みずのほ

物語や詩を書いています|なべてすべてよ、うつくしくあれ

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記事一覧

名はいとおしく呼ぶための分節
最も短いあなたなる詩

みずのほ
1日前
4

ひと針

十字のごとく 織りのごとく たてとよこに ひと針 ひと針の運びが いのちも運ぶと 無心に心を込め ひと針 贖いにはなるまい それでも祈るのは 祈るより外になく ひと針…

みずのほ
4日前
4

透明な手

 大学生の頃、少し気になる人がいた。言葉をかわしたのは、夏休み直前の教室、ほんの僅かな時間だった。「この人とは、もっと話をしてみたい」と思った。彼も、そう思って…

みずのほ
4日前
4

ホーリーヤーン

あなたの真白は あなたの影を観るために あなたが誰かを識るために 許し許され 与え受けとる それが向き合うということだから 生きる生き方 生かす生き方 光はもっと明る…

みずのほ
11日前
4

レクイエム

汚れるのを忌避して 触らぬ手より 障ろうとも いたわる手が美しいのに 音階を奏でる如く美しいのに 顔を覆うか 胸の前で合わせるかを 往復するばかりの きみの手を見つめ…

みずのほ
11日前
2

きみの肩をそっと抱く透明な手を祈る
きみの涙を受けとめる透明な手を祈る

みずのほ
12日前
3

しわ

燃えに燃え 尽きに尽き ろうそくは ごくわずか ともしびは もう消える 希望だけ 愛だけを 見たいのに 皺ばかり 照らされる 生きてきた 年輪だ 曲折の いとしさだ お別れだ …

みずのほ
2週間前
1

生花

生きている人にも 亡くなった人にも 神にも仏にも 捧げることができる 花は優しい 無量なまでに

みずのほ
2週間前
4

影おくり

こもれびのように揺れる影 あるいは影絵にも見える あれは 心の陰影だ はるか遠くに 太陽の如 まなざせば 眼を灼く光源があり 破れかけた心を 幾重にも透過する 光も影…

みずのほ
3週間前
1

孤影

揺らめく影は こころの輪郭にもみえる 濃くなる影は こころの深みにもみえる 路傍の薺も 転がる石も 必ず落とす影がある 闇に紛れる影をもつ さびしいが さびしくはない…

みずのほ
3週間前
2

理由

花咲くように綻び 実の生るように結ばれ 落葉のように降りつもる あとからあとから だから生きてきたのかと 幾重にもあなたに出逢うためだったと

みずのほ
3週間前
3

青写真

憶えてはいないことを思い出す 意識の底で ふいに覚える いのちを運ぶ 青写真 どうしてここに 生まれてきたか 生きてきたのか これからいかに 生きていくのか 生きら…

みずのほ
3週間前
2

有明

光をなくし ひっそりと 朝方沈む まるい月 夜勤明け 俄に月を同志と思う 眠れるひとの胸の上下を 見つめつづけた常夜灯 この世でいちばん愛しい仕事 わたしもいつか 月…

みずのほ
3週間前
2

シーグラス

砕けた欠片の 波に洗われ 摩耗して 擬態はしても 石とはちがう シーグラス おまえのこころも そうなのか 想いの波に疲弊して 干からびて 光をなくし 水の戻りに ほん…

みずのほ
4週間前
6

認識は救済であり
創造は浄福である

みずのほ
1か月前
3

わたしの先生

手紙① ぼくの日 いつもありがとうございます。 わたしは、これまで何通も先生にお手紙してきました。書き出しは、いつも、「いつもありがとうございます」でした。正…

みずのほ
1か月前
8

名はいとおしく呼ぶための分節
最も短いあなたなる詩

ひと針

十字のごとく
織りのごとく
たてとよこに ひと針

ひと針の運びが
いのちも運ぶと
無心に心を込め ひと針

贖いにはなるまい
それでも祈るのは
祈るより外になく ひと針

運命にはちがいない
悔いをあるいは杭を
胸に打ち込むように ひと針

悔いと祈りを交差させ
無縫のままに縫い続け
糸目なく繕うばかりの ひと針

透明な手

 大学生の頃、少し気になる人がいた。言葉をかわしたのは、夏休み直前の教室、ほんの僅かな時間だった。「この人とは、もっと話をしてみたい」と思った。彼も、そう思ってくれたらしかった。わたしたちが意気投合したのは、「歌で地上を天国にしたい」「言葉で世界を美しくしたい」という近しい想いだった。彼は音楽活動をしており、わたしは詩を書いていた。いま思えば、青い。青い檸檬のように、苦い。

