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自民党の「日本衰退化計画」~「失われた30年」の原因は、意図的な「内需減少政策」

少し前に「『先進国」』における『新自由主義政策』の実験場になった日本の悲惨な現実」 を書いていたら、日本を衰退させる「内需減少政策」のあまりの多さに驚いた。「内需減少」は国民の貧困化に直結するので、自民党がこれを意図的にやっているのだとしたら、まさに国民への背信行為に他ならない。

そこで、今回は、政府自民党と日銀、大企業・財界が共謀した新自由主義に基づく「内需減少政策」について分析してみる事にした。


1 バブル崩壊後の日銀による「誤った?」金融政策と政府の緊縮財政政策                           

「失われた30年」と言われているように現在の日本経済の悲惨な状況を知る上で30年前に起きた「経済的ショックドクトリン」とも言うべき日本経済の未曽有の大惨事の原因と影響の考察は欠かすことが出来ないので、やや遠まわりになるが「バブル崩壊」から論じていく事にする。

1990年1月の「バブル崩壊」で株価暴落が始まってから1年半もの間、日銀は6%の高金利を維持したまま何もせずに放置、景気後退が確実になったことを確認した後ようやく公定歩合を0.5%だけ引き下げた。

その後、6回に渡って小刻みに公定歩合を引き下げ、1993年2月にはバブル時代と同水準の2.5%まで低下した。しかし、バブル崩壊直前までの急激で大幅な利上げスピードに比べると、利下げの方は比較にならない程の深刻度の割には意外にスローペース。

検証バブル 犯意なき過ち」日経新聞社編                         橋下龍太郎蔵相の利上げ白紙撤回要求を無視して、三重野日銀総裁は急激な利上げを強行した。

この間、株価と地価の暴落による景気後退は加速度的に進行し、日銀のスローで後追い的な公定歩合引き下げは全く効果がなかった。

バブルを意図的に崩壊させた日銀は深刻な不況に陥っているのをよそに、バブル再来防止を名目に1995年3月まで積極的な量的緩和を行わず、円の供給量を大幅減らして流動性を低下させた。

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この結果、マネーストック(マネーサプライ)不足になり銀行の「信用創造」が収縮して景気が更に悪化。1994年後半からは物価が上昇から下落に転じ、日本経済はついにデフレに陥ってしまった。

ようやく1996年からは超低金利政策(0.5%)に踏み切るが時既に遅しで、膨大な不良債権と日銀の「誤った」(本当は意図的) 金融政策によって痛めつけられた日本経済は、1995年から97年の一時的な景気回復以降は再び不況に転じ、「失われた30年」と呼ばれる世界に例を見ない長期デフレに突入して行った。

ようやく一時的な回復基調にあった日本経済に頭から大量の氷水を浴びせかけ景気を一気に冷やしたのが、1997年4月に財政再建論者の橋本総理が実施した3%から5%への消費増税。(ただし、消費税増税自体を決定したのは橋下内閣の前の村山内閣)。

この増税によって家計消費は一気に落ち込み、日本経済に回復不能とも言える程の大打撃を与えた。これ以降、日本経済は二度と立ち直ることなく急坂を転げ落ちて行くように衰退。各種基幹経済統計でもそれまで中位から下位にいたOECD各国にも次々に抜かれて後進国化していく事になる。

消費税増税を実施したのが日本の経済界がバブル崩壊後の不良債権処理に喘いでいる最中、しかも7月からはアジア各国の通貨が突然大暴落する「アジア通貨危機」に見舞われると言う最悪のタイミング。

更に増税と並行して財政健全化のためにそれまで実施していた特別減税を打ち切った上、同時に医療費の自己負担増も行うというとんでもない「総合的内需減少政策」で、まさに自分で自分の首を絞める二重三重の大失政。

増税等による国民の負担増は合計9兆円に上り、名目GDOも2%のマイナスと激しく落ち込んだ。可処分所得を一気に減らされた国民の消費意欲は著しく減退し、家計支出をぎりぎりまで切り詰めるようになった。こうして物が売れなくなり、企業の新規設備投資も停止状態となって日本経済は長期デフレに突入して行く。

