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みやまる・スポーツブックス・レビュー

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#サッカー

激戦区もチャンスに変える、伝説のゴーラーの「リアルサカつく」以上のもの:望月重良『全くゼロからのJクラブのつくりかた サッカー界で勝つためのマネジメント』

激戦区もチャンスに変える、伝説のゴーラーの「リアルサカつく」以上のもの:望月重良『全くゼロからのJクラブのつくりかた サッカー界で勝つためのマネジメント』

 神奈川県はズバリ、Jリーグ激戦区だ。Jリーグ創設の時点で川崎V、横浜F、横浜Mと既に3クラブ存在している。吸収合併による消滅や移転したクラブもあるが、現在も6クラブがひしめき合う、他の都道府県には見られない多さだ。国際色豊かな土地柄や、「王国」静岡と東京の中間地点であるなど、この理由はいろいろ深掘りが出来そうである。
 そんな激戦区に挑むのは望月重良が創設したのSC相模原だ。00年のアジアカップ

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光も影も紙一重のリーグを語る:松井大輔「サッカー・J2論」

光も影も紙一重のリーグを語る:松井大輔「サッカー・J2論」

松井大輔というと、私はルマン〜グルノーブルに所属していたころの印象が強い。独W杯(06年)前後のイメージだ。当時「海外組」と言うと、まずトップに中田英寿が居て、小野伸二・稲本潤一らの99年のワールドユース準優勝組が、“ポスト・ヒデ”を虎視眈々と狙っていた。そしてWY組の少し年下の松井も、フランスから小野らを飛び込えて、その座を狙っていた。
 松井はその後、ブルガリアやポーランド、現在ではベトナ

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勝利至上主義からの解放されたサッカー天国・手原和憲『夕空のクライフイズム』

勝利至上主義からの解放されたサッカー天国・手原和憲『夕空のクライフイズム』



(初出:旧ブログ2019-02-12)

 良いタイトルだな~と思って手に取った。クライフと言えばオランダ、オランダと言えばオレンジ、夕焼け色。そして高校サッカーといえば練習は夕暮れ時である。自分も通っていた大学の隣にあった付属高校が高校サッカーの名門校だったので、よく明子姉ちゃんよろしく(野球マンガじゃねーか)、ビブス姿で一喜一憂するイレブンを見守っていた。

 本作の舞台は木登(きと)学園

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ネズミであり妖精であり星人であり龍(?)であり:木村元彦「誇り-ドラガン・ストイコビッチの軌跡-」

ネズミであり妖精であり星人であり龍(?)であり:木村元彦「誇り-ドラガン・ストイコビッチの軌跡-」



 昨年のW杯前ちょっと残念というか、やりきれない思いになったことがある。某サッカーサイトで「もし今、旧ユーゴ代表があったらどんなメンバー」かという企画があった。モドリッチをはじめそうそうたるメンバーが並んでいた。クロアチア代表だけであれだけ強いのだから、優勝できるかもしれない。しかし監督を見て心躍る妄想から、がくっと現実に引き戻されてしまった。「監督:ダヴィド・ハリルホジッチ」。確かにボスニア

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ザ・サッカー

ザ・サッカー



(初出:旧ブログ2017/02/24)

 『屋上野球』という雑誌の創刊号で「野球を失った野球小説」という特集が組まれている。野球によって物語が進行していく”野球小説”に対して物語が野球という主題を見失い、いつの間にか野球以外のことについて語る小説も"野球小説"ではないか?というテーマの特集だ。例を挙げると『優雅で感傷的な日本野球』(高橋源一郎のインタビューも掲載されている)、『神様のいない日

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誉れ高き勇敢なブルーよ

誉れ高き勇敢なブルーよ



(初出:旧ブログ2015/12/30)

 友人が「日本のサッカー界は今"幕末"である」と発言したことがあった。代表監督は海外から呼ぶべきという「開国派」、日本人監督を育てるべきという「攘夷派」、Jリーグなんてまだまだという「倒幕派」とJリーグ最高という「佐幕派」。そこまで日本史に詳しくないけどこの指摘はなるほどと思った。

 この本の主人公、望月はJ3クラブのGM。過去に寸前で記者にリーク

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争うは本意なれど:ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えたひとびとの美らゴール

争うは本意なれど:ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えたひとびとの美らゴール



(初出:旧ブログ2015/12/05)

  関塚フロンターレは見てて本当に楽しかった。川島永嗣、箕輪義信、寺田周平、井川祐輔、谷口博之、そしてFWの豪華さたるや。黒津勝、ジュニーニョ、鄭大世、今やセレソンの顔であるフッキすらJ2に出場機会を求めるくらいの厚さだった。そしてそのタレント軍団の中でも一際輝いているのか中村憲剛と我那覇和樹だった。

 その我那覇は07年にピッチ外のことで振り回さ

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マネーフットボール

マネーフットボール



(初出:旧ブログ2015/11/23)

 J2(がモデルになってる)漫画といえばこの人、能田達規の最新作。ビッグデータ時代の例外に漏れることなくサッカーもこれからは選手以上に数字が物を言う時代、その数字に清々しいほどバカなサッカー小僧、梶本洋平(カジ)が正面からぶつかっていく。冒頭のカジと強化部長の「でもデータ化できないモンだってあるでしょう人気とかやる気とか……」「選手個々の"人気"はグッ

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松本山雅ものがたり-J1をめざすアルプスの風

松本山雅ものがたり-J1をめざすアルプスの風



(初出:旧ブログ2015/11/16)

 今年等々力で初めて山雅のサポーターを生で見た感想は「……噂には聴いてたけどスゲェなぁ……」。昇格1年目なのに浦和・F東・新潟・柏と勝るとも劣らない深緑の大群の盛り上がりにびっくり。

 松本駅前の喫茶店の常連客で作った草サッカークラブがJ2に昇格するまでの50年近くに及ぶリアル「サカつく」。そもそもサッカーより登山が好きなお客さんが多い店で山に登ら

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