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今日のことば 『遠逃現象』

いま、内山節さんの
『新・幸福論「近現代の次に来るもの」』
という本を読んでいます。

その中に出てくる内山さんの造語である
『遠逃現象』
という言葉を今日はご紹介します。

この言葉は、読んで字の如し、「遠くに逃げていく」という現象のことを表します。

では、何が遠くへ逃げていくのでしょうか。
それが、この本の主題である、現代の次に来るものはいったい何なのか、
その時代に生きる者の幸福とは何か、
に深く関わってきます。

唐突ですが、今日自民党の総裁が決まりましたね。

このニュースも、受け止め方は人それぞれでしょう。

「あー、そうなんだあ」
「この人だれ?」
「期待してるぞ!」
「どうせ大して変わらないんだろう」
「前政権までの尻ぬぐいが大変だろうなあ」

色々あると思います。

しかし、それぞれに共通しているのは、
「当事者意識の欠如」です。

別に「けしからん!」などと言いたいわけではありません。
事実としてそうである、と言いたいだけです。

自分の一票が国を変えるんだ、
総裁選は選挙権は無いので実際には関わらないとしても、
自分たちが選んだ与党の総裁なんだから、
という意識はゼロとまで言わずとも希薄なのは間違いないでしょう。

しかし、日本は一応「国民主権」を謳っています。
一応「民主主義」であると言われています。

主権は国民にあるわけです。
こんなことは小6くらいで習うことですので、
誰でも理屈としては知っていることと思います。

しかし、実感として自分たちに主権がある、と思っている人は少ないでしょう。

自分の一票が本当に国を変えると本気で思っている人がどれだけいるでしょうか。
繰り返しますがその是非を問いたいわけではありません。

内山さんが書かれていることは、
その「遠さ」です。

理屈では政治は私達の暮らしに影響を与えるとはわかっているのに、
何故か「どうでもいい」と思ってしまう。

その距離があるよね、という話です。

政治家がだらしないからだ!
近頃の若者が政治に無関心だからだ!
というわけでもありません。

それは表面上の理由に過ぎません。

それらの理由は、なぜ政治は私達から遠ざかってしまっているのか、にあります。

政治だけでなく、経済だってそうです。

私達1人1人の労働がGDPを動かし、国の経済を動かしていくことを、理屈としては理解していても、
実感としては「遠く」感じる。

考えられる範囲としては自分の家の家計と、自分が務める会社の株価や業績くらい。

消費者としても、国や世界の経済を動かす立派な経済活動を1人1人がしているとわかりつつも、
なぜだかそれは「遠く」、そしてどうでもいい。

大事なことはわかってるけど実感が無い、
それを内山さんは「遠くに逃げていく」という意味で「遠逃現象」と表現しています。

この本はまだ読み終わっていないので、
なぜこの現象が現代に起こっていて、
起こっていない社会や時代はどのようなもので、
その変遷は?そしてこれから未来はどうなっていくかについてどのように論が展開されていくかはわかりません。

しかし、この「遠逃現象」という言葉が心にズシンとのしかかってきたので、
皆さんに紹介しました。

とても中途半端な紹介になってしまいましたが、
また読み終わってから「今日の1冊」シリーズで紹介したいと思います。

小野トロ


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