2001年になって橋下龍太郎は当時を振り返り、「私の緊縮財政は間違っていた。財政再建のタイミングを早まって経済低迷をもたらした。」と国民に謝罪したが後の祭り。

それでも、腐敗・不正・無能・悪意の「2012年体制」と「アホノミクス」によって日本を破壊し、国民を不幸のどん底に陥れたくせに自分の失政を一切認めずに口を開けば「アベノミクスはまだ道半ば」と開き直り、何の謝罪もせずあの世(「地獄」)に行った誰かさんよりはまともだが。

一方、橋本内閣より前の宮澤内閣、自民下野後の細川、羽田、村山内閣は何をしていたかというと、1992年から95年にかけて毎年6兆円から15兆円の大規模な経済対策を行った他、断続的に減税も実施。

積極的な財政出動と減税は一定のの効果を上げ、1995年から97年にかけてバブル前ほどの力強さはなかったものの或る程度の景気回復をもたらし、日本経済は再び活力を取り戻すかと思われた。

それを一気にぶち壊したのが、上記の橋本内閣による消費税増税を柱にした内需減少政策。その後も、日銀が量的緩和を行わなかったため、政府の経済対策の効果は相殺されて限定的なものに留まった。

政府は、巨額の財政支出を続けたためプライマリーバランス(PB)が悪化して国債増発による政府累積債務が急拡大。表向きは、いくら財政支出を増やしても焼け石に水と判断した政府は景気回復をあきらめ、PB健全化を目指した緊縮財政政策の方向に舵を切り、財政支出を次第に削減して行った。

日銀がゼロ金利政策に転じた後も政府はPB黒字化(財政健全化)目標を堅持し、公共投資や政府消費などの財政支出を極力絞って不況を継続させた。 この間、民主党政権下の一時期を除き日本経済は順調に衰退し続けた。

日銀と政府はやっている金融経済政策が常にちぐはぐで互いに経済政策の効果を減殺し合うような事ばかりやって来たが、バブルを崩壊させた日銀による急激な利上げと大蔵省による総量規制を実施した時だけは不思議と歩調を合わせている。

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以上を見れば、バブル崩壊とその後の長期不況は、日銀が主導し、政府がそれに加担したた意図的な人災(経済的ショックドクトリン)だった可能性が高いと言えるだろう。

「バブルの人為的生成と崩壊」によって日本経済を破壊した日銀の正体については、こちらに詳述している。

2 最も強力な内需減少政策「消費増税」                

日本衰退の最大要因である消費税導入は、元々「直間比率見直し」(間接税増税による法人税・所得税減税)のため、1986年に経団連が自民党に要求したもの。消費税が法人税減税と富裕層の所得税減税の穴埋め及び輸出還付金として使われることは、最初から決まっていた。

しかし、「消費税は大企業と富裕層の減税のため」などと正直に言えば国民の猛反対をくらう事は必至。そこで政府自民党は主要メディアを使って「消費税は、全額社会保障の財源に充てる。」とのデマを繰り返し流すことで国民を騙し、消費税の導入に成功。

国民の多くは未だにこのとき刷り込まれたデマを信じ込んでおり、多くの国民はなかなかその洗脳から抜け出せずにいる。

消費税は特別会計ではなく一般会計に繰り入れられどんな用途にも自由に使えるのだから、「消費税は全額社会保障の財源に充てる。」などありえないことは、少しでも財政について調べればすぐに分かる事なのだが。

こうして導入された消費税は当然のことだが社会保障のためにはほとんど使われず、事実上形を変えて財界や大企業などの富裕層の懐に入って消えてしまうので、「中抜き」同様、内需を激減させただけで経済成長には全く役立たない。

また、消費税は利益と人件費に課税されるので、人件費にかかる消費税負担を減らすために企業が正社員を切って、次々に非正規職員に置き換えて行くという大問題を同時に引き起こしてしまった。

その結果、低賃金で不安定な非正規雇用の割合は4割近くに達して更なる労働者の貧困化を招いた。つまり消費増税と雇用の非正規化はセットで内需減少に拍車をかけるという最悪の税制なのだ。

1989年の消費税導入と翌年の「バブル崩壊」で弱り切っていた日本経済は1997年の3%から5%への消費税増税には耐えられず、ついに「失われた30年」と呼ばれるようになる他国に例を見ない長期デフレに突入した。1995年から2015年までの20年間でマイナス成長を記録した国は日本だけである。

