ミリは猫の瞳のなかに住んでいる（電撃文庫）ネタバレ感想

　これは「僕」が「君」と別れ、「君」が「僕」と出会うまでの物語だ。

★第29回電撃小説大賞《金賞》受賞作★

あらすじ（※特設サイトから引用しました）

　瞳を覗き込むことで過去を読み取り追体験する能力を持つ大学生・紙透窈一（かみすきよういち）。退屈な大学生活の最中、彼は野良猫の瞳を通じて、未来視の能力を持つ少女・柚葉美里（ゆずのはみり）と出会う。

　猫の瞳越しに過去の世界と会話が成立することに驚くのもつかの間、『ミリ』が告げたのは衝撃的な『未来の話』。

「これから『よーくん』の周りで連続殺人事件が起きるの。だから『探偵』になって運命を変えて」

　調査の過程で絆を深める二人。ミリに直接会いたいと願う窈一だったが……

「そっちの時間だと、わたしは、もう――」

　死者からの手紙、大学の演劇部内で起こる連続殺人、ミリの言葉の真相──そして、嘘。

　過去と未来と現在、真実と虚構が猫の瞳を通じて交錯する、新感覚ボーイミーツガール！

　デビュー作『わたしはあなたの涙になりたい』（小学館ガガガ文庫刊）は『このライトノベルがすごい！2023』（宝島社刊）新作部門1位を獲得。

　超大型新人が電撃小説大賞の看板を引っ提げて繰り出す衝撃作！

感想

　猫の瞳を覗き込んだら、そこに彼女はいた……そんなボーイミーツガールの物語。

　ミリが可愛かったです。桜庭先輩も可愛かったです。

　文章が読みやすくて、物語に引き込まれました。

　引き込まれたのは、主人公である「よーくん」こと紙透窈一《かみすき・よういち》と、ヒロインである「ミリ」こと柚葉美里《ゆずのは・みり》が最終的にどうなるのか？　……と、期待して読んでいました。

　この小説はネタバレなし、予備知識なしで読むことを強くオススメします。

　少しでも気になった人は今すぐにでも書店へ向かうのです！

ネタバレ感想（※未読の方は注意！）

　運命は決まっている。誰かが犠牲になることで。

　自分も作者と同じ感情を抱いたことがあります。というか、抱いています。

　この世界の今は、過去と未来が連続して続いている最中なのです。

　未来から見たら、私たちは過去で死んでいて、過去から見たら、私たちは未来で生きている……最終的に未来では、人類は地球上で絶滅し、地球の同じような惑星へ行くなんてことは夢のまた夢です。

　50億年後くらいには地球は太陽に飲み込まれて、すべての地球上の生命は絶滅します……と、最新の研究では言われています。

　だから、今回の物語の運命も決まっていた。

　ミリは、よーくんを救うために自分の命を対価に亡くなりました。

　真犯人が、誰かなんてことは些細なことです。

　よーくんとミリが同じ時間を生きることは不可能だったのです。

　これをライトノベルのセオリーで書くなら「運命は決まっていない」というハッピーなエンディングになっていたでしょう。

　まさか主人公とヒロインが結ばれないバッドエンドだとは思いませんよね、ライトノベルだったら……。

　まあ、『わたしはあなたの涙になりたい』の作者さんだから、そうなることを込みで予想しなければいけなかったんだよなあ……という感想になります。

　どうしてミリが、よーくんを救いたいと思ったのか、という手紙が最後の場面で出てきます。

　そりゃあ、よーくんを救いたくなるよなあ、と思いました。

　ちょっとぼかした言い方になるのですが、ミリが、よーくんを救うためにやったことは、かなり綿密に計画されていました。

　よーくんでは、未来を知るミリには敵わないのです。

　ミリは「嘘」を付くことで、よーくんを手のひらの上で踊らせていたのです。

　恐ろしい女性ですよ、ミリは……。

　まさか、よーくんを救うために「自分の身体」を犠牲にするなんて……。

　含みを持たせた言い方ですが、そのまんまの意味ですよ。

　今回のネタバレ感想ですが、すべてのことを説明するのは、やめます。

　真っ先に、この小説を読んでほしいからです。

　重要なのは、よーくんを救うためにミリが、やったことです。

　読まなければ、体験できません。

　そして、最後の場面が、すごくいいのです。

　ぜひ、読んでみてください。

　ということで、『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』のネタバレ感想でした！

　ここまで、お読みいただき、ありがとうございました！