 「秋には、ライブハ

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ホーリーヤーン

あなたの真白は
あなたの影を観るために
あなたが誰かを識るために

許し許され
与え受けとる
それが向き合うということだから

生きる生き方
生かす生き方
光はもっと明るくなる

落とした針は
見つからないか
いや 針は光る

見つけた針で
真白の糸目に
十字の光を編んでゆけ

レクイエム

汚れるのを忌避して
触らぬ手より
障ろうとも
いたわる手が美しいのに
音階を奏でる如く美しいのに

顔を覆うか
胸の前で合わせるかを
往復するばかりの
きみの手を見つめるけれど 慟哭は
レクイエムにはならなくて

きみの手にはふれえない
レクイエムにはなりえない から
落下のすべてを
受けとめる
透明な手を祈る

きみの肩をそっと抱く透明な手を祈る
きみの涙を受けとめる透明な手を祈る

しわ

燃えに燃え
尽きに尽き
ろうそくは
ごくわずか
ともしびは
もう消える
希望だけ
愛だけを
見たいのに
皺ばかり
照らされる
生きてきた
年輪だ
曲折の
いとしさだ
お別れだ
さようなら
ありがとう
だいすきだ
だれよりも
きみだけを
愛すのが
ぼくだった

生花

生きている人にも
亡くなった人にも
神にも仏にも
捧げることができる
花は優しい
無量なまでに

影おくり

こもれびのように揺れる影
あるいは影絵にも見える
あれは 心の陰影だ
はるか遠くに 太陽の如
まなざせば 眼を灼く光源があり
破れかけた心を
幾重にも透過する
光も影も 美しくても
射られて 見てはいられない
目を瞑る 目を瞑る 目を瞑る
まなうらの残像を追いかける

孤影

揺らめく影は
こころの輪郭にもみえる
濃くなる影は
こころの深みにもみえる

路傍の薺も
転がる石も
必ず落とす影がある
闇に紛れる影をもつ

さびしいが さびしくはない
だれもがひとしくひとりなのだ

理由

花咲くように綻び
実の生るように結ばれ
落葉のように降りつもる

あとからあとから
だから生きてきたのかと
幾重にもあなたに出逢うためだったと

青写真

憶えてはいないことを思い出す
意識の底で ふいに覚える
いのちを運ぶ 青写真

どうしてここに
生まれてきたか 生きてきたのか
これからいかに
生きていくのか 生きられるのか

何度でも 幾重にも
自分自身を 識るために
ひかりと めぐり逢うために

こたえはいつも
生まれてきたか 生きてきたのか
問いをいつでも
生きていくのか 生きられるのか

有明

光をなくし ひっそりと
朝方沈む まるい月
夜勤明け
俄に月を同志と思う
眠れるひとの胸の上下を
見つめつづけた常夜灯
この世でいちばん愛しい仕事
わたしもいつか 月になる
地球はいつか 月になる

シーグラス

砕けた欠片の
波に洗われ 摩耗して
擬態はしても 石とはちがう
シーグラス
おまえのこころも そうなのか
想いの波に疲弊して 干からびて
光をなくし
水の戻りに ほんのひととき
透明を思い出す

認識は救済であり
創造は浄福である

わたしの先生

わたしの先生


手紙① ぼくの日

いつもありがとうございます。

わたしは、これまで何通も先生にお手紙してきました。書き出しは、いつも、「いつもありがとうございます」でした。正直なきもちでした。先生は、お気づきでしたでしょうか。

そして先生も、いつもにこやかに、「いつもありがとう。読んでいます」と受け取ってくださいました。どれほど嬉しかったか。

さて、わたしは、自分が初めて先生にお贈りした拙歌を憶えていま

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