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私の日制度、導入 #シロクマ文芸部

私の日制度、というものが政府によって導入された。昨今の過労死や過剰労働からの自殺、日常のストレスを起因とする虐待やDVが増加していることへの対策の一環で”私の時間”を大切にしようという意図がある。

年に10回使用可能。申請が必要だが、当日でも可能。
一般的な有給休暇とは違うが、『有給休暇でもらえる半分』の給料は保証される。
提携している飲食店や施設などの利用料は半額になる。利用先によっては、半額以下の料金になるところもある。
申請した際に「本日は『私の日制度』適用日である」という旨の証明書のようなものが発行されるので、施設等を利用する場合はそれを提示する。

おおむねはそのような制度だ。

なにか新しいことを始めるときに反対意見や議論は付き物であり、この制度の導入に際しても反対はあった。
しかしそれでも「休めて、ゆっくりできて、料金も半額なんて最高じゃないか」などの意見は大多数を占めた。
まずは様子見、といった部分も多々あったが、導入にいたった。


当初は皆、本当にいいのだろうかという思いはあった。公に認められているからといっても、軽々しく「私の日、使いまーす」とはやはり言い出しにくいものがある。
しかし徐々にその制度は広まりつつある。

ひとりで静かに過ごす人、日帰り旅行にでかける人、友だち同士で休みを合わせ目一杯遊ぶ人、一緒に居る時間を作る恋人や夫婦たち、子どもとの時間をゆっくり過ごす親たち——、
私の日を利用した人々は皆満足そうだった。



ちなみに反対意見で多かったものは——
「みんなが一斉に休んだらどうするんだ!」
というものだった。そうなっては社会は機能しなくなってしまう。

しかしそんな心配は無用であり、その点に関して問題など起こらなかった。
実際には、なんとなくそれぞれが気を遣い、一斉に休む、なんてことは起こらなかったのだ。
「休み最高!」とは言っても、そこは日本人らしさだろうか。




#シロクマ文芸部 企画に参加しました。

お題「私の日」でふたつめ書いてみました。
ひとつめはこちら:

同じお題にひとつ、などのルールがあれば教えてください。


読んでいただきありがとうございます。

2023.07.07 もげら



初めて参加してみた前回の「街クジラ」はこちら:


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