日本経済に更なる打撃を与えるために2014年、安倍内閣は5%から8%への2度目の消費税増税に踏み切った。この時の経済的打撃も極めて深刻で、個人消費は一気に8兆円も落ち込んだ。リーマンショックによる消費の落ち込みが6.3兆円だったのと比べても、その影響の大きさが分かろうと言うもの。  

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     消費増税直前の物価上昇は、駆け込み需要によるもの

デフレスパイラルから抜け出せない日本

消費増税によって国民の可処分所得が減少し、消費意欲・購買力共に低下                  ↓                                                                 国民の購買力低下に伴い、企業の新規設備投資や研究投資も減少                ↓                                 内需が冷え込み、経済が回らなくなる                  ↓                                 同じ価格のままでは売れないので値下げ競争になる                ↓                                 企業は倒産回避や利益確保のためにリストラや賃金引き下げを行う             ↓                                 リストラや給与所得の減少などで、余計商品が売れなくなる           ↓                                 将来不安に脅える国民は消費を減らして貯蓄に回し、企業は投資する代わりに内部留保をため込むので、益々世の中のおカネが回らなくなる             ↓                                 経済活動が縮小し、GDPもマイナス成長に落ち込む           ↓                                 一部の富裕層を除き、多くの国民が貧困化して没落する                                ↓                                 長期不況に陥り物価が下落して、デフレ・スパイラルから抜け出せなくなる          ↓                                 日銀の円安政策と輸入資源高騰により、今度は賃上げが低迷する状況下で物価が急騰する「スタグフレーション」化

実質賃金が低下し続け、国民の窮乏化が更に深刻になる                                                      ↓                                                    国家全体が衰退し、三流衰退後進国に落ちぶれる(今ここ)


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安倍晋三が築いた「2012年体制」の元で景気刺激のために黒田日銀が異次元の金融緩和(ゼロ金利~マイナス金利と超量的緩和)を行っても、政府は緊縮財政を維持し続けたので消費も設備投資も相変わらず落ち込んだまま。

第2の矢「機動的な財政出動」を売り物にした「アベノミクス」下での財政支出の増加は、1に張り付けた統計表のように実は微々たるもの。ここでも日銀と政府は、お互いに矛盾した政策に精を出していた事になる。

国内の「実需」が無いので民間銀行は市中貸し出し(信用創造)が出来ず、日銀が「黒田バズーカ」で民間銀行から国債を買い上げていくら円を供給しても日銀当座預金に積み上がるだけでマネーストック(民間銀行から市中に流れるお金の量)は増えない。

2022年3月時点で563兆円が日銀当座預金に「ブタ積み」状態で、1年間で何と41兆円も増加。金融機関が日銀当座預金に預けなければならない法定準備預金は7.5兆円程度。550兆円あれば、消費税なしでも30年間はもつので、この数字がどれほど異常なものか分かるだろう。

日銀が直接供給するお金のマネタリーベースは10年で約5倍になったが、内需減少政策のために世の中に出回るお金の量であるマネーストックは1.3倍にしかなっていない。

12_日銀当座預金

政府は「消費税は、社会保障のための安定的な財源」との嘘を国民に信じ込ませ、不況と物価高とコロナ禍の三重苦で国民が喘いでいてもデフレの元凶である消費税は絶対に減税しない。

しかし、上に書いたように社会保障に使われたのは消費税のごく一部で、これまでの34年間に徴収された約500兆円の大部分は法人減税と高額所得者の所得減税による減収分の穴埋め、輸出還付金などに使われて来たのは周知の事実。

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政府自民党が相次ぐ消費増税と緊縮財政によって国民からお金を吸い上げ内需を冷やし続けているのだから、黒田日銀がゼロ金利と超量的緩和を行っても何の効果もないのは当然なのだ。効果がないどころか、超円安による副作用の方が遥かに大きい。

結局のところ、消費税の導入と三度に渡る増税は日本をデフレに陥れただけでなく、国民から収奪した消費税は法人税減税、高額所得者減税、トヨタなどの輸出企業への輸出還付金などの形で大企業や超富裕層に回され、政府の最初からの目論見通り彼らを更に富ませるために使われた。

【輸出戻し税の闇】 

元々日本は「内需大国」で、GDPにおける輸出依存度はアメリカ、ブラジルに次いで低く、1999年から2018年の平均で僅か14.6%に過ぎない。日本が「輸出大国」だの、「貿易立国」だのというネーミングは全くファクトではない。

