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[ショートショート]ピクニック
子供連れの四人家族がドライブをしていると綺麗な沢を見つけた。
「あなた、すごい綺麗なところよ。ちょっと寄っていきましょう」
「ん、どれどれ。確かに綺麗だな」
ゴツゴツした岩肌だらけの沢の近くに降り立つと、空気が澄んでいて心地よい川の流れが聞こえてきた。
子供達ははしゃいで、沢の近くに駆け寄る。
「おい、走り回ると危ないぞ」
二人の子供は父親が制止するのも聞かず、静かに流れる水に手を入れて「つ
[短編] 最後の夏休み
夏の陽が暮れる頃。田んぼの中から蛙の鳴き声が聞こえてきた。泥の混じったような匂いの夜気が強くなってくる。
祖父の家の縁側で夕涼みをしていると、高台にある神社の方から太鼓の音が聞こえてきた。
「始まったっぺ」
居間で独酌していた祖父が愉快そうに言った。すでに夕飯を済ませてすっかりとできあがっている。
祖母は数年前に他界し、それを機に周りの田畑を近隣の農業法人に買い取ってもらっていた。今では僅
[エッセイ] この先に待ち受ける運命を知らず尻に敷かれる四本足について
人類はいつの頃からだろう、臀部を乗せるための道具を使うようになった。
ずっと立っていると座りたくなるので、二足歩行を始めてしばらく経ってから、おそらく人は丸太や石の上に座るようになったのだろう。
それからどれくらいの月日が経ったのか。数多のアイディアによって現在の椅子の姿にたどり着いた。
物事の成立過程について敢えて調べずに、想像を巡らせるのはなかなか愉快だ。
きっと、最初は木の