随筆 『少年の日の思い出』(ヘルマン・ヘッセ)について思うところ
ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』についてたびたび妻と議論する機会に恵まれている。その過程の中で決まって、あまりにも有名なエーミールのセリフ「そうか、そうか、つまり君はそういうやつなんだな」は否応なく話題に上る。このセリフは敏感な青少年の心に深く刺さる。妻と私もそうだ。しかし、年を経るとこのセリフについての見解は少しずつ変わった。
私がどうにも気に入らないのは、そもそもからしてこのエーミールという教員の息子は完全主義という悪徳があり、コムラサキの一件を見ても主人公の貧