しかるに、日本政府は自民党の大口献金元であるトヨタなど一部の輸出大企業を優遇し、2021年にはトヨタ1社だけで約6000億円もの輸出戻し税を還付している。輸出企業全体では約6兆6千億円に上り、何と毎年の消費税の4分の1が還付金として輸出企業の懐に入っているのだ。

建前上は海外への輸出は消費税を取れないからと言う理由だが、下請け会社からの部品等の仕入れの際、価格決定権を持つのは発注元で圧倒的な資本力をもつ大企業側。大企業は優越的地位を利用して代金に転嫁させず消費税分以上を値引きさせて納入させているのが実態。

だから、輸出大企業は事実上消費税など負担してはいない。支払ってもいない消費税が「戻って来る」という奇々怪々な輸出還付金は、実質的には「GATT(関税及び貿易に関する一般協定)」で禁じられている輸出補助金であのり、政府による輸出大企業への税金の合法的横流し以外の何物でもない。

むしろ、輸出還付金はトヨタなどが納めるべき消費税分まで負担させられている下請け企業にこそ還付されるべきものだろう。

日本の消費税は元はといえば1954年にフランスが世界初の付加価値税を導入した事から始まっている。当時、フランス政府は国際競争力が弱かった自国の輸出企業にテコ入れするために政府補助金を出したかったのだが、1948年に締結された国際協定「GATT」で輸出企業への補助金は禁じられていた。

そこで抜け道として考え出されたのが付加価値税の導入。付加価値税には「還付金制度」を伴い、これには輸出品については輸出先から付加価値税を取れないので、仕入れ段階でかかった税金分を税務署から払い戻してもらうという理屈づけがされた。

輸出還付金なら直接的な補助金にはならず、GATTには違反しない。つまり付加価値税はその成り立ちからして輸出企業だけを優遇するために作られた不公平税制であり、輸出企業に対して政府が合法的に税金を注ぎ込むために作られた仕組みだった。

日本の消費税は本当に消費者が負担する欧州の付加価値税とは別物の税制だが、フランスが編み出した補助金注入の抜け道をそのまま流用した極めて不公平な輸出企業優遇政策である事に変わりはなく、導入の最初から社会福祉に充てる気など毛頭なかったことは明白だった。

消費税を上げれば上げる程還付金額も増えるので、輸出企業は消費税増税は大歓迎。逆に消費税が減税されたり、廃止されたりすれば濡れ手で粟で何の企業努力もしていないのに労せずして手に入れていたあぶく銭がそれこそ泡と消えてしまう。だからトヨタなどの輸出企業は、財源である消費税を失いたくない財務省と共に消費税減税・廃止には大反対なのだ。

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財界は直間比率5:5の実現と法人税及び高額所得者の所得税の更なる減税のために消費税19%を自民党に「提言」(要求)している。財界の過去の「提言」はほとんどが実現しているので、そうなれば日本は破滅するしかない。

財界は上記のように昔から直間比率の見直しを要求しているが、実は消費税が間接税というのもまやかしで、その正体は事業者の売り上げにかかる売上税。つまり景気に左右されず赤字でも取り立てられる第二法人税=直接税。

消費税は税を納める者と負担する者とが同じ直接税なのだから、財務省も明言している通りに預り金など生ずるはずもなく、輸出還付金なるものの正体は輸出企業への補助金に過ぎない。

だから消費者が負担しているように見せかける消費税と言う名称自体がウソなのだ。

結局、政府・財務省は大企業・財界、3%の超富裕層など一部特権層の莫大な利益と引き換えに日本経済をデフレに突入させて経済成長を止め、三流後進国に落ちぶれさせてしまった訳で、最早これは政府による確信犯的犯罪行為と言っても過言ではない。

3 日本の衰退を加速した上に負のレガシーになった「アベノミクス」

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「アベノミクス」の「三本の毒矢」の内実際に「機能」したのは、第一の矢と称する株高と異次元の金融緩和(ゼロ金利政策)による異次元の円安のみ。

株高にするためには国民の年金資金を運用するGPIFの運用方法を変更。巨額の年金資金を株式市場にジャブジャブつぎ込み、並行して日銀ETFで大量の日本株を買い入れ、株式相場が下落しないように買い支えた。

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