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Take A Step Forward. 【SS】

 ドラゴンの子はピアノに憧れた。
 ピアノの音色は不思議だ。ただ「綺麗だ」ということはもちろんあったけれど、それ以上にあれほどに感情を表せる楽器があるだろうかとドラゴンの子は考える。

 激しさ、切なさ、楽しさ、愛しさ——、
 もしも、自分の手で、それらを奏でることができたなら。


 ピアノに思いを馳せていると、足元にサッカーボールが転がってきた。

「なにしてんだ?」

 顔を上げると、そこにはよく見知った顔。友だちドラゴン。サッカーボールを追いかけてきたようだ。

「うーん、ピアノのことを考えていてね」
 そう答えると、「またかぁ」と笑いながら友だちドラゴンは隣に座った。

「ピアノって綺麗だよなぁ」
 友だちドラゴンもピアノの魅力を知っているらしい。

「やればいいじゃん、ピアノ」
「ううん、そうは言ってもね……」

 なんでもないように言う友だちドラゴンに、すぐには賛同できない。

「あれだろ、わかってるぜ。でも、やればいいんだ。やってみたいんだろ。やればいいんだ。
見てみろよぉ、オレだってこーんなに足が短くて、ちーっともうまくならないし、ロクにボールを蹴れやしないのに、サッカーやってるんだぞ」

 短い脚を一生懸命に上げながらニカッと笑う。
 ドラゴンの子はハッとして、自分の手を見つめた。
 短い指、鋭い爪。

 自分の手ではピアノなんて弾けやしない。

 ずっと、そう思ってきた。

「なあ、やってみたらいいんだって。そりゃあ、うまくなれるかは、まあ、わかんないけどさ……」
 自分もなかなかうまくならないサッカーのことを思っているのだろう。友だちドラゴンは少し苦く笑う。

「でも、やってみたいからやる。やりたいからやる。楽しいからやる。それでいいんだ」

 ドラゴンの子に、ピアノを弾かない理由はなくなった。




Bing AI に3つの名詞を出してもらって書いてみました。

ついでにヘッダー画像も出してもらいました。
画像生成難しい……


先日のシロクマ文芸部がちょっと消化不良な気分だったので。
書きかけだったものをなんとか仕上げてみた。


読んでいただきありがとうございます。

2023.09.05 もげら



練習 ショートショート:
君と何をしようかな
台風はアイスクリームを食べる
ペンギンのドライブ

シロクマ文芸部 企画参加ショートショート:
街クジラ お題:「街クジラ」
今日は誰の日? お題:「私の日」
私の日制度、導入 お題:「私の日」
鍵穴を探している お題:「消えた鍵」
ピアノの秘密。 お題:「消えた鍵」
時計の針が止まるとき、それは食事の時間 お題:「食べる夜」
楽しい時間 お題:「書く時間」
平和が訪れるとき お題:「平和とは」
文芸部の友だち お題:「文芸部」
擬態語ウォーキング お題:「ただ歩く」
夏の終わりの勇姿 お題:「ヒマワリへ」
文化祭(俳句) お題:「文化祭」


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