炸裂していますが、反対にイギリス軍がやってきたので、今度こそ天罰覿面はしごを外されます。
ふたりの子どもは両親を知らないまま異国へ旅立ち、イギリス軍の将校を愛人にして戻ってきます。
そしてまったく関係ないところで修道士は、牢獄を出てきたかつてのお嬢さんに追いかけられ、ふたりとも死んでいきます。

誰得なのかよくわからないこの胸糞エピソードが映画の本筋である理由は、

実は視聴者の「枠」を外すためのものです。

人間はありのままの世界をそのまま見ているわけではありません。
その世界を知識というフィルターで分析して、色眼鏡をかけて世界を視ている。

ところがゴヤの絵は、そのフィルターを通していません。
どんなに醜悪な現実でも、眼を背けたいほど直視できないモノでも、
ゴヤは美しく写実してしまいます。

その時、視聴者は、世界がどれほど醜くて、そして美しいかを思い知らされることになります。

ひとつ挙げましょう。
ゴヤと言えばこれ。
「我が子を食らうサトルゥヌス」の絵。
狂気に陥った父親が、息子を頭から丸かじりしている絵です。
目を背けたくなるほど恐ろしい場面が、ゴヤの手にかかると名画になります。

他にもエンドロールには、農民の絵、貴族の絵、金持ちの絵、etc、
ゴヤの手になる名画がこれでもかと出てきます。

ありのままの世界はこれほどまでに醜悪で、
絶望に満ちていて、そして美しい。

灰色の世界でも、視ようと思えば色は視えます。それも原色で。

私たちにも、まだ色は視えますか?

追記:ちなみにフォアマン監督の遺作であり、この人はあのアマデウスの監督さんでもありますね。

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