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今日の1冊 『アウシュヴィッツの歯科医』

今日の本紹介は、以前Instagramの方でも紹介した1冊です。

最近フランクルさんの本を読んでいることもあり、思い出したので紹介します。


『アウシュヴィッツの歯科医』
作:ベンジャミン・ジェイコブス
翻訳:上田祥士、向井和美
出版社:紀伊國屋書店

この本は、第二次大戦下のユダヤ人の迫害を生き抜いた人物のノンフィクション作品です。

当時歯科医の専門学生だった著者。

逮捕され、収容所に連行される際に母が半ば無理やり持たせてくれた歯科治療器具。

それが、彼の命を救うことになります。

アウシュヴィッツやホロコーストについての著作にありがちな、ドラマティックな誇張や、凄惨さを強調し、同情を誘うような表現が無いことに僕は感動しました。

収容所での凄惨な光景を柔らかいタッチで淡々と事実ベースで書いてあります。

そして、あまり知られていない事件についても触れられています。

大戦末期、ドイツの敗戦が濃厚になり、ドイツ領内に連合国軍の戦闘機が往来するのが珍しくなくなった頃。

収容所のユダヤ人たちを輸送中だった、カップ・アルコナ号。

ナチスから救ってくれる解放者と待ちわびていたはずのイギリス空軍から空爆を受け、5000人以上の収容者が亡くなったという事件です。

僕はこの事件を知りませんでした。
アウシュヴィッツ以外にも、光が当たらないだけでもっと凄惨な場所はあったと言います。

歴史の惨劇は、後世の人の光の当てかた次第で如何様にも変わってしまうということは、肝に命じておくべきことだと思います。

小野トロ


小野トロ

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